13歳で起業! 心配性でネガティブ思考だった少年が小中学生のコミュニティアプリ「Beyond the Box」を作るまで【飯尾龍成さん・お母さんインタビュー】

学校や地域の枠を超え、“好きなこと”を通じて小中学生がつながるアプリ「Beyond the Box(ビヨンド ザ ボックス)」。その開発に取り組む飯尾龍成(りゅうぜ)さんは、N中等部に通う14歳。13歳で会社を立ち上げた、中学生起業家です。
いったい、どのような経験が起業への一歩を後押ししたのでしょうか。飯尾さんご本人とお母さんに、小学生時代のエピソードから起業に至るまでの道のり、そして子どもたちの新たな居場所に込めた想いについて伺いました。

小4のときに家族でマルタへ留学。その経験が前向きになるきっかけに

――小学生の頃はどんなお子さんでしたか?

お母さん:龍成はもともと心配性で、どちらかといえばネガティブ思考なタイプでした。1学年15人ほどの小学校に通っていたこともあり、いろいろな人とふれあうなかで、「世界は自分が思っているよりも広い」ということを知ってほしいと思っていました。そこで、オンラインで習い事を探すなど、本人が好きなことには、なるべく挑戦させてあげたいと考えていました。

龍成さん:小学1年生の頃から、オンラインでプログラミングや英会話を習い始めました。プログラミングや英会話への興味もありましたが、習い事を通じて学校以外のコミュニティやさまざまな業種の人と交流したいという想いもあったからです。

――今の龍成さんからは、心配性でネガティブ思考だったという当時の姿は想像できません。何か変わるきっかけがあったのでしょうか?

龍成さん:はい。小学4年生のときに、母と弟とマルタ共和国へ10か月程留学をしました。マルタでは語学学校に通っていましたが、ロンドンやスペインなど複数の国を旅行したこともあり、世界には多種多様な人がいて、さまざまな世界があると実感しました。

留学中に通った語学学校でお世話になった先生たち

お母さん:留学をきっかけに、前向きにいろいろなことに挑戦するようになりましたね。海外での生活が本人の自信にもつながったようで、帰国後は岩手や高知などへ一人旅にも出かけるようになりました。

もともと鉄道が好きなので、自分の好きなことを通じて新しいことに挑戦し、成功体験を積み重ねるなかで、少しずつ自信をつけていったように感じます。

「みんなと同じことをしなければならない」帰国後に感じた小さな違和感

通っていた小学校は1学年15名程しかいなかった

――帰国後、すぐに日本の学校に馴染めましたか?

龍成さん:留学前に通っていた小学校に戻り、学校生活の楽しさを感じる一方で「みんなと同じことをしなければならない」ことに、少しずつ違和感を覚えるようになりました。

人にはそれぞれ得意なこと、不得意なことがあると思いますが、日本の学校では集団で同じことに取り組まなければならない場面もありますよね。マルタでは、もっと自由にさまざまなことに挑戦できていたので、自分が学びたいことと授業の内容との間にギャップを感じ、モヤモヤしていました。

――そのモヤモヤをどのように解消していったのでしょうか?

龍成さん:進学塾に通ってみたり、自分に合う中学校を探して見学に行ったりもしたのですが、なかなかピンとくるところが見つかりませんでした。そんな中で通信制のN中等部に出合い、小学5年生の頃には「中学校は絶対にここに行きたい」と決めていました。

そして、中学からはN中に通うことになるのですが、中でも楽しいと感じたのが、「PBL」と呼ばれる授業です。”PBL”は「Project Based Learning(プロジェクト型学習)」といって先生から教わる授業ではなく、自分たちで考えて答えを作る授業です。答えのない問いを考えたり、自分の意見を周りに伝えたりすることが大事になってきます。今までの授業とはまた違う体験で、ワクワクしました。

自らが先生になって、英会話教室を立ち上げ。そして、起業へ…

公民館での英会話教室の様子

――オンラインの習い事は、帰国後も続けていたのでしょうか?

龍成さん:はい。小学5年生頃に、オンラインで「プレゼン教室」を受講するようになりました。あるとき、教室で「自分がもし社長になったら」という議題が与えられました。そのときに考えた案が、「学校以外で、子どもたちが『好き』でつながれる居場所をつくりたい」。まさに「Beyond the Box」の原案です。

お母さん:プレゼン教室ってちょっと珍しいと思うのですが、AIの時代がどんどん加速する中で、自分の考えを言語化し、人に伝える力が大事になると思い、オンラインで通わせてみることにしました。起業の際にも、プレゼンの機会がたくさんあったので、とてもためになったなと感じています。

――プレゼン教室で出した起業案は、どのように現実化していったのですか?

