「お盆」と聞くと、どのようなイメージがありますか? 私は子どものころ田舎のおばあちゃんの家に親戚が集まって、川遊びをしたり、虫取りをしたりしたことを思い出します。また、藁を焼いて迎え火を焚いたり、細かく切ったナスやキュウリを蓮の葉にのせてお供えしたりもしていました。今考えると、とても貴重な経験をさせてもらっていたんだなと、感謝の気持ちでいっぱいです。
お盆と精進料理
お盆は、先祖の霊があの世から帰ってくるという仏教の教えを基にした習わしです。そのため、仏教の「五戒」の中の、生き物の殺生を禁止するという教えをうけ、肉や魚を使わず、大豆をメインとした「精進料理」をお供えし、親戚と食事を囲むといった風習があります。
野菜だけときくと、子どもは食べにくそうかな……と思うかもしれませんが、お手伝いをして、お楽しみポイントを満喫することで、楽しさと達成感のエッセンスが加わり、「美味しい!」と感じることもあります。そこで今回は、夏野菜を使った子どもにもつくりやすい精進料理をご紹介します。
野菜の旨味がつまった、つるんとした精進うどん
夏は子どもがぐんと成長する時期。包丁に初めて挑戦するのもいい機会かもしれません。
「だし」のさっぱりつるんとうどん
材料(2人分)
・きゅうり 1本
・なす 1/2本
・オクラ 4本
・大葉 4枚
・冷凍うどん 2玉
・ごま 適量
・刻みのり 適量
Aめんつゆ(2倍濃縮) 大さじ3
Aしょうゆ 大さじ1
A酢 大さじ1/2
Aごま油 小さじ1
Bみりん 大さじ1
作り方
① オクラは板ずりし、がくをとり、1分程度茹でる。
② きゅうり、なす、オクラをみじん切りする。(なすの灰汁が気になる場合は水につける)
③ 大葉をせん切りにする。
④ Bのみりんを600wで30秒加熱し、アルコールを飛ばす。
⑤ AとBを混ぜ合わせる。
⑥ ②③⑤を和える。
⑦ 冷凍うどんを表記通り茹で、流水で冷やす。
⑧ 器に⑦を盛り、⑥をかけ、ごま、刻みのりをちらす。
子どものお手伝いポイント 包丁初心者は「みじん切り」がおすすめ
① きゅうりのみじん切りに挑戦しよう!
3歳くらいになると、お母さんのマネをしたくて「包丁を使ってみたい!」というお子さんもいるかもしれません。
実は、包丁のスタートとして、「みじん切り」がおすすめなのです。私も「え? 3歳がみじん切りするの!?」と最初は驚いたのですが、注意点を守ると、けがをする危険が比較的少ない切り方だということがわかりました。
「右手で包丁を握り、左手は包丁のみね(背)にのっけて。まな板にみじん切りしたいものを乗せ、刃先がまな板につくように力を入れてザクザク切っていくよ」(右利きの場合)
包丁をまな板につけておく・左手が包丁の上にある。それだけで、手を怪我する可能性はぐっと減ります。なす、オクラは皮が残りやすく難しいため、お子さんの挑戦は、キュウリのみじん切りがおすすめ。その時、みじん切りにしやすいよう、あらかじめ薄めに切ったものを用意するのもポイントです。
② 混ぜるとどうなるかな?
具材と調味料を混ぜるお手伝いも、お願いしてみてはどうでしょうか。
オクラのみじん切りが入っているため、混ぜるとどんどん粘り気が出てくる様子が分かります。「どう変わってきたかな?」「どうしてネバネバしているんだろう?」などと声をかけつつ見守ってあげてください。
また、「○○くんは○回かきまぜてね。そしたらママと交換しよう!」と、終わりが見える声かけも、子どもの集中力が持続するポイントです。
行事食ができないときは「精霊馬」をつくってみても
「お盆休みだからこそ、忙しい」ということもあるかもしれません。そういう場合は、食事を用意しなくても、お盆を感じることができる方法があります。
それは、「お子さんと精霊馬を作ってみる」ということです。
お供えする「精霊馬」を作ろう
お盆の風習の中には「精霊馬」をお供えし、ご先祖様をお迎えするという習わしがあります。「精霊馬」とは、ナスとキュウリに割りばし(串・つまようじ)などで足をつけ、動物に見立てたお供え物です。
故人が自宅に戻ってくるときには、早く戻ってきてほしいという想いから、キュウリを馬に見立て、お帰りになるときには、ゆっくり戻ってほしいからナスを牛に見立てお供えします。
ナスもキュウリも夏の野菜です。お子さんと一緒に精霊馬づくりはいかがでしょう。
一緒に作る中で「速いものといったら?」「ゆっくりなものといったら?」という連想ゲームも楽しいですし、子どもの想像力や語彙力を増やすきっかけにもなります。「新幹線が速いね!」「ゆっくりは……、亀さんかな?」そんな言葉遊びができると楽しいです。串の先は鋭いですので、串の取り扱いには十分注意をしてくださいね。
馬に見立てたきゅうりを、「飛行機」に変身させてみたり、牛に見立てたナスを「ゆっくり歩く子ども」に変身させてみたり。子どもの創造力は無限大。
「ロケットと飛行機だったらロケットが速いから、きゅうりはロケットにしよう!」アイデアも素晴らしいですし、どちらが速いか?を比較する学びにもつながります。
お盆は古くから伝わる伝統行事ですが、「こうでなくてはいけない」というのは、ちょっとだけ置いておいて。ご先祖様が帰ってきてくれることは嬉しいこと。おじいちゃんの、そのまたおじいちゃん……。ずっと昔から先祖代々がいるから、○○ちゃんやママパパはこうして元気でいられるんだね。そのような会話とともに、お盆の行事をご家族で過ごしてみてはいかがでしょうか。
精霊馬の豆知識もチェック!
この記事を書いたのは
出産後、薬剤師として医療に携わる中で、子どもたちの心身の不調が増えていることに気づく。また、自身の子どもの喘息・アトピー性皮膚炎など、子どもの健康に不安を感じることが増えた。興味関心の幅が広い幼児期に「食選力」を身につけ、自分の身体、そして将来、大事な人の身体も大切にできる大人になってほしい。その想いで、青空キッチン、食育イベントを大田区を中心に開催している。また、「食」から広がる世界は無限大であり、「食」を通し、子どもの探究心に火をつけ学ぶ意欲のある子どもを育てることに注力している。