毎年開催? そもそも「G20サミット」ってなあに? 参加国や各回の開催目的を分かりやすく紹介【親子で学ぶ国際社会】

日本が参加する国際会議の一つに「G20サミット」があります。20の国・国際機関が集まり、経済を中心とするさまざまな領域について意見を交わします。G20サミットは、どのような経緯で発足したのでしょうか? 世界経済への影響力や重要性を解説します。
<画像:2019年に開催されたG20大阪サミット>

G20サミットとは何か

世界の首脳が集まる国際会議は、「サミット」と呼ばれます。G20サミットが発足した経緯や、開催目的について理解を深めましょう。議長国がどうやって決まるのかも見ていきます。

G20による首脳会合

G20サミットとは、G20の首脳による国際会議です。正式名称を「Summit on Financial Markets and the World Economy(金融・世界経済に関する首脳会合)」といい、議長国(開催国)を変えながら、毎年開催されています。

G20とは「Group of Twenty」の略称です。世界にある20の国・国際機関から構成されるグループで、「世界経済の力強い成長」を目的に掲げています。

G20サミットの議題の中心は「経済」ですが、開発・気候変動・エネルギー・テロ対策など、世界経済に関連するさまざまなテーマを扱います。

G20サミットが設けられた経緯

G20サミットの始まりは、1997年7月にアジア各国を襲った「アジア通貨危機」です。これまで、国際金融システムの議論は、先進国で構成される「G7」が中心でしたが、アジア通貨危機をきっかけに「新興国」の参加の必要性が認識されます。

「新興国」とは、先進国に比べて経済発展は遅れているものの、成長の期待が高い国々のことです。その後、G7に新興国を加えたG20によって「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」が創設され、2008年9月のリーマンショックを契機に、首脳会合へと格上げされました。

第1回のG20サミットが開催されたのは、リーマンショック直後の2008年11月です。2010年まではほぼ半年ごとの開催でしたが、2011年以降は1年ごとの開催に変更されています。

議長国の決め方

G20サミットを取り仕切るのは、G20のメンバーの中から選ばれた「議長国」です。G20サミットでは、2年後の議長国がコンセンサスによって決定されます。

コンセンサス(consensus)とは、「意見の一致」や「同意」を意味する言葉です。国連会議をはじめとする国際会議では、多数決ではなく、互いに歩み寄りながら合意形成を図っていくのが一般的です。

議長国の任期は12月~翌年の11月までの1年間で、議長国はサミットの準備や関係閣僚会合の主催などを担います。日本は、2019年の「G20大阪サミット」で初めて議長国を務めました。

G20とG7の特徴を比較しよう

G20と類似する枠組みの一つに「G7」があります。G7は、一部の先進国からなるグループで、毎年「G7サミット」を開催しています。G20とG7には、どのような違いがあるのでしょうか?

参加国の数

G20とG7の大きな違いは、参加国の数です。G7は「Group of Seven」の略であり、フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダの7カ国と欧州連合(以下、EU)が常任メンバーです。

これらの国々は「自由」「民主主義」「人権」といった基本的価値を共有する先進国といえます。G7サミットでは、経済分野に限らず、地域情勢・貧困・環境といったあらゆる問題が議論されます。

一方のG20は、G7に以下のような新興国・国際機関を加えたグループです。

●アルゼンチン
●オーストラリア
●ブラジル
●中国
●インド
●インドネシア
●韓国
●メキシコ
●ロシア
●サウジアラビア
●南アフリカ
●トルコ
●欧州中央銀行

2023年9月のG20サミットでは、アフリカの55の国・地域が加盟する「アフリカ連合(AU)」の常任メンバー入りが決定しました。

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世界への影響力

G7との二つ目の違いは「世界への影響力」です。G7は先進国によるグループであり、冷戦後は世界経済をけん引する存在となりました。

しかし、メンバー国が限られているため、グローバルな視野にやや欠けるのが難点です。近年は、中国やインドなどの台頭により、世界経済への影響力が低下しているともいわれています。

G20には、経済成長の著しい新興国が参加しています。G20メンバーのGDP(国内総生産)の合計は世界の約8割以上を占め、経済分野でより大きな影響力を有しているのが特徴です。また、世界の多くの国・地域を含むため、経済・社会の課題により広範に取り組めます。

出典:G20に関する基礎的なQ&A|外務省

過去のG20サミットをピックアップ

2008年11月に第1回のG20サミットが開催されたのは、アメリカの首都・ワシントンです。以来、議長国(開催国)を変えながら、多くのサミットが開かれてきました。過去には、どのようなテーマが扱われてきたのでしょうか?

