「サウジアラビア」はどんな国? 日本の“カイゼン”が大好きな石油大国の暮らし、日本との関係の歴史を解説【HugKum世界紀行】

イスラム教の発祥地であり、石油大国として知られるサウジアラビア。長きにわたって日本と友好関係を築き続けている国でもありますが、そこでの暮らしがどのようなものかご存じですか?
本記事では、サウジアラビアの生活や、日本との関係の構築の歴史を中心にご紹介していきます。

サウジアラビアとはどんな国?

まずは、サウジアラビアの基本的な情報を押さえておきましょう。

どこにある国?

ユーラシア大陸の南西部、アフリカ大陸と向き合う辺りに位置するアラビア半島。そのアラビア半島の主要部分を占める国がサウジアラビアです。北部はクウェート、イラク、ヨルダン、イスラエル、東部はペルシア湾、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン、南部はイエメン、西部は紅海と面しています。

基本情報

面積や人口、使用言語等は以下のとおりです。

面積

215万平方キロメートル

人口

3,217.5万人(2022年、サウジアラビア国勢調査)

首都

リヤド

サウジアラビアの国旗。中央のアラビア文字は「アッラーのほかに神は無し、ムハンマドはアッラーの預言者なり」という『コーラン』の聖句。

言語

アラビア語(公用語)

宗教

イスラム教

日本との時差

日本とサウジアラビアとの時差は6時間で、日本のほうが進んでいます。

サウジアラビアと日本の関係

そんなサウジアラビアと日本は、どのように現在の友好関係を築き上げてきたのでしょうか。ここからは、日サの国交の過去から現在までの歴史を簡単に解説します。

はじまりは日本人によるメッカ巡礼

山岡光太郎  Wikimedia Commons(PD)

日本とサウジアラビアの交流は、1909年にイスラム教の聖地メッカを、イスラム・ユダヤ研究家の山岡光太郎が巡礼したことから始まります。その後も、第二次世界大戦勃発までの間に、何人もの日本人イスラム研究家や日本人ムスリムがメッカ巡礼に訪れました。

日本とサウジアラビアの最初の公式な接触は1938年。現在は「東京ジャーミイ」と呼ばれている「代々木モスク」の開堂式に、サウジアラビアの駐英公使ハーフィズ・ワフバが訪れたこととされています。

本格的な外交の始まりは1955年

その後、日本とサウジアラビアの外交は第2次世界大戦で一時中断しますが、終戦を迎えると、国際社会に復帰した日本政府は、1953年に経済使節団をサウジアラビアへと派遣します。

そして、1955年に、両国が正式に外交関係を樹立したことから、日本とサウジアラビアの関係は進展。このことがきっかけとなって日本は石油利権を手にしていきました。

日本への最大の原油供給国

1957年には利権協定を締結し、日本企業のアラビア石油株式会社がサウジアラビア政府より石油採掘権を与えられます。クウェートとの旧中立地帯沖合で石油の採掘に成功し、同社の石油生産は石油採掘権が失効した2000年まで継続。

今現在も、日本はサウジアラビアから石油の総輸入量の約40%をサウジアラビアから調達しており、サウジアラビアは日本にとって最大の石油提供国といえます。

また、サウジアラビアにとっても、日本はアメリカ合衆国に次ぐ世界第二位の輸出相手国です。もちろん、日本への主要輸出品目は石油が95.9%と大部分を占めます。

日本とサウジアラビアの経済協力関係。「日・サウジ・ビジョン2030」とは?

日本とサウジアラビアは緊密な経済協力関係を結んでいます。この関係の始まりは、1975年に経済技術協力協定を締結したことから。この協定によって、両国は合意内容の履行を監視するためのサウジアラビア・日本共同委員会を設立しました。さらに、2009年には航空協定、2011年には租税条約を締結。

2017年には「日・サウジ・ビジョン2030」、2019年には「日・サウジ・ビジョン2.0」というさらなる経済協力関係を結んでいます。これは石油依存体質から脱却し、包括的な発展をしようというサウジアラビアの成長戦略「サウジビジョン2030」と、GDP600兆円の達成に向けて日本が追求する「日本の成長戦略」の相乗効果をねらったもの。これに基づき、エネルギーや医療、農業、インフラなどの分野での相互協力が進んでいます。

日本のアニメが大人気

アニメ好きでも知られるムハンマド皇太子 Photo by Kremlin.ru, CC 表示 4.0, Wikimedia Commons

もともとサウジアラビアでは、イスラム教の厳しい戒律に基づいて、映画館やテーマパークが禁止とされていました。しかしながら、近年では「サウジビジョン2030」の実現に向け、エンターテインメント産業を成長分野のひとつと位置付けたことから、それらの解禁や開発構想がなされています。

