「G7」とは何のこと?
G7(ジーセブン)とは、そもそも何を表しているのでしょうか。名前の由来や参加国、活動内容を見ていきましょう。
サミット参加国の総称
G7は、英語の「Group of Seven(グループ・オブ・セブン)」の略称です。自由や民主主義といった共通の価値観を持ち、世界的に影響力が高い国の集まりを指しています。
グループのメンバーは、フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダです。7カ国は毎年「サミット」を開催し、国際問題について話し合っています。
サミットとは英語で「山の頂上」という意味で、大統領や首相といった国のトップが参加する会議を指します。G7サミットには上記の7カ国の他、EUの首脳も参加するのが特徴です。
「G6」「G8」だった時期も
G7は、ずっと7カ国だったわけではありません。1975年にフランスのパリ郊外にあるランブイエ城で初のサミットが開催されたときは、カナダを除く6カ国でした。翌年にカナダが加わって7カ国となり、1977年には「EC(ヨーロッパ共同体・現在のEU)」の委員長が参加するようになります。
また1998年には、ロシアが加わったことで「G8」と呼ばれました。しかし、2014年にウクライナが領有する「クリミア半島」を、ロシアが一方的に併合する出来事が起こります。この行為に激しく反発した他の7カ国は、協議の上、ロシアをサミットに参加させないことを決めました。
G7サミットの歴史とテーマ
G7は、なぜサミットを開くようになったのでしょうか。サミットが始まった経緯と、話し合う内容を紹介します。
サミット開始の経緯
1970年代前半に、以下のような世界経済に大きな影響を与える出来事が続けて起こります。
●ニクソン・ショック:アメリカ・ニクソン大統領がドルと金の交換停止を発表、国際通貨制度が動揺した
●オイル・ショック:原油不足への不安から、世界的に経済が混乱した
先進国の間では、このような世界全体の問題を解決に導くには、国のトップが集まり議論する場が必要ではないかとの認識が生まれます。
こうして、1975年にフランス大統領の呼びかけで、6カ国による第1回サミットが開催されました。その結果、やはり先進国の首脳が集まる場は大変重要と分かり、毎年開催することになったのです。
話し合う内容とは
G7サミットは、世界規模の重要な課題について、各国の首脳が自由に意見を交換する場です。必要に応じて、メンバー以外の国や国際機関などが招待されるケースもあります。議論の成果は文書にまとめ、公表します。G7として何らかの方針を決めることもありますが、強制力はありません。
話し合う内容は、時代とともに様変わりしてきました。当初は世界経済の回復が主なテーマでしたが、近年は気候変動やエネルギー問題・テロ対策・地域情勢などもよく議題に上っています。
G7サミット開催の仕組み
G7サミットを開催する国や首脳が集まる場所は、どのようにして決まるのでしょうか。サミット開催の仕組みを解説します。
「議長国」にて開催される
フランスでの第1回以降、G7サミットは各国が持ち回りで開催することになりました。開催国を「議長国」といい、その国の首脳が議長を務めます。
議長国は議題の設定から日程調整、成果文書の作成などを主導する立場にあり、任期は1~12月の1年間です。フランスの次に議長国を務めたのはアメリカで、以降イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダの順に続きます。日本が議長国を務めるのは、2023年の広島サミットで7回目でした。
「シェルパ」と呼ばれる補佐役が活躍
G7サミットの準備を担う補佐役を「シェルパ」といいます。シェルパとは、「登山の手助けをする案内人」を意味する登山用語です。「山頂」の意味を持つサミットが、無事に成功するように手助けすることから、シェルパと呼ばれています。
シェルパの主な役割は、各国の代表として互いに連絡を取り合い、議題の設定や目指す成果について協議することです。サミット当日は首脳らとともに会議場に入り、議論の内容を踏まえて、成果文書発表に向けた調整に入ります。
開催地の選び方にも意味がある
開催地選びの基準にも、時代とともに変化が見られます。第1回はパリ郊外の古城が選ばれたものの、その後しばらくは首都や主要都市での開催が続きました。
