『白雪姫』のあらすじ|キスでは目覚めない? 本当は怖い原作や、後日譚が意外【教養としての童話】

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『白雪姫』は、グリム童話”あるある”で、本当は怖い結末があります。今回は、グリム版とディズニー版との違いをまとめました。また、この物語から得られる教訓についてもご案内します。

『白雪姫』って、どんなお話?

『白雪姫』は、グリム童話の中の一つのお話でドイツの民話。ストーリーをご存じの方も多いと思いますが、一言でいえば、白雪姫がその美貌を義母に嫉妬され、命を狙われる物語です。

「白雪姫」とは

1922年に出版された英国版『白雪姫』の表紙 published by Philadelphia, G.W. Jacobs & company

白雪姫の原題は、ドイツ語で”Schneewittchen”(英題”Snow White”)といい、「Schnee」はドイツ語で「雪」を意味し、「wittchen」は「小さなもの」を表す接尾語。つまり「Schneewittchen」は「小さな雪」あるいは「小さな白いもの」という意味になります。

ディズニーの『白雪姫』は、1937年に公開されました。これは、ディズニー初の長編アニメーション映画でした。

グリム童話とは

グリム童話とは、ドイツの説話学の創始者、また言語学・文学者のグリム兄弟(兄ヤーコプJacob Grimm(1785―1863)、弟ウィルヘルムWilhelm Grimm)によって編纂された、主にドイツの伝承や民話を収録した童話集のことです。

1812年に初版が刊行され、以降、数版にわたって改訂が重ねられました。2005年に、グリム童話はユネスコの世界記憶遺産に登録されています。

グリム童話には、よく知られた作品として「シンデレラ」「ラプンツェル」「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「星の銀貨」などがあり、今日でも多くの国で愛読されています。

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『白雪姫』のあらすじ・ストーリー紹介

ここでは、一般的に流布されている『白雪姫』のあらすじをご紹介します。

※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

詳しいあらすじ

むかしむかしある国に、とてもとても美しいお姫様「白雪姫」がいました。白雪姫のお母さんは、出産するときに亡くなってしまいます。

継母に命を狙われる

5歳になった時、王様は新しいお妃様を迎えます。継母はとても美しい女性でしたが、自分が世界で一番美しいことにこだわりを持っていました。そこで、魔法の鏡に「鏡よ、鏡、この世で最も美しいのは誰?」と問いかけ、「それはお妃様、あなたです」と言われると、安心して喜んでいました。

数年後、王様が亡くなります。王様の地位を継承したお妃は、日増しに美しくなっていく白雪姫にライバル心を燃やし、白雪姫を下女と一緒に仕事をするよう命じ、酷い身なりと境遇を与えます。

ある日、魔法の鏡に「鏡よ、鏡、この世で最も美しいのは誰?」と問いかけると、鏡が「それは白雪姫です」と答え、お妃は激怒。猟師を呼び寄せ、白雪姫を森へ連れて行き、殺してくるよう命じます。

しかし、猟師は何の罪もない白雪姫を殺すことはできず、森に逃がします。白雪姫の心臓を持ち帰るように言われた猟師は、代わりにイノシシの心臓を持ち帰ります。すると、お妃はそれを美味しそうに食べて喜びます。

小人との出会い

白雪姫は森で小さな小屋を見つけます。中に入ってみると、誰かが住んでいることが分かり、白雪姫は部屋を掃除し、夕食を作ると、二階に上がりベッドで寝てしまいます。

近くの鉱山では小屋の住人である7人の小人たちが陽気に歌を唄いながらダイヤモンドを採掘しています。日没になり、家に戻ると白雪姫が寝ていることに驚きます。

小人達は白雪姫の事情を聞き、ずっとここにいても良いと話します。そして、白雪姫は小人たちと一緒に賑やかに過ごします。

毒リンゴを食べる

一方、お妃は魔法の鏡によってまだ白雪姫が生きている事を知り、怒り心頭に。今度は自分の手で白雪姫を殺そうと考え、食べると永遠の眠りにつくという毒リンゴを作ります。

小人たちが仕事に出かけ一人になった白雪姫のもとへ、物売りに化けたお妃が毒リンゴをもってやってきます。白雪姫はお妃を家に入れてしまい、すすめられた毒リンゴを食べて倒れてしまいます。お妃はこれで自分が一番の美貌の持ち主になったと喜びます。

