なぜ、米中は争っているの?今改めて知っておきたい。【親子で語る国際問題】

なぜ、米中は争っているの?

21世紀以降、米国は9.11同時多発テロに直面し、アフガニスタンやイラクでイスラム過激派の破壊を目的とした対テロ戦争に突入しました。しかし、それは終わりの見えない戦争となり、多くの米軍兵士が命を落とし、米国は軍事的に財政的に疲弊していきました。

中東との対テロ戦を強いられたアメリカの疲弊 経済成長がめまぐるしい中国の台頭

米国が中東での対テロ戦という蟻地獄からなかなか抜け出せないなか、中国は経済的に台頭し、ますます大きな国になっていきました。21世紀に入り、中国の経済力は鋭く右肩上がりが続き、2010年あたりには経済規模で日本を追い抜き、世界第2の経済大国となりました。その後も中国の高い経済成長は続き、日本との経済力の差はどんどん広がっていき、近年では米国に接近し続け、世界は米中2大国の時代に入っていき今日に至るのです。

ライバルとして強く米国を意識する中国

そして、米国と中国が良好な関係を作ってくれれば、世界は安心するのですが、中国は米国をライバルと認識し、米国主導で作られてきた今日の世界秩序の打破を目指しています。これはあらゆる側面で見られます。

太平洋をめぐる動き

典型的なケースが、太平洋です。今日の太平洋で軍事的に圧倒的な影響力を持っているのは米国で、それハワイやグアム、日本などに米軍が駐留していることからも明らかです。これまで、太平洋で米軍に挑戦するような相手は存在せず、米国も太平洋で力を持つのは私だ!と自認しています。

しかし、大国となった中国は西太平洋で自らの支配圏を作ろうとしています。ちょうど10年前ごろ、国家主席になったばかりの習近平氏は米国を訪問し、当時のオバマ大統領に対して、「広い太平洋には米国と中国を受け入れる十分な空間がある」と伝えましたが、この時、習氏の中には東太平洋を米国が、西太平洋を中国が管理するという考えがありました。

近年は台湾情勢における米中の関係性が悪化

今もそれに変わりはないのですが、米国はその時、「中国は我々に挑戦してきている。協力関係より対立関係が強くなるだろう」と認識し、中国への警戒感を強めていきました。そして、近年は台湾情勢で緊張が高まっていますが、習政権は台湾の独立を阻止するためには武力行使も辞さない構えで、米国は台湾有事を強く懸念しています。

しかし、米国は中国が台湾を管理下におけば、今後は台湾を軍事的な最前線と位置づけ、そこから西太平洋に中国軍を展開させてくると警戒していて、それは正に米国主導の太平洋秩序への挑戦となるのです。米国は現状維持国、中国は現状打破国と言え、米国は「中国の影響力拡大を止める」、中国は「何としても太平洋に出る」と意見が真っ向から対立しているのです。

米中は、貿易攻撃を繰り返し世界経済の不安定化を招いている

しかし、両国とも軍事的に衝突すれば、多くの兵士が犠牲となるだけでなく、多大な経済損失が出ることを分かっていて、極力戦争になることを回避しています。そして、その分経済や貿易の世界で摩擦が激しくなっているのです。米中双方は互いに、輸出入を制限したり、高い関税を掛けるなどして“貿易攻撃”を互いに繰り返しています

それによって、諸外国は世界経済が不安定化することを恐れ、どの動向を注視しています。
こういった形で米中は対立に、安全保障や経済、貿易や先端技術、人権などあらゆる分野で競争を続けているのです。そして、それはすぐに終わるものではなく、今後何十年というスパンで続くことが予想されています。

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ポイント解説

21世紀に入り、米中の関係はどのように変わってきたのか

①中国が世界第2位の経済大国となり、中国がアメリカを一気に追随

②太平洋をめぐる両国の動き(西太平洋を中国が支配圏に)

③台湾情勢の悪化(中国は台湾を足がかりとして、西大平洋への進出を狙う)

④軍事的衝突を避ける一方、経済や貿易の世界で2カ国間の摩擦が激しく

⑤2大経済大国の貿易摩擦により、世界経済の不安定化が懸念

記事執筆:国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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