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絵本の読み聞かせが、子どもの「聞く耳」を育てます
0・1・2歳は、一生のうちで成長が一番著しい時期です。でも、視力は、1歳児でやっと0.2、2歳で0.5~0.6、3歳でようやく1.0程度だそうです。ですから、0歳児には絵本ははっきり見えません。でも、声を聞き取る力は大人と同様、もしくは大人以上にあるのです。この時期の子どもにとって、絵本を読む大人の声はその子を育てる環境そのものと言えるでしょう。言葉の発達にもつながります。どうぞ、シャワーのように読み聞かせをしてあげてください。
0歳児には、シンプルで輪郭のはっきりした色合いの絵本を
0歳児は特に視力が未発達なため、「絵」の見やすさが重要です。単色に単純な輪郭とはっきりした色合いで描かれている絵本を選びましょう。
また、描かれた人物や動物が正面を向いて子どもを向き合っていることも大切なポイントです。
「わんわん」「とんとん」「ころころ」などのオノマトペ(擬態語・擬声語)が繰り返し出てくる絵本も、0歳児さんは大好きです。
0歳児は絵本に目が向いているのは3割。ほとんど読んでいるママの顔を見ているのです
絵本より読み聞かせをしているママの顔をみているのが0歳児。その視線の7割が読み手の顔に、残りの3割が絵本に向くといわれています。
なので、0歳児をおひざに乗せて絵本を読むと、ママの顔を振り返ってばかりになることに気づくはず。なので、この時期はお子さんと横並びになっての読み聞かせが最適です。子どもと読み手と絵本が三角になる位置関係です。
ひとりで座れない子どもは、やや横に抱っこをしてあげましょう。
いずれにしても大切なのは子どもが安心して絵本を楽しめることですから、膝の上でも横並びでもお子さんの好きな方でかまいません。
ママがリラックスして読むことで、お子さんにとって絵本タイムが心地よいものになります
6か月を過ぎると、子どもは大人の「快」「不快」の表情を読み取ると言われています。ママがゆったりとリラックスして絵本を読んであげることが、お子さんが絵本好きになる大きな要素だということを忘れないでください。
わかる言葉が増えて「自分の世界」ができてくる1歳。簡単な物語を楽しめるように
単語や指差しで自分の思いを伝えようとすることが見えてくる1歳児。うれしいこと、楽しいことを他者と分かち合うこともできるようになってきます。子どもの反応を丁寧に受け止めて、絵本を読む楽しさを共有したいものです。
人形を赤ちゃんに見立てた「見立て遊び」や、何かになったつもりの「ごっこ遊び」も始まります。絵本に対しても簡単な物語を楽しみ始め、お話の流れを追ったり、展開を予想したりもします。
この時期の子どもは、味わったことがあるもの、触れたことがあるもの、嗅いだことがある匂いなど、自分の五感で体験したことが興味の中心です。見て、知っているものが描かれた絵本には、すんなりとその世界に入っていくことができるでしょう。
単純な言葉の繰り返し、二語文程度の簡単な文でつづられている絵本がおすすめ
「ママ、だっこ」「ワンワン、きた」など、ふたつの単語で成り立つおしゃべりから徐々に語彙がふえていくころです。絵本の文章も「おくちをあ~ん」などのように、二語文程度でつづられているものであれば、意味をちゃんと理解することができます。
手を動かして楽しめるおすすめ絵本
また、お友達とのかかわりにも積極的になってきますから、声を出したり、手を動かしたり、遊びの要素が含まれた絵本もおすすめです。例えば、『おせんべやけたかな』のような、歌えなくても読み聞かせることでその楽しさが伝わる、わらべうたの絵本は如何でしょう?
また、「だあれ?」「でていおいで」「こんにちは」など、読み聞かせをすることで、子どもと会話をするように遊べる『たまごの赤ちゃん』のような作品もいいですね。
大人のまねっこが大好きな2歳。「自分でできる」につながる達成感を得られる絵本を
ままごと遊びに夢中になったり、お母さんのお手伝いをしたがったり。スマートフォンやタブレットに触りたがるのも2歳児さん。大人のするいろいろなことが「やりたい」のです。
また、「自分でパンツがはける」「自分でボタンをかけられる」(『はけたよ はけたよ』)など、2歳児にとっては「自分でできる」はとても大事なことです。ですから、こども自身が上手になりたいこと、達成したいことが描かれているお話が大好きなときです。
なので、「〇〇ができる」というお話が大好きです。ロシアの昔話『おおきなかぶ』は、「うんとこしょ、どっこいしょ」というかけ声にがんばるイメージを感じ取り、ついにかぶが抜けたところで「やった!」と大きな達成感を得るのです。子どもたちは自分が肯定された気持ちになり、同時に満足感を得るのです。着替えやおかたづけなども、この時期の子どもたちの共感を得やすいテーマの一つと言えるでしょう。
お子さんがなかなか読み聞かせになじめなかったら「遊ぶ絵本」を
読み聞かせになかなかなじめなかったら、「遊ぶ絵本」を読んでみてはいかがでしょうか。『とこちゃんはどこ?』は、まぎれている主人公を子どもたちが探すしかけになっています。なんと、『ウォーリーをさがせ』よりもずっと先に世に出た本。50年を超えるロングセラーです。遊びをきっかけに絵本に親しむことができるといいですね。
遊びがきっかけに親しめる絵本~こちらもおすすめ
逃げた金魚が上手に部屋の中に隠れているのを見つけたり(『きんぎょがにげた』)、ぺんぎんの親子といっしょに体操をしたり(『ぺんぎんたいそう』)、猫と一緒に探偵気分でなぞ解きをしたり(『これだれの?』)。その楽しさで、次へ次へとページをめくる楽しさを体験させてあげましょう。
望まれれば何回でも同じ絵本を読んであげてください。子どもは満足すれば、やがて次の絵本に手を伸ばすことでしょう。
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教えてくれたのは
公立図書館司書とJPIC読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演を行う。近年は大学にて児童文化財としての絵本の魅力を学生に伝えている。鎌倉女子大学短期大学部非常勤講師など、幅広く活躍。著書に『0~5歳 子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』『子どもを育てる0歳・1歳・2歳児にぴったりの絵本』(共に小学館)がある