龍成さん:留学を経験して英会話が少し得意になったこともあり、今度は自分が先生となって、クラスメイトに英会話を教える教室を始めたんです。最初は公民館の部屋を借りて開いていましたが、中学進学を機にオンラインへと移行しました。

ちょうど同じ頃、僕と同年代の子が、いじめをきっかけに鉄道で命を絶ったことを報道で知りました。「学校という小さな世界を飛び出して、オンラインでも趣味や好きなことを通じてつながれる仲間がいたら、何か違っていたんじゃないか」と思うと、悲しくて悔しかった。そのことが、起業を決意するきっかけとなりました。

スタートは「英会話」でしたが、「ゲーム」や「鉄道」、「アニメ」など、それぞれが好きなことを通じて、同じ興味を持つ人同士が自由につながれたら、そこに居場所が生まれ、仲間や友達もできると考えました。

――「Beyond the Box」の社名にも、その想いが込められていますね。

龍成さん:その通りです。自分のとどまっている地域・コミュニティが「BOX」。「自分の見えている世界から飛び出して、自由につながろう」という意味が込められています。僕自身、小さい頃からオンラインを通して素敵な人に出会えたし、マルタへ行って価値観ががらっと変わりました。

2025年度に愛知県のスタートアップ創業支援の対象に選ばれ、会社設立に向けて準備を進め、2025年11月に法人登記をしました。その後、東京で行われたコンテストで奨励賞をいただきました。

お母さん:登記や書類作成など初めてのことばかりでしたが、AIに質問しながら、親子で一つひとつ準備を進めました。

画面オフ・声をほとんど出さなかった子が、ゲーム企画を主催するように

――現在「Beyond the Box」にはどのようなメンバーが集まっていますか? 具体的な活動についても教えてください。

龍成さん:現在、会員は50人ほどで、小学2年生から中学3年生までの子どもたちが中心です。学校に通っている子もいれば、そうでない子もいます。

具体的には、ZoomやGoogle meetを使って「英会話」や「ゲーム」「キャリア教育」などのイベントを企画し、興味のある人が自由に参加できる形にしています。例えば、キャリア教育では、僕自身がオンラインを通じて素敵な人たちと出会い、世界が広がった経験をもとに、子どもたちがさまざまな職業の大人にインタビューする企画を実施しました。先日は国会議員の方にお話を伺う機会もあり、参加した子どもたちにとって貴重な時間になったと思います。

さらに、「Beyond the Box」では、自分のプロフィールを公開し、50種類以上ある「趣味タグ」から、同じ興味を持つ仲間を探すことができます。

普段の学校生活ではなかなか出会えない人とつながり、新しい世界に触れることができる。ここでの出会いをきっかけに、参加しているみんなの世界が広がっていったらうれしいです。これからも、そんな機会をどんどんつくっていきたいと思っています。

――「Beyond the Box」を立ち上げて、うれしかったことや今後の夢があれば教えてください。

龍成さん:何年も学校に行けず、フリースクールにも通えていない子がいました。最初はオンラインゲームをしても、画面をオフにして、声もほとんど聞こえませんでした。それが、回を重ねるごとに少しずつ声を聞かせてくれるようになり、やがて顔も見せてくれるようになって、ついには自分でゲーム企画を主催するまでになったのです。そんな姿を見ると、「Beyond the Box」がその子にとっての居場所になれているのかなと、うれしくなります。

今後は「Beyond the Box」を全国に広げ、住んでいる場所や学校に関係なく、誰もが「好きなこと」で自由につながれる場所を作っていきたいと思っています。

お母さん:現在は、誰でも参加できるようになっているので、一度覗いてみてください。登校・不登校関係なく、そして住んでいる地域も学校も関係なく、「好き」でつながれる場所です。やってみたいこと、考えていることがあったらぜひ仲間になってもらえたらうれしいです。

――ありがとうございました。

こちらの記事もおすすめ

小学生で起業した16歳社長の水野舞さん。耳につけないイヤリングで特許を取得。「子どもたちに人と違う道でもいいと伝えたい」
おしゃれへの憧れから生まれた「マイヤリング®」 ――舞さんは、小さな頃はどのようなお子さんでしたか? 水野 敬さん(以下、敬さ...

お話を聞いたのは

飯尾龍成 中学生起業家/株式会社Beyond the Box 創業者

2012年愛知県生まれ。現在14歳、中学2年生。幼い頃から鉄道が好きで、小学生時代に約10か月間マルタ共和国へ留学。帰国後、学校や地域を超えて同じ「好き」を持つ子どもたちがつながれる場を作りたいと考え、「Beyond the Box」を発案。2025年11月に株式会社Beyond the Boxを設立し、2026年2月から子ども専用コミュニティを公開。英語やゲーム、カードゲームなどを通じて、子どもたちの世界を広げる活動に取り組んでいる。

この記事を書いたのは

茂木雅世 ライター

日本茶と植物をこよなく愛する一児の母。小学生になった娘の早朝お弁当作りにあたふたしながら、疲れたときには、ネコ吸いならぬ「娘吸い」で栄養補給をする。FMヨコハマでのラジオDJやwebメディアでのお茶連載、企業のための音声コンテンツ制作などを生業にしながら、育児の支えとなってくれた「HugKum」での執筆も続ける。著書に「東京のほっとなお茶時間」「東京のおいしいボタニカルさんぽ」。

編集部おすすめ

関連記事