カンヌ映画祭も称賛する新進監督が手がける最新作!池松壮亮と思春期の生々しさを演じる子役たちの人間ドラマ『ぼくのお日さま』

⻑編初監督作『僕はイエス様が嫌い』(19)にて、史上最年少の22歳で第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新⼈監督賞を受賞した新進監督・奥⼭⼤史。人気と実力を兼ね備える池松壮亮を迎えた最新作『ぼくのお日さま』も、すでに国際的に高い評価を受けている秀作です。

世界が認めた実力派の新鋭監督が放つ最新作

『ぼくのお日さま』は、⽥舎街のスケートリンクを舞台に、吃⾳のある少年と、彼にスケートを教えるコーチ、そのコーチからスケートを習っている少⼥という3人が織りなす、とても繊細で少しビターな人間ドラマです。本作は、よくありがちなハンデを抱える少年の奮闘物語に留まることなく、思春期特有のナイーブさを生々しくも、非常に細やかに描きだしていきます。

©2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

鮮烈な映画監督デビュー作『僕はイエス様が嫌い』で注目された奥⼭⼤史監督は、是枝裕和監督総合演出のNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」や、NHK夜ドラ「ユーミンストーリーズ」などに携わり、宮崎駿監督作『君たちはどう⽣きるか』(23)の主題歌である⽶津⽞師「地球儀」のMVの監督・撮影・編集も⼿がけたりと、すでに多⽅⾯で活躍しています。

その卓越した演出力は本作を観れば一目瞭然。演者たちの息遣いが感じられるような空気感や、光の美しい画作り、躍動感のあるカメラワークがとても印象的です。

©2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

また、奥⼭監督自身が⼦どもの頃、約7年間フィギュアスケートを習っていた経験から、「雪が降りはじめてから雪がとけるまでの少年の成⻑を描きたい」ということで始まった本企画。主軸は、淡くて小さな恋の物語ですが、タクヤが吃音であったり、多様性について描かれていたりと、様々な要素が入った奥行きのあるストーリーとなっています。

神々しいくらいに尊い少年と少女のスケーティングシーン

©2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

吃⾳のある少年・タクヤ(越⼭敬達)は、アイスホッケーをやっていますが、ある日、スケートリンクで、「⽉の光」に合わせてフィギュアスケートを練習する少⼥・さくら(中⻄希亜良)の姿に、⼼を奪われてしまいます。タクヤはその後、アイスホッケー靴を履いたまま、フィギュアのステップを真似て滑ろうとしますが、まったく上手く滑ることができません。

そんなタクヤの様子を見ていたのが、さくらのコーチである荒川(池松壮亮)です。彼は何度も転びながら、必死で練習をするタクヤに声をかけ、タクヤの練習につきあうことにた。さらに自分が使っていたスケート靴をタクヤに貸した荒川は、タクヤとさくらに、アイスダンスのペアを組んでみてはどうかと勧めます。

©2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

最初は乗り気ではなかったさくらですが、自分が憧れている荒川からの提案ということで受け入れ、2人は練習を開始。やがて3人は、スケートを通じて交流を深めていくことに。

特筆すべきは、越⼭敬逹、中⻄希亜良という手垢のついてないフレッシュな俳優陣です。越⼭くんは、ドラマ「天狗の台所」(23/BS-TBS)や『スイート・マイホーム』(23)、『かぞく』(23)などに出演していますが、本作が映画初主演作となりました。また、中⻄さんに至っては、本作で女優デビューした新星です。

©2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

2人とも4歳の頃からスケートを習っていただけのことはあり、一番の見せ場となるスケーティングのシーンに“嘘”がないんです。そこは本作においては、すごく重要なポイントで、特に「月の光」にのって展開されるシーンは、本作のハイライトとなっていて、神々しいほどの輝きを放っています。

そして、そのシーンが尊ければ尊いほど、あとにくる予想外の展開が実にエモーショナルな流れとなり、観る者の心を揺さぶっていきます。

また、そんな“光る原石”を見つめる池松さんの眼差しもすばらしい。コーチとしてだけではなく、俳優としても2人をサポートしてきたであろう懐の深さや人間力が画面にも溢れています。

多様性を織り込んだメッセージをどう受け取るか?

©2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

本作では三者三様に、いろいろな人生におけるハードルが用意されています。着地点としても、よくある予定調和なものではありません。現実の厳しさに目を背けることなく、きちんと現代社会の空気感を入れ込んだことで、とても厚みのある人間ドラマに仕上がりました。そして、そのメッセージをどう受け取るかを、観客にゆだねてくれている点が最高です。


本作は、今年の第77回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部⾨に正式出品され、約8分間ものスタンディングオーベーションで迎えられたほか、トロント、釜山、サンセバスチャンなどの映画祭からも招待されました。こういう質の高い映画こそ、多くの方に観ていただきたいのです。

例えば、思春期を迎えたお子さんと親子で観ていただければ、きっと多くのものを受け取れるのではないかと。ぜひこの週末は、映画館で本作を観ていただき、豊かな時間をお子さんと共有していただきたいです。

『ぼくのお⽇さま』は、は9月13日(金)より公開中
監督・撮影・脚本・編集:奥⼭⼤史 主題歌:ハンバート ハンバート「ぼくのお⽇さま」
出演:越⼭敬逹、中⻄希亜良、池松壮亮、若葉⻯也、⼭⽥真歩、潤浩…ほか
公式HP:bokunoohisama.com

©2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

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