「矛盾」は何で矛と盾と書く? 意味や英語表現、面白い「矛盾」の例も紹介

「あの人はいつも矛盾している」などと、「矛盾」は日常生活でもよく使われる言葉ですよね。「矛盾」は言っていることとやっていることが違っていたり、話の筋が通っていないことをあらわします。当記事では、「矛盾」の意味や英語、例文、類語などを紹介!

「矛盾」とは?

「矛盾」とはわかりやすく言うと、「つじつまが合っていないこと」です。言葉の意味は知っているものの、なぜ「矛」と「盾」という漢字が使われているのか、その語源を知らない人もいるのでは?

まずは、「矛盾」の言葉の意味、そして由来・語源を解説していきます。

読み方と意味

「矛盾」とは、「むじゅん」と読みます。意味を簡単に言うと「つじつまの合わないこと」。前後の話が食い違っていたり、話の筋が通っていないことをあらわします。

例えば、「宿題は丁寧に早くやりなさい」と言った場合には、話の筋が通っていません。また、効率化のために導入したシステムなのに、そのシステムを使いこなすのに時間がかかっている… なども、「矛盾」といえますね。

ちなみに、「矛盾」と関連した言葉に、「矛盾塊(むじゅんがたまり)」があります。これはネット用語で、両立しない複数のものを混ぜ込んだイラスト(絵)のこと。「矛盾」だらけで、ツッコミどころ満載なところがクスッと笑いを誘います。

由来・語源

「矛盾」の語源は、中国の戦国時代の思想書『韓非子(かんぴし)』にあるとされています。『韓非子』は、思想家・韓非が書いたもので、秦の始皇帝にも影響を与えたそう。

この『韓非子』に、楚の国で矛と盾を売る商人の話が出てきます。この商人は自分が売っている盾を「この盾は堅く、どんなものも突き通すことはできない」と、矛を「この矛は鋭く、どんなものも突き通すことができる」と自慢したのだとか。すると、そこにいた客が、「では、その矛で、その盾を突いたらどうなるのか?」と聞いたところ、商人は何も答えられなかったのだそうです。

この矛と盾のエピソードに絡めて、話のつじつまが合っていないことを、「矛盾」と言うようになりました。

使い方を例文でチェック!

続いて、「矛盾」を使った例文をいくつか紹介しましょう。

注意して見てみると、世の中にはたくさんの「矛盾」があふれています。聞き慣れているものの、よくよく考えてみると「矛盾」していて面白いセリフについても紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。

1:野球部の先生は言っていることがいつも矛盾していて、子どもたちは混乱している。

「矛盾」は、「矛盾している」「矛盾する」などと使われます。例文では、昨日はこう言っていたのに今日は違うことを言っている先生のことを「矛盾している」と表現していますね。

「矛盾」した発言は周りの人を振り回し、困らせてしまうことも。「矛盾している人」とわかったら、言葉を素直に受け取るのは控えたほうが身のためかもしれません。

2:「何でも聞いて」と言われたから聞いたのに、「自分で考えろ!」と怒られた。上司の言動には矛盾がある。

「矛盾」は「矛盾がある」という表現でも使えます。

会社などの組織には理不尽なことがたくさんあることも。特に、自分の直属の上司が「矛盾した人」であれば、その下にいる部下は疲弊してしまいますよね。こうした人は、もし言動の「矛盾」を指摘したとしても、さらに怒ってくることも少なくありません。うまく付き合うのが難しい人といえますね。

3:「動くな! 銃を捨てろ!」とは矛盾だ。

刑事ドラマでよく聞く「動くな! 銃を捨てろ!」「動くな! 手をあげろ」といったワード。動くなと言われているのに、銃を捨てろ(=動け)とも言われています。よく考えてみると、「矛盾」のある言葉ですね。

類語や言い換え表現は?

「矛盾」の類語には「自家撞着」「言行不一致」「整合性がない」などがあります。それぞれの言葉の意味を詳しく解説しましょう。

1:自家撞着

「自家撞着」は「じかどうちゃく」と読みます。意味は「その人が言う言葉や行動が食い違っていること」。

「自家」とは自分のこと、「撞着」とは「つじつまが合わないこと」をあらわします。この2つの熟語から成り立っている四字熟語です。「矛盾」とほとんど同じ意味の言葉といえるでしょう。

例文:言っていることとやっていることが違ってしまい、自家撞着に陥っている。

2:言行不一致

「言行不一致」の読み方は「げんこうふいっち」。漢字の通り、「言葉や行動が不一致なこと」「言っていることと行動していることが食い違っていること」をあらわします。

例えば、痩せたいと言っているのに、お菓子やジャンクフードをたくさん食べているのは「言行不一致」といえますね。

例文:貯金をすると宣言しながら散財している妹は、まさに言行不一致だ。

3:整合性がない

「整合性(せいごうせい)」とは、「つじつまが合っていること」という意味です。「整合性がない」で、「つじつまが合っていないこと」をあらわします。話に一貫性がなかったり、ズレていたりするときに「整合性がない」と言います。

例文:いつも言うことがコロコロ変わる上司は、整合性がない人だ。

英語表現とは?

「矛盾」は英語で何と言うのでしょうか?

「矛盾」を意味する英語には「contradiction」「inconsistency」「paradox」があります。それぞれの英語の使い方も紹介しますので、一緒に見ていきましょう。

1:contradiction

「矛盾」をあらわす英語は「contradiction」です。「contradiction」は名詞ですので、形容詞なら「contradictory」、動詞なら「contradict」を使いましょう。

<例文>
・He pointed out a contradiction in my statement.(彼は私の意見の矛盾点を指摘した)
・This paper seems contradictory.(この論文は矛盾しているようだ)
・My husband always contradicts himself.(私の夫はいつも矛盾していることを言う)

2:inconsistency

「inconsistency」は「矛盾」「不一致」などの意味を持つ英語です。「一貫性」を意味する「consistency」に、否定の接頭辞「in」をつけて、「一貫性がない」という意味になります。「inconsistency」は名詞で、形容詞の場合は「inconsistent」です。

<例文>
・There was an inconsistency in his story.(彼の話には矛盾があった)
・Her actions are inconsistent with her words.(彼女の行動と言葉は矛盾している)

3:paradox

「paradox」は、日本でもカタカナで「パラドックス」と使われていますよね。「paradox」には、「逆説」「(一見正しそうに思える)矛盾した言葉」「矛盾した人」といった意味があります。

<例文>
・There is a paradox in this sentence.(この文章には逆説がある)

最後に

今回は、「矛盾」について解説しましたが、意味や語源は理解できましたか? 当たり前のように使っている「矛盾」ですが、矛と盾を売る商人の話が由来となって「矛盾」という言葉が生まれたことは有名なので覚えておきましょう。

また、周りを見渡してみると、商品のキャッチコピーやドラマのセリフなどにも、たくさんの「矛盾」が潜んでいます。「健康のためなら死んでもいい」「後ですぐにやります」など、様々な「矛盾」を探してみるのも、面白いですよ。

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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)

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