児童劇団「大きな夢」とは

児童劇団「大きな夢」は、全国26拠点、約700人が所属する子どもミュージカル劇団です。1993年に代表取締役会長・青砥洋さんが創設し、「ミュージカルを通じて人間力を育む」ことを理念に、歌・ダンス・演技を総合的に学ぶ舞台教育を行っています。オーディションなども特にないため、誰もが希望すれば劇団員になれます。そんな気軽に入れる劇団でありながら、創作陣は第一線のプロフェッショナルの方たちばかり。
対象年齢は基本的に小学1年生~高校3年生ですが、6歳から受け入れている拠点もあります。学生時代の多感な時期に、本格的な子どもの習い事の一つとしても注目を集めています。
舞台の顔合わせイベントに潜入!

今年2026年は、日本古典の“美しい心”を世界に発信する「HIKARI PROJECT」を始動。日本の古典をモチーフにした代表作3作品を上演し、日本文化の魅力を国内外へ発信していく方向性です。

先日、9月に初演を迎える新作オリジナルミュージカル「URASHIMA(うらしま)」の顔合わせイベントが、都内で行われました。出演する子どもたち全員が初めて顔を合わせる「顔合わせ」と「本読み稽古」の機会です。
新しい作品のスタートラインに立った子どもたちの表情には、期待と緊張が入り混じっていました。初めて会う仲間もいる中、それぞれが少し照れながらあいさつを交わし、「これから一緒に舞台をつくる仲間」としての時間がスタート。
演出を務める中沢千尋先生は、冒頭で「今日という日は本当に特別な日です」と子どもたちに語りかけました。
「一人ひとりが持っているイメージを出し合い、それを一つの世界観に育てていきましょう。みんなでつくるからこそ、この作品だけの魅力が生まれます」(中沢先生)

完成した作品を演じるだけではなく、作品そのものを一緒につくり上げていく。その言葉には、子どもたち一人ひとりを創作の大切な仲間として信頼する思いが込められていました。
「この先10年、20年、30年と受け継がれていく作品になってほしいと思っています。皆さんが、この作品の最初の歴史をつくるメンバーです。今日という日を忘れずにいてください」との先生の呼びかけに対して、子どもたちは真剣な表情で受け止めていました。
脚本を担当した奥村健一さんは、この作品は『浦島太郎』の物語をそのまま舞台化したものではないと話します。日本最古の浦島伝説をもとに、新たな物語として描いたと紹介しました。
作品に込めたテーマは、「夢を描くこと」。さらに、親子の絆や家族の愛情、仲間との友情など、子どもたちが舞台を通して自然に感じ取れるメッセージが数多く盛り込まれています。
講師やスタッフの紹介が終わると、出演者一人ひとりの名前が読み上げられました。元気よく返事をする子、少し照れながら立ち上がる子、それぞれの姿に保護者の方々も自然と笑顔になります。
本読み稽古の様子

その後、いよいよ本読み稽古が始まりました。
歌の場面では、「歌える人は遠慮せず、大きな声で歌ってください。自分をしっかり出してください」という先生の声かけに応えるように、会場いっぱいに元気な歌声が響きました。
子ども劇団「大きな夢」が大切にしているのは、上手に演じることだけではないといいます。仲間の声を聞くこと、自分の考えを表現すること、一つの目標に向かって協力すること。そして、挑戦する楽しさを知ることです。
こうした舞台づくりの積み重ねは、子どもたちにとって自己表現する力や相手を思いやる心、自信を育む貴重な経験となっていきます。
稽古は約2か月にわたり、9月に本番を迎えます。初めて集まった仲間たちが、励まし合い、時には悩みながら、1つの舞台を完成させていく過程こそが、この作品でしか得られない、子どもたちにとってかけがえのない宝物になっていく。それを端から見ていても実感できました。
劇団によって習い事として得られるメリット