G20大阪サミット

「G20大阪サミット」は、日本が初の議長国を務めたサミットです。2019年6月に日本・大阪にて開催され、当時の内閣総理大臣である安倍晋三(あべしんぞう)がサミットを主導しました。

2019年のG20大阪サミット[首相官邸ホームページより]

このときの主なテーマは、「世界経済・貿易・投資」「イノベーション(デジタル経済・AI)」「格差への対処・包摂的かつ持続可能な世界」「気候変動・環境・エネルギー」でした。

日本は、海洋プラスチックごみによる汚染拡大をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を計画し、現在は各国や国際機関において共有されています。

G20リヤド・サミット

「G20リヤド・サミット」は、2020年11月にサウジアラビアの首都・リヤドで開催されたサミットです。日本から参加したのは、当時の内閣総理大臣である菅義偉(すがよしひで)です。

2020年のG20リヤド・サミット[首相官邸ホームページより]

世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、サミットはテレビ会議形式で行われ、主にワクチンの公平な供給を含めた新型コロナウイルスへの対応、世界経済の回復などについて意見交換されました。

議長国のサウジアラビアは、女性の活躍や循環型炭素経済へのコミットメントを世界にアピールしています。

G20ニューデリー・サミット

2023年9月には、インドの首都・ニューデリーで「G20ニューデリー・サミット」が開催され、日本からは内閣総理大臣の岸田文雄(きしだふみお)が参加しました。

2023年のG20ニューデリー・サミット[首相官邸ホームページより]

サミットのテーマは、「一つの地球・一つの家族・一つの未来(One Earth, One Family, One Future)」でした。世界経済・食料安全保障・気候・エネルギー・環境・デジタルなど、幅広い分野にわたって意見交換が行われ、議論の総括には「G20ニューデリー首脳宣言」を発表しています。

2024年のG20サミットは?

G20サミットは毎年1回の頻度で開催されています。2024年は、どの国が議長国を務めるのでしょうか? サミットのスケジュールや内容を確認していきます。

議長国はブラジル

2024年のG20サミットは、ブラジルの都市・リオデジャネイロにて開催される予定です。開催日は11月で、ブラジルは初の議長国を務めます。

コルコバードのキリスト像とリオデジャネイロ Photo by  Artyominc – Template:Artyom Sharbatyan, CC 表示-継承 3.0, wikimedia commons

ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、「飢餓・貧困・格差との闘い」「気候変動」「グローバルガバナンスの変革」を主要テーマに発表しました。

2024年2月、11月のサミットに先駆けて「G20外相会合」が行われ、日本からは上川陽子(かみかわようこ)外務大臣が参加しています。

外務大臣とは、日本の外交活動を担う「外務省」のトップであり、外交における基本方針の決定や政策の実行などを担っています。

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2月に開催された外相会合の主な争点

2月に開催された外相会合では、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル軍によるガザ地区への軍事作戦について、人道的危機への懸念が表明されました。

ロシアのウクライナ侵攻とは、2022年2月にロシアが隣国のウクライナに攻め込んだ戦争です。ウクライナは占領された領土を取り戻すために反撃し、両国は多くの犠牲者を出しています。

中東ではイスラエル軍と、パレスチナ自治区・ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」との対立が続いています。イスラエル軍によるガザへの攻撃で、多くの民間人が犠牲になっているのが現状です。

そのほか、「グローバル・ガバナンス改革」として、国連や世界貿易機関などの「国際機関の改革」の重要性も議論されています。

2024年2月 リオデジャネイロでのG20外相会合[外務省公式Xより

G20サミットに関する豆知識

各国の首脳が一堂に会するG20サミットには、入念な準備が欠かせません。サミットの成功を支えているのは、どのような人々なのでしょうか? シェルパやトロイカ体制など、G20サミットに関する豆知識を紹介します。

G20サミットの準備は誰が行う?

G20サミットをはじめとする各種サミットでは、「シェルパ」と呼ばれる高級官僚が活躍しています。

シェルパ(sherpa)は、ヒマラヤ地方に住む種族の名称です。ヒマラヤ登山隊のために、案内役を担うことで知られています。サミット(summit)には「山の頂上」という意味があり、会合の準備人は「登山者(首脳)が頂上に到達するまでの手助けをする人(シェルパ)」に例えられているのです。

各国のシェルパは緊密に連携を図りながら、会談の準備や調整、会議内容の根回しなどを行います。まさに黒子のような存在といえます。

G20のトロイカ体制とは?

G20サミットは、「トロイカ体制」によって支えられています。「トロイカ(troyka)」は、ロシアの3頭立ての馬車・馬そりが由来で、「3人の共同指導者による組織運営」という意味です。

G20サミットには、現議長国・前議長国・次期議長国によるトロイカ体制が採用されています。例えば、「G20大阪サミット」は、日本(2019年の議長国)・アルゼンチン(2018年の議長国)・サウジアラビア(2020年の議長国)の協力体制の下で運営されました。

G20大阪サミットを主導する日本の安倍総理と、サウジアラビア(左)とアルゼンチン(右)の代表

G20以外でサミットに参加できるのは?

G20サミットに参加するのは、G20メンバーだけとは限りません。G20メンバー以外で参加する国は「招待国」と呼ばれます。

例えば、G20大阪サミットでは、スペイン・シンガポール・オランダ・ベトナム・チリ・タイ・エジプト・セネガルが招待国として参加しました。

招待国のほか、国連・世界銀行・世界貿易機関(WTO)・世界保健機関(WHO)・国際通貨基金(IMF)などの国際機関も参加しています。

G20サミットは世界経済に大きな影響力を持つ

G20サミットは、G20の首脳らによる国際会議です。議長国は持ち回りで、議長国にある都市で開催されるのが通例です。G20はG7よりも参加国が多く、世界経済への強い影響力を有しています。新興国の経済力が高まるほど、G20の重要性は増します。

G20サミットで議論される主要テーマを見れば、世界が抱える課題や経済の行方が分かります。テレビのニュースや新聞を見るときは、「G20サミット」の情報にも注意を向けてみましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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