結末

帰宅した小人たちは白雪姫が倒れているのを見て、逃げていくお妃を追いかけます。お妃は、小人たちを殺そうとしますが、その瞬間に雷がお妃の足元に落ち、谷底に落ちてしまいます。

小人たちは、白雪姫は死んだと思っていましたが、不思議なことに白雪姫の体は腐らないので、小人たちはガラスの棺を作り、そこに白雪姫を寝かせ、毎日のようにお花を添えお祈りを捧げます。

すると、その噂を聞いた王子様があまりの美しさに、白雪姫にキスをします。その瞬間、白雪姫は目を覚まし、動物も小人たちも歓喜します。

白雪姫は小人たちに別れのキスとハグをすると、王子様の馬に一緒に乗ってお城へ行き、二人は幸せに暮らすのでした。

あらすじを簡単にまとめると…

王女・白雪姫の美貌に嫉妬した義母が白雪姫の命を狙う物語です。逃れた白雪姫は小人たちと出会い、森で暮らすことになりますが、義母はそれでも彼女を追いかけ、毒リンゴを与えます。永遠の眠りについた白雪姫でしたが、王子様の真実の愛のキスで目を覚まし、二人は結ばれます。

『白雪姫』にこめられた教訓

『白雪姫』の教訓は、見かけの美しさだけが全てではなく、心の美しさが大切だということです。また、ねたみや嫉妬といった負の感情は、結局は自分自身を苦しめる事になると言う教えが込められています。

そして、知らない人が訪ねてきても家に入れてはいけない、信用してはいけない、という事は、今の時代でも非常に大事なことですので、お子さんにはぜひ伝えたい教訓ですね。

主な登場人物

主な登場人物も紹介します。

  • 白雪姫(Snow White):

  • 美しい王女で、義母に命を狙われます。
  • お妃(Evil Queen):

  • 王女の義母で、自分が最も美しいと思っています。
  • 7人の小人たち(Seven Dwarfs):

  • ドック(先生) – リーダーで、メガネをかけている唯一の小人。
  • グランピー(おこりんぼ) – いつも不満や文句を言っている小人。
  • ハッピー (ごきげん)- 常に笑顔で陽気な小人。
  • スリーピー (ねぼすけ)- いつも眠そうで、寝るのが大好きな小人。
  • バッシュフル(てれすけ) – 恥ずかしがり屋で、すぐ照れる小人。
  • スニージー(くしゃみ) – アレルギーのためにいつもくしゃみをしている小人。
  • ドーピー( おとぼけ)- 不器用でおっちょこちょいな小人。
  • 王子様(Prince):

  • 白雪姫に恋する王子様は、グリム童話版ではあまり重要な役割を持ちませんが、ディズニー版では重要な役割を担います。

本当は怖い原作の『白雪姫』

ディズニー映画では、子ども向けに残酷な表現を避け、王子様と出会ってハッピーエンドで終わりますが、古くから伝わっている原作は、毒リンゴ以外にもまだあった殺人未遂や、お妃が復讐される結末も。その内容もご紹介します。

本当はリンゴだけではなく、「毒の櫛」でも殺害計画

物売りに化けたお妃は、毒リンゴで殺すまでに、二度の殺害計画を遂行しています。

最初は、「しめひも」という、ドレスを腰から背中のあたりで締めるための腰ひもを売りに来ます。きれいな刺繍のしてある紐に、白雪姫は魅了され、おばあさんが「どれ、締めてあげよう」と言って、白雪姫の背中に回ると即座に首を絞めて気を失わせます。戻って来た小人たちが驚いて、紐を切ると息を吹き返します。

しかし、鏡を見てまだ白雪姫が生きていることを知った女王は、今度は毒を塗った櫛(くし)を売りに来ます。白雪姫は、うっかりまた家の中に入れてしまいます。おばあさんは「髪を梳(す)いてあげよう」と言うと、その毒櫛を白雪姫の頭皮に刺します。その場で倒れる白雪姫。

また、小人たちは戻ってきて驚きます。櫛を抜くと白雪姫は意識を取り戻します。もう決してどんな人も家に入れてはいけない、ときつく小人たちから言われるのですが、また、毒リンゴを売りに来たときに入れてしまう白雪姫なのです。

グリム童話では、キスで目覚めたのではない?

