「ピノキオ」ってどんなお話? 原作『ピノッキオの冒険』はディズニー映画と比べて怖い? あらすじ・登場人物をチェック

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世界中から愛され続ける『ピノキオ』の物語。ディズニー映画でご存じの方が多いことと思われますが、そのもととなった原作にも、また一味ちがった面白さがあります。
今回は、そんなディズニー映画『ピノキオ』の成り立ちや、原作のあらすじ、ディズニー版と原作の違いを中心に、『ピノキオ』の魅力をお伝えしていきます。

ディズニー人気映画『ピノキオ』はどんな作品?

主題曲『星に願いを』が印象的なディズニー人気映画『ピノキオ』。ディズニー版の本作は、こんな流れで世界中から愛されるようになりました。

『ピノキオ』は戦中1940年公開。ディズニー2本目の長編アニメ映画

ディズニーの長編アニメ映画2作目である『ピノキオ』がアメリカで公開されたのは、なんと第二次世界大戦中の1940年。

日本ではじめてオールカラーの長編アニメーション映画『白蛇伝』(東映動画)が公開されたのは1958年なので、アメリカではアニメーションの技術が相当早く進んでいたことがわかりますね。

しかしながら戦中だったこともあり、公開当初、本作はヒットに至りませんでした。

『星に願いを』はアカデミー賞歌曲賞受賞。知名度が上がったのは戦後以降

劇中で歌われる『星に願いを(When You Wish Upon a Star)』は第13回アカデミー賞で歌曲賞を受賞。その後、「映画史における偉大な歌100選」でも第7位に入るなどしながら、戦後以降、徐々に世界で公開されるようになりました。ちなみに日本での公開は1952年。

こうして、世界中の人々から名作アニメーションとして愛されるようになりました。

原作はカルロ・コッローディの『ピノッキオの冒険』

そんな『ピノキオ』の原作は、イタリアの作家・カルロ・コッローディによる児童文学作品『ピノッキオの冒険』です。1881〜82年の間に『Storia di un burattino(「あやつり人形の物語」)』として週刊誌で連載され、改題の上、1883年に出版された本作。ディズニー映画の『ピノキオ』とは異なり、原作は社会風刺的な性格を持つ点が特徴です。

そのため、ディズニー版『ピノキオ』の製作者であるウォルト・ディズニーは、これを子ども向けの夢にあふれた物語として映画化するために、長い年月を費やしたのだとか。

以下では、そのもととなった原作のお話について、詳しく見ていきましょう。

原作『ピノッキオ(ピノキオ)の冒険』物語のあらすじ

昨今広く知られているピノキオの物語は、ディズニー映画に合わせて、より子ども向けに脚色されたものが多いようです。しかしながら、原作にはディズニー版とは一味違った魅力があります。

そこで今回は、あまり知られていない原作版のストーリーを簡単にご紹介。お子さんへの説明に便利な、より短いあらすじも、あわせてまとめてみました。

あらすじ

あるところに、ジェッペットという木彫り職人が住んでいました。子どもがいないジェッペットは、ある日、大工の友人からもらった不思議なしゃべる木で、一体の操り人形を作ります。まるで人間のように動いて話すいたずら好きの人形を、ジェッペットは「ピノッキオ」と名づけ、わが子のように育てはじめました。

やがてピノッキオは、学校へ行くことになります。貧しいジェッペットは、教科書を買うために自分のコートを売ってくれました。しかしピノッキオは、はじめての登校の日に、せっかくの教科書をサーカスを見るために使ってしまいます。サーカスでは、そんなピノッキオを憐れんだオーナーが金貨を恵んでくれますが、再び学校へ向かう途中に、今度はずるがしこいきつねとねこに出会い、ピノッキオはついにお金をだまし取られて失くしてしまいました。

嘘をつくと、ぐんぐんと鼻が伸びてしまうピノッキオ。時に仙女に助けられ、大蛇に出会ったり、百姓に捕まったり……。いくつもの冒険を経て、多くの反省と教訓を得つつも、おもちゃの国でなまけて暮らしているうちに、ついにはロバになってしまうことも……。

しまいにはロバとして売られそうになり、ピノッキオは海へと脱出します。そんな冒険の最後に、自分を探しに海へと出ていたジェッペットとサメの胃の中で再会。ふたりは再会を喜び、サメの胃をやっとの思いで脱出することに成功しました。

以来、ピノッキオは心を入れ替えて、大人のいうことをよく聞き、周りの人を思いやりながら暮らすようになります。その変化を喜んだ仙女によって、ピノッキオは本物の人間の子どもになることができました。

あらすじを簡単にまとめると…

木彫り職人のジェッペットじいさんは、動いたり話したりすることができる木の人形のピノッキオをわが子のように大切にしていました。ピノッキオは、嘘をつくとぐんぐんと鼻が伸びてしまう人形です。

しかし、ピノッキオは学校へ行かずに寄り道をしたり、家にも帰らずお金を無駄にしたりと、心配してくれる周りの大人たちの言うとおりにしません。さらにはおもちゃの国でなまけたりしているうちに、ロバになってしまうことも……。しまいには、ロバとして売られそうになります。

売られまいと海へと脱出したピノッキオは、海でピノッキオを探している途中サメに飲まれてしまったジェッペットじいさんと、サメの胃の中で再会。ふたりでの脱出に成功すると、ピノッキオは心を入れ替えます。おじいさんの言うことをよく聞くようになり、思いやりを持つようになりました。そのご褒美に、ピノッキオは仙女によって、人間の子どもに変えてもらえました。

原作『ピノッキオ(ピノキオ)の冒険』の主な登場人物

ここでは、ピノッキオの物語に登場するキャラクターをおさらいしておきましょう。

ピノッキオ(ピノキオ)

木でつくられた人形。人間のように話したり動いたりできる。嘘をつくと鼻が伸びる。

ジェッペット(ゼペット)

ピノッキオを作った木彫り職人。

仙女(妖精と訳されることも)

ピノッキオのピンチをたびたび救ってくれる。

きつねとねこ

ピノッキオからお金を騙し取る。

コオロギ

ピノッキオに助言・忠告してくれる。

原作は怖い? 原作『ピノッキオの冒険』とディズニー版はここが違う!