劇団を習い事とした場合に、得られるメリットを教えてください
「歌やダンス、お芝居の技術を学べることはもちろんですが、それ以上に仲間と協力することや、自分で考えて行動する力、人前で自分を表現する力が身につきます。
舞台は一人では作れないからこそ、相手を思いやる気持ちや責任感、最後までやり遂げる力など、将来どんな道に進んでも役立つ経験を積むことができます」(中沢先生)
一般的な習い事とはどのような点で異なるのでしょうか?
「一般的な習い事は個人の技術の上達が中心になることが多いと思いますが、ミュージカルはみんなで一つの作品を作り上げる総合芸術です。自分だけが頑張ればよいのではなく、仲間を支えたり、支えられたりしながら成長していきます。その過程の中で協調性や思いやりが育まれていくことが、大きな特徴だと思います」(中沢先生)
すでに子どもの成長を実感している保護者の方からは、次の声が挙がっているそうです。
「人前で話すことが苦手だった子が自信を持てるようになった」
「学校以外の居場所ができた」
「年齢の違う仲間と関わることで視野が広がった」
また子どもたちからは、次の声が挙がっているといいます。
「仲間ができた」
「挑戦することが楽しくなった」
「舞台をやり遂げたことで自信がついた」
「舞台の経験そのものだけでなく、その過程で得られる人とのつながりや達成感が、子どもたちの成長につながっていると感じています。舞台を通して成長した子どもたちが、今度は講師やアシスタントとして戻ってきてくれることがあります。長く活動を続けている中で、その姿を見ることが私たちにとって何よりうれしい瞬間です」(中沢先生)
「大きな夢」出身者の体験談
実際に幼少期から「大きな夢」に所属して過ごし、現在は「劇団BDP」という高校生以上の団員が所属する劇団で活躍する大学生の石田美々子さんにお話を伺いました。
石田さんはどんなきっかけで「大きな夢」に入団したのですか?
「私が劇団に入ったのは、姉が2人とも先に入団していたことがきっかけです。自分ではあまりはっきり覚えていないのですが、姉たちの舞台を見たり、習い事の真似をしたりする中で、気づいたら私も入団していました。稽古は週に1回、2~3時間ほど。ただの習い事という感覚ではなく、毎週金曜日の稽古が1週間の楽しみで、学校の友達とはまた違う、演劇が好きな仲間に会える場所。学校以上に自分らしくいられる大切な場所でした。他の習い事は行くのが嫌になったこともありましたが、劇団だけはいつも笑顔で行って、笑顔で帰ってきていました」
「大きな夢」のどんなところに魅力を感じていましたか?
「『大きな夢』には、誰一人置いていかない空気があります。厳しい世界ではありますが、先生方の厳しさには必ず愛があり、親のような気持ちで育ててくださいます。できないことがあっても、決して見放さず、その子ができるようになるまで向き合ってくれる。どんな子にも挑戦できる場所があり、みんなで一緒に作品をつくっていく。その雰囲気が私は大好きです」
――思い出に残っている舞台の経験を教えてください。
「『彼女たち』という作品では主役を演じましたが、稽古中は先生から厳しく指導され、何度も悔しい思いをしました。ダブルキャストの相手が幼い頃から一緒に活動してきた仲間だったので、『自分だけできていないのではないか』と落ち込むこともありました。それでも最後まで向き合い、本番を終えたときに、初めて『これが今の自分の精いっぱいだ。悔いはない』と思うことができました。達成感とはこういうことなのだと、12年目にして初めて実感した舞台でした」
――劇団「大きな夢」で学んだことを教えてください。
「主役に選ばれたことだけでなく、オーディションに落ちたときも、たくさんのことを学びました。選ばれたときには、選ばれなかった人の分まで努力する責任があります。どれだけ頑張っても、役のイメージやキャラクターによって選ばれないこともあります。悔しさは今でもありますが、その経験も含めて、自分を成長させてくれたと思います」
――現在の活動と今後の展望を教えてください。
「今は舞台に立つだけでなく、後輩たちに演技を教える機会もいただいています。同じ場所で、自分も演じながら子どもたちに教えられる環境は、なかなかありません。
外部の舞台に挑戦してみたいと思ったこともあります。でも私は、この劇団が大切にしている愛や優しさ、思いやりのある作品に出演したいです。そして、信頼できる仲間と一緒に舞台をつくることに大きな喜びを感じています。
これからも劇団と関わり続け、先生方がつないできたものを、次の世代へつないでいきたいです。私がこの場所で演じる楽しさを教えてもらったように、子どもたちにも、心から舞台を楽しいと思ってもらえるような先生になりたいと思っています」
劇団に所属することは、一般的な習い事とは異なる大きな魅力があるようです。子どもにこれまでにない体験をさせてあげられる可能性があります。もし演じることに興味があれば、一度体験させてみるのも良いかもしれません。
児童劇団「大きな夢」
全国26拠点、約700人が所属する経験問わず入団できる子どもミュージカル劇団。1993年、代表取締役会長・青砥洋(あおと・よう。1942年、島根県松江市出身。NHK松江放送劇団、劇団昴、劇団四季を経て独立)が創設。「ミュージカルを通じて人間力を育む」ことを理念に、歌・ダンス・演技を総合的に学ぶ舞台教育を行っている。2001年には高校生以上を対象とする劇団BDP、2012年には株式会社BDP企画を設立し、演劇教育を「人生を豊かにする学び」として発展させている。
お話を伺ったのは
ニューヨークで2年間ダンスを学び、帰国後は劇団BDPに所属。児童劇団「大きな夢」の総合プロデューサーとして、数多くのオリジナルミュージカルの演出・振付を手がけている。
この記事を書いたのは
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