「醍醐味」とは?
まずは、『醍醐味』の読み方や意味、語源を確認しておきましょう。
読み方と意味
この言葉は、『醍醐味』と書いて「だいごみ」と読みます。一般的に、「本当の面白さ」「かけがえのない楽しみ」といった意味で使われます。
由来・語源
『醍醐味』は、元々は仏教の経典『涅槃経(ねはんぎょう)』の教説のなかで、釈尊の教えの喩えとして記された「牛乳が精製される時に生じる5段階の味」=『五味』のひとつ。『醍醐』とは、具体的には極上の乳製品やバターオイルのことを指し、『五味』の中でも最上に甘味を極めたものとされます。
そのため、『醍醐味』とは、そのような牛乳の「甘味を極めたものの味」を指し、このことが現在の「本当の面白さ」「かけがえのない楽しみ」の意味での使われ方に由来しています。
「五味」とは?
『涅槃経(ねはんぎょう)』に記された、「牛乳が精製される時に生じる5段階の味」=『五味』には、『醍醐』の他にどのようなものがあるのでしょうか。
以下が、『五味』の一覧です。
①乳味(にゅうみ) …牛乳そのものの味
②酪味(らくみ) …発酵乳(ヨーグルトなど)の味
③生酥味(しょうぞみ)…サワークリーム類の味
④熟酥味(じゅくそみ)…発酵バター類の味
⑤醍醐味(だいごみ) …バターオイル類の味
『涅槃経』の中では、これらが以下のように文章内に登場します。
「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生蘇を出し、生蘇より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す、醍醐は最上なり。もし服する者あらば、衆病皆除く……仏もまたかくの如く、仏より十二部経(じゅうにぶきょう)を出し、十二部経より修多羅(しゅたら)を出し、修多羅より方等経(ほうどうきょう)を出し、方等経より般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)を出し、般若波羅蜜より大涅槃経(だいねはん)を出す……」
乳→酪→生酥→熟酥→醍醐と精製されることに、釈迦が相手を見極めて順序立てて教えを段階的に説いたことを喩え、『涅槃経』が最高であることを説いた経文です。
使い方を例文でチェック!
では、ここからは『醍醐味』の具体的な使い方を例文でチェックしていきましょう。
1:選手同士の友情を垣間見る瞬間こそが、スポーツ観戦の【醍醐味】だ。
「真の面白さ」「かけがえのない楽しみ」の意味合いで『醍醐味』を使った例文です。「〜こそが醍醐味」のような使われ方も一般的と言えます。
2:毎日たいへんなことばかりだが、子どもの笑顔と成長を見られることが育児の【醍醐味】だ。
『醍醐味』を「かけがえのない喜び」「真の喜び」のようなニュアンスで使った例文。このように、「面白さ」「楽しさ」だけでなく、「喜び」の意味合いでも使われることがあります。
3:生徒の成長を感じる瞬間に、教師という仕事の【醍醐味】を実感する。
『醍醐味』を「かけがえのない喜び」のほか、「一番の魅力」とも捉えられるような意味合いで用いた例文です。このように、自分がもっとも魅力に感じることについて述べる際に使うことができます。
類語や言い換え表現は?
『醍醐味』はどのような言葉に言い換えることができるのでしょうか。ここでは、『醍醐味』の言い換えに使える類語をご紹介します。
1:真髄(しんずい)
『真髄』とは、「そのものの本質や、もっとも大切なこと」を指す言葉です。『醍醐味』がもつ、「真の魅力」のような意味合いを言い表したい場合に、言い換え表現として使うことができます。『神髄』と書かれる場合もあります。
2:妙味(みょうみ)
『妙味』とは、「そのもののうまみや趣」の意味を持つ言葉です。『醍醐味』の類語としてもよく挙げられます。『醍醐味』と同様に、「本当の面白さ」「かけがえのない楽しみ」といったニュアンスで使うことができます。
3:持ち味(もちあじ)
『持ち味』とは、「独特の趣や味わい」のことを指します。『醍醐味』が持つ「最大の〜」「本当の〜」といったニュアンスは薄れますが、その物事にしかない魅力を指す際には、言い換え表現として使えます。
対義語は?
『醍醐味』には、明確に対となる対義語が存在しません。ここでは、『醍醐味』の反対に近い意味を持つ言葉をご紹介します。
1:無味乾燥(むみかんそう)
『無味乾燥』とは、「味わいがなく面白みがない」ことを意味する四字熟語。『無味(=味わいがない)』と『乾燥(=うるおいがない、面白みがない)』が組み合わせられた言葉です。物事の「本当の面白さ」や「かけがえのない楽しみ」を指す『醍醐味』とは反対の意味を持つ言葉と言えるのではないでしょうか。
2:欠点(けってん)
『欠点』とは、物事の「足りないところ」「短所」など、非難される対象となる点を指す言葉です。物事の「かけがえのない魅力」や「真の楽しさ」を意味する『醍醐味』とは反対の言葉と言えるでしょう。
英語表現は?
『醍醐味』を英語で言い表したい場合はどのような言葉を使えば良いのでしょうか。最後に、『醍醐味』の英語表現も押さえておきましょう。
1:the best part of〜
“The best part of〜”は、「もっとも良い点は〜」と直訳できる英語表現です。物事の「本当の面白さ」「本当の魅力」の意を持つ『醍醐味』を英語で伝えたい場合に使うことができます。
2:real joy
“real joy”は、「本当の喜び」「本当の楽しさ」と直訳できる英語表現。こちらからは「魅力」のような、資質について言い表せるニュアンスがなくなる点には注意しましょう。物事の「本当の面白さ」や「真の楽しさ」について表現したい際に、『醍醐味』の英語表現として使うことができます。
語源とともに覚えて、正しい使い方をしよう
今回は、『醍醐味』の意味や語源、使い方、関連語を一挙にお伝えしてきました。元々は仏教に関連した言葉だったということは、知らなかった方も多いのではないでしょうか。語源とともに覚えて、正しく使ってくださいね。
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文・構成/羽吹理美