前章では、『ピノッキオの冒険』のあらすじをごく簡単にご紹介してきました。あらすじだけでも「ディズニーと違う」と感じた方もきっと少なくないかもしれません。

ディズニー版のイメージとは異なり、「怖い」「残酷」と噂されることもある原作『ピノッキオの冒険』。ここでは、そんな原作とディズニー版との違いをお伝えしていきます。

原作の結末は残酷? 怖いと噂される理由は

実は、原作の初回連載の結末は、ピノッキオがきつねとねこに騙されて殺されてしまうというものでした。「大人のいうことを聞かないと危険な目に遭うかもしれない」という教訓を示す意図があったのかもしれませんが、ディズニーの『ピノキオ』に慣れ親しんだ現在からは到底考えられない展開ですよね。

これには当時の読者からも苦情が寄せられたため、再連載の際にピノッキオを生き返らせて、ハッピーエンドへと向かうお話に改変したと言われています。

原作のジミニー(コオロギ)は?

前章のあらすじを読んでくださった方のなかには、「あれ? ジミニーは?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。

ディズニー版では出ずっぱりで、ピノキオに善意を教える重要な役割を担うジミニー・クリケット。ですが、原作におけるジミニーにあたるコオロギは、ほんの脇役です。なぜなら、物語序盤で「親の言うことにそむく子どもにはろくなことはない」と忠告したところ、逆上したピノッキオが投げた木槌にぶつかり、運悪く死んでしまうから。

ただし、物語中盤以降も、亡霊となったりしながら、ふたたびピノッキオの目の前にあらわれ忠告をすることもあります。最終的にはピノッキオと和解する点も見どころです。

ピノッキオを丸飲みにしたのはサメ。しかも助けてくれたのは……

ディズニー映画では、最後にピノキオとジェペットを飲み込んでしまうのはクジラでした。けれども、あらすじにもあった通り、原作でふたりを飲み込むのはサメです。

お腹の中でふたりが再会するシーンは、サメにしてもクジラにしても現実的には想像しづらいですが、危機感は共通して感じられますね。ふたりを助けてくれたのがマグロだった点も、原作にしかない展開!

ロバになった友だちの顛末は?

ディズニー、原作、どちらにも共通するのが「不良の友人がロバになってしまう」シーン。ディズニー版ではあの友人が最終的にはどうなったのかが描かれていませんでしたね。しかしながら原作には、ロバになった友人がピノッキオの目の前で息絶えてしまう顛末がしっかり描写されています。

子ども用に脚色されたディズニー版とは違い、歯に衣着せないスタンスが特徴的な原作。しかしながら、ディズニー版と同様に、子どもにもぜひ知っておいてほしい教訓が原作にもぎゅっと凝縮されています。この魅力が、100年以上もの長い間、本作が世界中で読み継がれる理由のひとつではないでしょうか。

「ピノキオ」を読むなら|ディズニー版&原作からおすすめの2冊

『ピノキオ』『ピノッキオの冒険』を「読んでみたい」「子どもにすすめてみたい」と感じてくださった方向けに、おすすめの本もご紹介。ディズニー版&原作版から1冊ずつ取り上げていきます。

ピノキオ (小学館ジュニア文庫)

エリザベス・ルドニック (著), 代田 亜香子 (翻訳)

ディズニープラスで話題の実写映画版『ピノキオ』を小説で楽しめる一冊。家族をなくし、孤独に暮らしていた木彫り職人のおじいさん・ゼペットと、彼が作った男の子のあやつり人形・ピノキオのお話です。
ディズニーが手がけた映画の小説版なので、夢と希望にあふれた物語展開が特徴。「原作版はちょっと怖いかも?」と心配な子にはこちらがおすすめです。中学年くらいの子が読みやすい言葉で書かれています。

ピノッキオの冒険 (岩波少年文庫)

カルロ コッローディ (著), 杉浦 明平 (翻訳)

こちらはカルロ・コッローディの原作を忠実に翻訳したものです。ジェッペットじいさんが作った、ことばをしゃべる操り人形・ピノッキオは、ある日学校へと通うことに。けれどもその道中で……。
ピノッキオの物語や出自についてをもっと深く知りたい子や、古典的な児童文学に興味がある子ならぜひおすすめしたい一冊。小学3〜4年生以上向けです。

原作・ディズニー版両方に触れて、ピノキオの世界を深く味わおう

今回は、ディズニーの名作映画『ピノキオ』や、その元となった原作の『ピノッキオの冒険』についてお話をしてきました。

「ディズニーと違って怖い」「残酷」との噂を耳にしやすい原作ですが、作中に描かれていることは、もちろんそれだけではありません。ジェッペットがピノッキオに見せる父性や、ファンタジーとしての世界設定等々も注目してほしいポイントです。

ぜひ原作・ディズニー版どちらにも触れて、ピノキオ(ピノッキオ)の魅力を堪能してみてくださいね。

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文/羽吹理美 構成/HugKum編集部

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