キライになったら算数は終わる!「算数の世界を好きでい続ける」おすすめの図鑑ベスト5を厳選

世の中にはたくさんの図鑑がありますが、ここ最近「算数図鑑」が充実しているのをご存じですか? 問題を解いているとつまずいたり苦手意識が生まれたりすることが多い教科ですが、算数図鑑は「解ける・解けない」だけではない、数や図形などの興味が広がる魅力が詰まっています。親子で算数図鑑を眺めて、たくさんの算数に触れてみませんか?

    「解けるか解けないか」「マルかバツか」ばかり考える算数を卒業しよう

    バラエティ豊かな算数図鑑が増えている

     みなさんのご家庭ではどんな図鑑を見て楽しんでいますか? サイエンス系の図鑑なら「植物」「動物」「人体」など、「子どもが興味のある分野の図鑑から見てみよう」と入手しているご家庭も多いと思います。さて、教科でいう「算数」についてはどうでしょう。どちらかというと図鑑というより問題が解けるようになってほしいと「ドリル」「教材」のほうばかり注目しているのではないでしょうか。

     それは、算数について「問題を解けるか否か」だけにこだわってしまうから。たしかに算数は学年ごとに単元があり、問題を解き続けるイメージがあります。親御さんの世代でも算数の得意不得意の記憶はあっても、それぞれの単元にどんな世界が広がっているのか、日常生活との関係はどこにあるのか、興味をもって眺めることは少なかったのでは……。

    解いても解いても次々問題が押し寄せる算数。マルかバツかの世界に閉じ込められてしまい、算数の不思議やおもしろさに気づかないまま算数の時間を過ごしている。

    算数を探究すると自然と算数力が上がる

     実は算数で扱う数や図形などには、たくさんの歴史的なエピソードや、どう活用させると生活が豊かに過ごしやすくなるのかを考えてきた軌跡があります。算数図鑑ではそうしたエピソードを豊富な図版や丁寧な解説で紹介しているので、読んでいくうちに「算数とは昔から言い継がれている数や図形などを、自分たちも使いこなせるようになること」だと、気づくことができます。

    また、歴史にまつわる話を読めば「自分がこの時代にいたらどんな計測をするだろう」と当時の賢人たちに思いをはせたり、単位の不思議に触れれば「なんで地震はマグニチュードになったのか」という疑問から「もっと調べたい」という気持ちも沸いてきたりするでしょう。さまざまな算数のテーマの中で自分の興味や関心に気づけば、次にどんな算数図鑑を見たらいいのかもわかるかもしれません。読んでいくうちにいつのまにか「問題が解けるかどうか」を忘れ、算数の興味や関心を深めて「この知識を使うと次に何ができるようになるのか」を考えたくなるのが図鑑のいいところではないでしょうか。 

    どんな内容の算数図鑑でも、親にとって算数図鑑は発見の宝庫。ぜひ親子でたくさん読んで、身のまわりの算数を楽しんでください。

    親子ともども楽しめそうかを考えて図鑑を選んで

    今は算数図鑑がたくさんあるので「どんな算数図鑑を選べばいいのか」と迷うこともあるかと思います。そんなときには「子どもの興味」「子どものざっくりとした学年」と「親自身が読んでおもしろいかどうか」で考えるのがおすすめですす。

    子どもは純粋におもしろいものが好きなので、表情を見てピンと来ているかどうかを観察してみてください。もし興味をそそられているようならその本を優先して「自分が選んだ本」「自分の好きな本」という気持ちで本を入手出来たらいいですね。特に「これ!」という気持ちがない場合はざっくりとした子どもの学年や親の好みで選んでもいいと思います。

    算数に興味のない親こそ手に取ってほしい

    親が読んでおもしろいかどうかは、子どもと一緒に読んだりその後内容について話をしたりするときにとても大事です。版元サイトなどの紹介を見た印象でいいので、親が感じるおもしろさをぜひチェックしてみてください。図鑑は読むだけでなくどう活用するかが大事なので、「お母さんは(お父さんは)この本のここがおもしろいと思ったよ。○○はどこがおもしろかった?」などの会話をしたり、図鑑をきっかけに数や図形を使って何かをつくったりするのも楽しいですね。

    なかには「算数や数学は苦手だから子どもに任せたい」と思う親御さんもいると思いますが、そのような方こそ「自分がおもしろいと思える算数の世界はどこにあるか」を探してみてはいかがでしょう。算数図鑑は文系・理系両方の要素を兼ね備えた本なので、「読んでみたら意外とおもしろかった」と感じる方も多いようです。「はじめて自分ごととして算数に向き合あった」と自分自身を発見された方もいるので、ぜひ自分の中の苦手意識をいったん横に置いといて、算数のおもしろいこと探しをしてほしいと思います。

