「百ます計算」などの「隂山メソッド」が多くの学校・家庭で成果をあげている隂山英男先生が、子どもの学力を家で伸ばす方法について教えてくださるコーナーです。
今回のテーマは、1学期に勉強した「くり上がるたし算」の家庭学習についてです。
くり上がるたし算と、くり上がらないたし算の違い
くり上がるたし算とは、8+5=13のように、答えが10よりも大きくなるたし算のことです。1学期に習った5+3=8のような、くり上がらないたし算は、「5よりも3大きな数だから、6、7、8…答えは8」と、数を数える要領で習いました。これは子どもにとって、理解しやすいことです。
くり上がるたし算は「手順」が複雑
しかし、8+5= 13のようなくり上がるたし算は、「8よりも5大きな数だから、9、10、11、12、13…答えは13」とは習いません。次のように計算の「手順」にそ って答えを出すことが求められます。
8 + 5 = 13
8 + 2 + 3
① 8にあといくつで10になるかを 求めて2(10の分解)
② 5を2と3に分ける(数の分解)
③ 8+5を、8+2+3とする (式の変換)
④ 8+2で10(10の合成)
⑤ 10+3で、答えは13 (10のたし算)
なんとも複雑な手順であることがご理解いただけると思います。子どもがくり上がるたし算をこのように習うということを、親は理解しておくべきです。
そうすれば、子どもがスムーズにできないとき、①~⑤のどの手順でつまずいているのかがわかり、そこを重点的に補うことで必ず「できる」子になれるのです。
まず10を2つに分ける練習をさせましょう
くり上がりがなかなか身に付かない子の多くは、手順①④にある10の分解・合成(10を2つの数に分けたり、10になる数を合わせたりすること)や、手順②にある数の分解(数を2つの数に分けること)がすらすらできない子です。
こうした場合はまず数を2つに分ける練習、特に10を2つの数に分ける練習をさせましょう(1と9、2と8、3と7、4と6…9と1の、九通りあります)。
決して「もっと練習すれば、そのうちできるようになるだろう」とばかりに計算問題をさせ続けるのではなく、どこでつまずいているかを見て、対策を講じてあげること。それがくり上がるたし算につまずかない子を育てる大切なポイントです。
記事監修
1958年兵庫県生まれ。1980年、岡山大学法学部卒業後、教職の道へ。百ます計算をはじめ、「読み書き計算」の徹底した反復学習と生活習慣の改善に取り組み、子ども達の学力を驚異的に向上させた。その指導法である「陰山メソッド」は、教育者、保護者から注目を集め、「陰山メソッド」を教材かした『徹底反復シリーズ』は、総計770万部の大ベストセラーとなっている。現在、YouTube『陰山英男公式チャンネル』で授業や講演を公開して注目を集めている。
編集協力/小倉宏一(ブックマーク) 撮影/奥田珠貴 出典/『小学一年生』