塾なしの「おうち英語」どうしてる? 小学校での早期英語教育を危惧…言語学の大家の大津先生も登壇の大人気「おうち英語オープンフォーラム2026」に参加してきた!

他の家庭の「おうち英語」はどうしているのか気になりますよね?が、家庭内のことなので、情報が余り入ってこず、公には話すことではないという雰囲気も。今回、「おうち英語」に関わる保護者や英語教育の関係者に向けたイベントが早稲田大学で開催。夫がアメリカ人で家庭内の会話は英語の二人の子どもを育てるバイリンガル家庭のライターがレポします!

うちの「おうち英語」は正しいのか?

「おうち英語オープンフォーラム2026」の会場。

「おうち英語って実際どうなの?」
「他の家庭はどんなことをしているの?」
「どんな研究がされているの?」

そんな疑問を抱いている保護者の方は多いと思います。けれども、これまで、インターや塾などの専門の英語教育ではない、家庭内による「おうち英語」について、具体的に語られる機会はほとんどありませんでした。

グレーな部分が多い「おうち英語」

英語が母語、もしくは外国育ちや帰国子女、英文科卒でもなく、まして、英語が得意でもない親がわが子に「おうち英語」で英語を身につけさせられるか?というのは大きな疑問ですよね。

高額な英語教育の教材やCDやDVDを流しっぱなしで、親が教えなくても英語を身に付けさせたいという風潮…。また、英語教育に費やした時間と引き換えに失うものの可能性は?

これまで公に語られないものの、グレーな部分が多いのも「おうち英語」という印象もあります。

バイリンガル家庭でも難しい「おうち英語」

筆者自身は、夫がアメリカ人で、教育関係の仕事をしており、家庭内での会話は英語です。しかし、子どもは日本の学校、いわゆる一条校に通っており、日本語が主体です。

バイリンガルというには偏りがあり、大学レベルまでの英語力を身につけさせるには、我が家の「おうち英語」のやり方が正しいのか、常に模索しています。

そんな折、「おうち英語はどうしたらいいのだろう」という疑問や関心を持つ方に向けて、交流・体験・学びが詰まった「早稲田大学理工学術院 英語教育センター 尾島司郎研究室」主催の「おうち英語オープンフォーラム2026」が開催され、まさに我が家の疑問に答えてくれるイベントということで、講演会の部に参加しました。

あの言語学の大家の大津由紀雄先生が登壇!

「おうち英語オープンフォーラム2026」で講演する大津由紀雄先生。

今回、「おうち英語オープンフォーラム2026」の講演会の部で、言語学の大家である大津由紀雄先生が登壇しました。

スクリーンに映し出された「おうち英語」に対する「懸念1 認知発達に悪影響が出る危険性」にドキッとした会場の参加者も多かったと思います。

大津先生は、言語学者の立場から英語の早期教育には慎重な立場を取られています。

「おうち英語」がテーマの講演会なので、多くの参加者が実践している、または、興味があるというこの講演会で、英語の早期教育の危険性を語るという、非常に興味深い展開でした。

学校での英語の早期教育には反対

衝撃的な発表から始まりましたが、感情的に単にダメという話ではなく、非常に理論的に、時にはユーモアを交えてお話しされ、会場は和やかな雰囲気に。

まず、先生は小学校で英語教育を導入することを含め、公の場で学ぶ学校教育での早期英語教育は断固反対であるとはっきりと提言されました。

その上で、家庭内での「おうち英語」は、各個人の問題であり、研究者だからと、とやかく言う立場ではなく、やりたければ、やればよいと言う見解ではあると語っていました。

家庭内の英語教育は自由…けれども慎重に

一方で、「学齢前の子どもたちの言語環境はことばの世界に留まらず、認知発達に大きな影響を与える可能性があります。ここは問題の本質をきちんと見極めておかないと取り返しのつかないことになりかねません。しかるべき警鐘を鳴らしておかなくてはなりません」とも話していました。

「『楽しそうだからうちもやってみようかな』とか、『やっぱり英語は小さいときからやるのが大切なのね』とかと無節操に思い込んでしまわないように、理性を磨いて参加することが何よりも大切です」と「おうち英語」に対して、慎重になるよう語っていました。

懸念1 早期英語教育によって認知能力の発達に悪影響が出る危険性

家庭の「おうち英語」程度の英語量で母語の発達に影響があるほど、母語という土台はやわではないとした上で、短時間の「おうち英語」なら心配ないという単純なことでもないとも大津先生は警鐘を鳴らします。

幼児期、小学校期は認知と感性に極めて重要な時期であり、その骨格になるのは母語であるとのこと。母語は自然に使えるようになるものではありますが、その成長には学びが重要です。

その大切な学びの期間は英語の学習ではなく、ことばに対する感性を磨くことに使うことが大切であると大津先生は強調していました。

早期英語教育で失うかもしれないもの

「おうち英語」を経験してきた小学生は数千時間から1万時間ぐらいの英語接触を得てきたケースが多く、平均値約5000時間(中央値4500時間)になります。

小学校3年から中高6年、そして必修英語のある大学の2年間英語の授業量合計は1300時間以下ほどと比べると3倍以上となり、非常に大きいという研究結果も出ています。(*尾島司郎先生の研究による)