    算数でいちばん大事なのは「好きでい続けること」

    算数図鑑は読んで終わりではなく、実際に何かをしたくなるのも特徴の一つ。平面で解説されていることを立体で試したり、もっと調べたくなったり、実際に解いてみたくなったり。子どもが自分から何かをし始めたら親は見守るだけでいいと思います。でももし子どもが読むだけ、もしくはあまり読まないといった場合は、「もっと読みなさい」と言うのではなく「ここの項目、家の中のどこに隠れてるかな」「料理のこういう場面で使えるね」など、実際の生活に織り交ぜて、図鑑の内容の「実際」を体験できるよう声かけをしてあげてください。

    五感を使って算数を使っていく

    なぜなら、子どもは頭にすべてを入れるより、身体全体で体験をしながら知識を入れたほうがさまざまな知識が入ってくるから。「覚えること」「解けるようになること」よりも図鑑で読んだことを五感を使って遊べるよう、背中を押してあげてほしいのです。

    「算数はキライになったら終わる」これは長年算数記事をたくさん作ってきた筆者の実感です。逆に「算数の楽しい世界にたくさん触れていると、解くときにイメージがすっと降りてくるようになる」これも取材を通して感じた紛れもない事実。ドリルだけでは身につけることのできない探究算数ワールド、ぜひ堪能してみてください。

    今回は特におすすめの5冊をご紹介します。

    『小学館の子ども図鑑 プレNEO かず・かたちの図鑑』

    黒澤俊二/監修 小学館 3080

    ◆対象:幼児期、小学校低学年

    「幼児期から算数に触れさせたいけれど、どんなことをすればいいのよくかわからない」という方におすすめなのが『小学館の子ども図鑑 プレNEO かず・かたちの図鑑』。本書は小学校算数で学ぶ「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」を幼児に分かる身近な日常で系統立ててまとめられています。「体験につなげるヒント」にはどんな声かけをしたらいいのか、アドバイスも紹介されていて、子どもへの算数の関わり方を学ぶこともできます。
    数や量、形にまつわる行事、ことわざ、数学の偉人などの情報も盛りだくさんで「数や形の概念は、こんなに深いんだ」「身近なところに算数素材がたくさんあることに気づけた」など、親も算数の見方が変わる1冊。子どもにとっては、自然の中も暮らしの中も幼稚園・保育園や学校の生活の中も、すべてが算数の学びの場。それらを上手に集めながら算数の体験をたくさんできる図鑑になっています。生活の中のたくさんの算数を、親子で探して楽しんでみませんか?

    ページ下には「どの単元につながる内容か」が記載されている。私立・国立の受験問題、算数の教科書で頻繁に取り上げられている項目が分かるようになっている。

     

    『さわって学べる 図形図鑑』

    朝倉 仁/監修 Gakken 2750

    ◆対象:幼児期、小学校低学年

    子どもにとって「手を動かして考えることほど算数力を上げる手法はないのでは」と思わせる「さわって学べる」シリーズ(『算数図鑑』『図形図鑑』『プログラミング図鑑』の全3冊)。なかでも『さわって学べる図形図鑑』はその効果をとても強く感じる図鑑です。「高学年で図形問題を解くとき、いかに図形をさわって考えてきたかが影響する」と、多くの算数識者が言っています。
    しかし子どもが手を動かして確認する素材を親が準備しなければならず、忙しい親にとっては結構な労力を感じてしまう側面がありました。それが本書では図形感覚の一番大事な実体験をこの1冊でこなせる画期的な図鑑で、何度も試すうちにさまざまな図形感覚が身につきます。特に親だけの関わりでは抜け落ちやすい「対称、回転、曲線」などの感覚も体験できるところに、図形の重要な感覚にフォーカスされていると実感。幼児や低学年だけでなく、中学年や高学年も「こういうことだったのか」と気づくきっかけにもなりそう。図鑑は平面でも空間認識力がしっかりつく、不思議な仕掛け図鑑です。