しかし、1999年のドイツのケルンサミットで市民が会議場を取り囲む事件が起こり、状況が変わります。人口が多い都市部でテロやデモが起こった場合、要人はもちろん住民も巻き込まれる恐れがあると考えられるようになったのです。
そこで2000年の議長国・日本は、大都市から離れた沖縄のリゾート地に会議場を設置する「リトリート方式」を採用しました。リトリートとは「隠れ家」のことで、要人を外界から遮断する警備方法を指します。この「九州・沖縄サミット」の成功をきっかけに、以降は都市部から離れたリゾート地や観光地での開催が主流となっています。
日本で開催されたG7サミット
日本はこれまでに7回、G7サミットの議長国を務めています。過去の開催地と、主な特徴を見ていきましょう。
過去の開催地と特徴
日本のG7サミット開催年と会場は、以下の通りです。
●1979年:東京
●1986年:東京
●1993年:東京
●2000年:九州・沖縄
●2008年:北海道洞爺湖
●2016年:伊勢志摩
●2023年:広島
最初の3回は、首都の東京で開催されています。九州・沖縄と北海道洞爺湖サミットには、ロシアも参加しています。北海道洞爺湖サミットでは「環境・気候変動」が重要な議題となったこともあり、日本の環境技術を世界に伝える場としても注目を集めました。
記憶に新しい広島サミット
2023年の広島サミットは、主に二つの点が注目されました。一つは、久しぶりに人口100万人を超える大都市・広島で開催されたことです。日本政府は会議場として、広島市中心部から約7km離れた「宇品島(うじなじま)」のホテルを選び、警備をしやすくしました。約20年リトリート方式が続いた中で、大都市から近い場所に会議場が設けられたのは、異例と考えてよいでしょう。
もう一つは、広島市が世界で初めて原子爆弾を落とされた場所として、世界的に知られていることです。市内の平和記念公園には、世界遺産の「原爆ドーム」や平和について学べる施設も揃っています。
広島と聞いただけで、サミットのメインテーマが世界平和の実現にあると、多くの人が感じるでしょう。ロシアのウクライナ侵攻のように、国際秩序の維持が危ぶまれる事態が起こっている現在、日本政府は平和へのメッセージを発信するのに最適な場所として、あえて広島を選んだとされています。
G7サミットの豆知識
各国の首脳が一堂に会するG7サミットには、恒例行事がいくつかあります。子どもも興味を感じやすい、サミットの豆知識を紹介します。
写真の並び順が決まっている
G7サミットが終わると、参加者が横一列に並んだ集合写真がメディアに公開されます。テレビや新聞で一斉に報道されるため、見た覚えがある人も多いでしょう。
写真の並び順は議長国が決めることになっていますが、基本的には以下の通り、毎回同じルールが適用されます。
●中央に議長が立つ
●議長の両隣に大統領が立つ
●大統領は就任が早い順に右と左に交互に並び、次に首相が同様の順で並ぶ
●一番外側にEUの議長と委員長が立つ
なお日本の首相は短期間で交代することが多く、議長国でない場合は端の方に立つケースが多くなっています。
参加者にはお土産が配られる
G7サミットでは、議長国が参加国の首脳に配るお土産を用意します。議長の配偶者から各国首脳の配偶者に贈る品も同時に用意され、毎回注目されています。
お土産には、主に開催地にゆかりの工芸品や、食材などが選ばれることが多いようです。例えば北海道洞爺湖サミットでは、先住民族「アイヌ」にまつわるアイテムが贈られました。伊勢志摩サミットでは、首相夫人が各国首脳の配偶者に、特産品の真珠のアクセサリーを贈っています。また、2018年のカナダのシャルルボワサミットでは、彫刻やステンドグラスなど、地元のアーティストの作品が選ばれました。
G7を通して世界情勢に興味を持とう
1975年以降、日本を含むG7とEUの首脳は、1年に1回集まって直接意見を交わしています。議題には、そのときに世界で起こっている重大な出来事が取り上げられることも多く、サミットについての報道を通しておおよその世界情勢を把握することも可能です。
この機会にG7の活動について親子で話し合うことで、国際情勢に興味を持つきっかけにしたり、次回のサミットに注目してみたりするとよいでしょう。
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文・構成/HugKum編集部