そんなサウジアラビアでは、日本のアニメが大人気。2019年以来、日本アニメを紹介するイベント『SAUDI ANIME EXPO』がサウジアラビアで開催されたり、サウジアラビアのプロダクションと東映アニメーションによる共同制作アニメ『きこりと宝物(2018年)』『アサティール 未来の昔ばなし』シリーズ(2020年)が放映されたりもしています。

中でも、首相であるムハンマド皇太子が日本アニメの大ファンであることも一因となって、サウジアラビアでのアニメ産業の発展に関しては強力な後押しがあるようです。

「カイゼン」の哲学を日本から輸入

また、サウジアラビアでは、日本の経営理念が「カイゼン(改善)」という概念として取り入れられています。

カイゼンは、戦後に短期間で経済成長を遂げた日本企業からの学びとして、1980年代以降、Kaizenという語で日本以外の国に広まった生産の効率化・品質向上を目指す活動のこと。

サウジアラビアでも、日本企業との交流から得た合理的な生産工程や顧客対応を国内の産業現場に取り入れていくカイゼン活動が行われており、その様子やプロセスを見せるテレビ番組『ハワーテル(改善)』は長く人気を集めています。

上述の日本のアニメコンテンツへの関心は、そんな日本への信頼から生まれた流れとも理解できそうです。

首都リヤドの夜景

サウジアラビアの暮らしや生活の特徴は?

では、そんなサウジアラビアの人々はどのような暮らし・生活を送っているのでしょうか。衣食住に焦点をあててお伝えしていきます。

食べ物・食文化

サウジアラビア料理に用いられる一般的な食材としては、小麦粉、米、羊肉、鶏肉、ヨーグルト、デーツなどが挙げられます。

シャーワルマーと呼ばれる羊肉や鶏肉を金属製の串に突き刺してグリルした料理や、ひよこ豆を使ったコロッケのようなファラフェルも一般的な料理として親しまれます。

シャーワルマー Photo by جنان مريش, CC 表示-継承 4.0, Wikimedia Commons

イスラム教社会のサウジアラビアでは、イスラム法に則った「ハラール」の食品や食事のみが提供されており、豚肉とアルコール飲料の摂取が国内全体で禁じられています。

住まい

サウジアラビアの一般的な家は広く、高い塀に囲まれています。イスラム教の戒律に基づいて、サウジアラビアの女性は親族以外の男性の前で顔などを隠してきたため、外から家の中が見られないような造りとなっているのです。

そのほかにも、砂の舞い込みを防ぐために窓を小さく設計していたり、陸地に自然環境が少ないために住環境に鮮やかな色を取り入れたりと、サウジアラビアならではの生活習慣や思想、環境に基づいた住まいが展開されます。

服装

トーブを着る男性たち Photo by Mary Paulose from Muscat, Oman – Assorted Arabs, CC 表示 2.0, Wikimedia Commons

サウジアラビアでは、女性は「アバーヤ」という黒いローブ、男性は「トーブ」という白の長袖・長裾の服を着用し、頭部はスカーフ等で覆い隠すのが一般的です。

アバーヤを着る女性たち Photo by Rod Waddington from Kergunyah, Australia, CC 表示-継承 2.0, Wikimedia Commons

もともとはイスラム教の戒律に基づいて、女性は「アバーヤ」を着用し「ヒジャブ」というスカーフで顔を隠すように定められていましたが、数年前にこの規制は事実上撤廃されました。

現在でも自ら選んで「アバーヤ」と「ヒジャブ」を身につける人もいますが、昨今ではファッション感覚でヒジャブから髪を出したり、自由におしゃれを楽しむ女性も増えています。

教育制度|サウジアラビアと日本の違うところ・似たところ

サウジアラビアの教育制度は、小学校6年・中学校3年・高校3年で、義務教育は15歳までで、この点においては日本と同じといえます。大抵の場合は、小学校、中学校、高校が同じ敷地内にあります。

日本と大きく異なるのは、イスラム教の戒律に基づいて、小学校から男女別学である点。全学年において、男子と女子を分けてクラス編成がされています。

また、「イスラーム法学」や「クルアーン(イスラム教の聖典)」といった宗教に関する授業がある点も日本とは異なる特徴です。

日本にとって、なくてはならない友好国・サウジアラビア

今回は、サウジアラビアの基本情報や、日本との関係、人々の暮らしについてをご紹介してきました。日本から遠く離れてはいますが、石油をきっかけに、なくてはならない友好関係を築いてきた重要な国です。

ここまでお伝えしてきたとおり、昨今の日本とサウジアラビアは、石油だけでなくエンターテインメント等さまざまな分野でさらに関係を強化してきています。今後の動向にもぜひ注目してみましょう。

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文・構成/羽吹理美

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