    「線対称」を体験するページ。線対称とはどんな意味なのか、身のまわりにある線対称の形など、この見開きだけで情報が盛りだくさん。 

    『算数がどんどん楽しくなる 算数のなぜ? ビジュアル新事典』

    受験研究社/編集、秋山 仁/監修  受験研究社 2750

    ◆対象:小学校全学年

    日頃算数の宿題やドリルを解いていると、問題をこなすことに追われて「算数のなぜ」を考える余裕はあまりないかもしれません。しかし本書を読むと「算数が根本的にわかる『なぜ』の立て方」に気づくことができます。たとえば下の写真にあるような「小数はいつ生まれたの?」という問い。普通なら「計算ミスをしないようにしなければ」「小数点の位置、これで合っている?」といった計算スキルや、テストで解けるか解けないかばかりを考えてしまいます。
    でも「小数がいつどのように始まったのか」を読むと、過去の偉人たちが考えた「1より小さいものを扱うための便利な技術」と意味の方が入ってきます。算数とは、数や図形などを扱いやすくするための工夫が積み重なってできた教科。「根本的な考え方」にふれると計算や考え方が「意味から」入ってくるため、思考問題や応用問題がひらめきやすくなるほか、ケアレスミスも減るようになります。「ちょっとよく考えれば解ける」を確実にしながらあと押ししてくれる図鑑なので、ぜひいろんな算数の「なぜ」に触れてみてください。

    小数が生まれたエピソードからは「いつ、だれが、なぜ小数を考えたのか」が分かって興味深い。また小数のしくみも詳しく紹介されていて、根本的な意味が頭に入ってくる。

     

    『数学アタマがぐんぐん育つ 算数の実験大図鑑』

    DK社/編・著 新星出版社 2970円

    ◆対象:小学校全学年

    さまざまな算数分野の実験をやってみたい人におすすめなのが『数学アタマがぐんぐん育つ 算数の実験大図鑑』。これまで実験といえば「理科」領域をイメージしている方がほとんどだと思いますが、本書を読むと「実は算数こそ検証したくなる実験がたくさんある」と気付けるのではないでしょうか。本書は数・図形・測定に分け、27種類もの算数実験を紹介。試行錯誤をしながら「算数のしくみ」も学べるようになっているので、問題を解くときに「あの実験でああやったからこう解くのでは」とイメージがわきやすくなります。
    実験は「課題」「予想」「実験(試す)」「結果」「考察」の工程を確認する作業なので、論理思考力をはじめ、対応力、推理力、まとめる力など総合的な算数力も身につくでしょうし、社会に出てから最も大切といわれている「統計・データ解析力」の土台作りにも一役買いそうです。子どもが夢中で試行錯誤をしながら得た算数のデータや考察を立てた経験は、その後の成績がどうであろうと、算数のおもしろさは一生頭に残ると思います。それくらい楽しい算数実験集です。

    「算数を使ってこんなにワクワクできるなんて!」とびっくりした実験集。生活の中には無意識のうちに算数をたくさん使っていることも実験を通して理解できる。

     

    『目でみる単位の図鑑』

    丸山 彦/監修、こどもくらぶ/編集

    3080円 東京書籍

    ◆対象:小学校全学年、中学校、高校

     

    長さや広さ、体積など、生活の中で使う単位はたくさんありますが、実は子どもが「量」を実感するのは意外と難しく、学校で単位を習うときも体験不足が足を引っ張りがち。本書『目でみる単位の図鑑』はそんな子どもの体験を補ったり、単位にまつわる知識や歴史を学べたりする図鑑です。例えば「1リットルってどれくらい?」「1キログラムってどれくらいの重さ?」など単位ごとの量を写真で実感しているうちに、家の中の単位や量を探すような遊びもしたくなります。
    大人にとっては「ちょっと聞いたことがあるけれど、どんな基準で考えられているのかよくわかっていない単位」の疑問が解けるので、親子でたくさんの単位に触れて生活の中でどう活用しているのかも理解できます。単位とはさまざまなものの「基準値(1あたりの値)」。「単位」という単元だけでなく、小学校算数の難解な単元「割合」「比」「速さ」などの土台にもなる重要なテーマです。本書を読んでいる子どもと読んでいない子どもでは、先の単元の理解力は変わってくるように思います。色々な意味で一生使える図鑑です。

    子どもは1キログラムを知っていても、1キログラムがどれくらいの重さなのか、実はよくわかっていない。これを見たら「ほかに家のなかにはどんな1キログラムがあるか」を探したくなりそう。

     いかがでしたでしょうか。こうして見てみると、さまざまな算数図鑑があることがお分かりいただけたかと思います。ぜひ活用して「算数はたのしい」という気持ちが持てるよう、図鑑を活用してみてくださいね。

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     文・構成/HugKum編集部

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