小人たちは、死んでしまったはずの白雪姫があまりに美しく、しかも、どうしてか腐らないので、土に埋めることができませんでした。代わりに、ガラスの棺を作り、その上に金色の文字で「〇〇国王の娘、白雪姫」と書きました。毎日、7人が一人ずつ順番で白雪姫の周りのお花を入れ替え、祈りをささげていきます。

そこへ、森で迷った王子様が通りかかり、ガラスの棺に気づきます。王子さまはあまりに美しい白雪姫に心を奪われ、どうしてもこの姫を連れて帰りたい、と言います。小人たちは、最初は拒みますが、王子が「最高のもてなしを約束する」と姫を大切に扱うことを誓うので、小人たちも「お姫様は王子様と一緒のほうが良いだろう」と白雪姫を譲ります。

王子は、家来たちに命じて、棺を担がせて帰りますが、家来の一人が木の根でつまづきます。すると、揺れた拍子に、白雪姫は喉から毒リンゴの破片を吐き出し、意識を取り戻すのです。

ディズニーや、現代に伝わる多くのバージョンでは「王子様のキス」で目覚めることになっていますが、グリム童話の原作では、喉に詰まらせていた毒リンゴが飛び出る、というものでした。

お妃が復讐される結末も

生き返った白雪姫に王子はこのまま一生僕のそばにいて欲しい、と求婚します。

そして、とても立派な婚礼式が行われることになり、隣国の女王である継母も招待されます。継母である女王は、王子の結婚相手がまさか白雪姫だとは知らないのですが、ある日、魔法の鏡から「この国では、女王様、あなたが一番美しい。でも、隣の国では若い女王が千倍も美しい」と言われ、衝撃を受けます。

女王は、新しい女王の美しさを見ずにはいられません。結婚式へ行くとその若い女王が白雪姫と知ります。あまりの驚きに立ちすくんだまま動くことが出来なくなっているところを、みんなが石炭の上で真っ赤になっている鉄の靴を持ってきて女王にはかせ、倒れて死ぬまで躍らせるのでした。

このように原作の物語は締めくくられており、義母のお妃はさいごは白雪姫に復讐されるという結末なのです。

『白雪姫』を読むなら

それでは、以下に『白雪姫』の絵本から完訳版まで順番にご紹介します。

しらゆきひめ ~語りつぐ名作絵本~(小学館)

 

白雪姫 ディズニーゴールド絵本ベスト(講談社)

講談社編集 18ページ 2021/4/23 絵本・Kindle版

きれいで大きなイラストの絵本。漢字は一切使用されていません。小学生低学年、または文字が読めるようになったら。

白雪姫(青空文庫)

ヴィルヘルム・カール グリム (著), ヤーコプ・ルードヴィッヒ・カール グリム (著), 菊池 寛 (翻訳)  形式: Kindle版 20ページ 2012/9/13

完訳版。大正から昭和初期に小説家・劇作家として活躍した菊池寛が子ども向けに翻訳したもので、少し古い日本語が使われていますが、本当のグリム版白雪姫を読むのにはお勧めです。小学生中学年~。

白雪姫: グリム童話集Ⅰ (新潮文庫)

グリム (著)、植田 敏郎 (翻訳) 324ページ 1967/8/1 文庫・Kindle版

 

白雪姫を含むグリム童話集。完訳版。易しい漢字使用、難しいものにはルビあり。電子版はテキスト読み上げ機能がついていますので、キンドルに読み上げてもらうことも可能。小学生中学年~。

世界初の長編アニメ『白雪姫』の品質に世界が震撼

『白雪姫』は、世界初の長編アニメーション映画です。1937年発表当時、第二次世界大戦以前の時代に、これほどまでに質の高いアニメーションを制作できる技術力と、アメリカの圧倒的な豊かさに、世界中が驚愕しました。今でも全く遜色なく鑑賞できるなめらかな動きのアニメは、これこそザ・ディズニーです。

また、このディズニー映画内でモデルとなったお城は、実在するスペインのセゴビアにあるセゴビア・アルカサル城。

「白雪姫城」のモデルとなった、スペイン、カスティーリャ・イ・レオン州のセゴビアにあるアルカサル城。ユネスコの世界遺産に登録されています。

今では、日本もアメリカに劣らないアニメーション産業国に成長しましたが、当時の日本は、家庭にテレビがない時代です。街頭のテレビも白黒しかない時代に、完全フルカラーの長編アニメは驚愕の産物、アメリカの国力を見せつけられた一作だったことでしょう。

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文/加藤敬子  構成/HugKum編集部

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