大津先生は、この膨大な時間を「おうち英語」にかけることで、認知と感性の発達に極めて大切な時間を失っているということに強く、危機感を持っているとのことです。

英語の早期習得に躍起になって、子育ての本来の目的を見失うことになりかねないと、筆者もハッとさせられました。

中学からでも十分学べる

また、語学はどの年齢でも学ぶことができ、中学生、成人してから、または老年期でも、それぞれの段階でアドバンテージがあるということです。

特に認知力がしっかり伸び、日本語の語彙力がしっかりしてきた中学校から始める英語には、幼少期にはない、アドバンテージもあり、幼い頃から始めないと習得できないと焦る必要はないとも話していました。

こちらは、お子さんが幼児期を過ぎてしまい、早期英語教育の機会を逃し、焦る保護者の方には、朗報だと感じました。

懸念2 「英語優越主義」に陥る危険性

大津先生は、英語と英語による文化は他の言語や文化よりも優れたものであるという「英語優越主義」に陥る危険性も示唆していました。

言語や文化には優越はなく、どれも一定の範囲内で許されるばらつきに過ぎず、多様性の尊重が人類の豊かさにつながります。

英語が使えるようになれば将来が約束されるという考え、英語を学ばせる態度は多様性の重要さを感じ取る貴重な機会を奪うことになるというお話が、筆者にとっても大変耳が痛い話でした。

筆者自身も英語優越主義者だったと反省

筆者自身も学生時代は、英語優越主義者で、ともかく、アメリカ留学をして、英語がペラペラになるのが人生の目標でした。

アメリカの大学院を卒業後、東南アジアに駐在することになり、赤道直下の世界のヘソにやってきて、世界の中心はアメリカでも英語でもないことにようやく気がつきました。

大津先生のお話を踏まえ、母の失敗を踏み台に、子どもたちには、本当の意味でのグローバルな視野を持ってもらいたいと感じました。

早期英語教育よりも大切なこと

参加者の質問に答える大津先生。

「子どものこころの発達の中心にはことばがあり、ことばの力の土台が母語である。『英語ができる子』より『ことばに敏感な子』に育てること」が大切であると話していたのが印象的でした。

ことばについて学ぶべきことの具体的な例は、音とリズムを楽しんだり、形、使い方、方言や文化など言語の多様性を楽しむことで、以下のような幼児教育に大切なポイントを教えてくださいました。

<早期英語教育よりも大切なこと>

  • ・なるべく多くの時間をお子さんとの母語での対話に充てる
  • ・ことばと文化に対する関心を育む
  • ・理性的な思考ができる基盤を築く

そして、上記を取り入れた上で、子どもの全体的な発達を視野に入れてその中で「おうち英語」がどのような意味を持つのかを、改めて慎重に考えてほしいと話されました。

先生のオススメの絵本

また、お子さんの母語や感性の発達を手助けする、たくさんの日本語の良書も紹介してくださいました。谷川俊太郎の『ことばあそびうた』や和田誠の『ことばのこばこ』など、日本語の絵本をお子さんと読んでみてくださいね。

それでも、どうしても英語をやりたいという方には、クッキー好きのキャラクターが人気の世界的な某子ども向け英語教育番組の紹介をチラッとスライドで見せて、たまに観るのはいいかもしれませんと会場の笑いを誘っていました。

「おうち英語」を焦る筆者が参加してみて

「おうち英語オープンフォーラム2026」の会場。

認知能力を伸ばすべき貴重な幼少期を後からでも学ぶことができる英語教育にだけ費やすのか。大変考えさせられる講演でした。

大津先生の講演は、若手研究者の方や英語教室を主宰している方の「おうち英語」に関する修士論文の発表の後でしたので、参加者はどちらの意見も客観的に比べることができる貴重な機会になったと感じました。

参加した筆者自身も「おうち英語」を何とかしなくてはと、ついつい頭に血が上り、焦る気持ちに、良い意味で、冷や水を浴びせられ、頭が冷えて、冷静になりました。

ただ、我が家の場合は、夫がアメリカ人で、子どもたちにとっては、日本語も英語も母語であるので、英語を習得せざるを得ない環境ではあります。

バイリンガル家庭でもインターや留学をせず、日本の一条校に通いながら、英語力をキープするのは並大抵のことではありません。

我が家の子どもは未就学児期を過ぎて、小学校の中学年を迎えていますし、大津先生のお話を踏まえ、母語である日本語を大切にしつつ、家庭内での英語教育は少しずつ力を入れていくつもりではあります。

次回は言語学のプロが実践する「おうち英語」とその実態について

次回は、「おうち英語」を実践する上で、大変参考になった若手研究者方が実践している「おうち英語」や尾島先生の「おうち英語」の実態についての研究をご紹介したいと思います。

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グレーな「おうち英語」についてオープンに語る場を! ゲストスピーカーの研究者(左から3人)と大津由紀雄先生、主催者の尾島司郎先生(右...

二つの記事を比べて、各家庭にあった「おうち英語」を取り入れていけたらよいですね。

>>>尾島司郎研究室についてはこちらから

この記事を書いたのは

Rina Ota ライター

海外通信社を経てバイリンガルのライター、フォトグラファー。お出かけライターとして旅行関連が得意。SDGs、防災、フェムテックなど誰かの助けになる情報も発信中。二児のママとしても子育てに奮闘中。

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