3歳ごろの子どもとスマホとの上手なつきあい方って?【井桁容子先生の子育て相談】

乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「子どもとスマホとの上手なつきあい方」についてお話を伺いました。

Q:息子はスマートフォンで動画を見るのが大好きで、長時間使っていることも。どの程度、自由に使わせてよいのか迷います。

A:心身への影響も考えメリハリのある使い方を

スマホを使わせるときに気になるのは、視力や発達への影響でしょう。でもスマホやタブレットなどがこれだけ普及している社会では、子どもをデジタル機器から完全に遠ざけておくことは不可能です。また、公共の場などで一時的に子どもの気をひくことができるのは子育て中の親にとってありがたいことでもあります。スマホのよい点と注意すべき点を知ったうえで、賢く使うことを心がけましょう。

強い刺激に慣れると五感を十分に使わなくなる

スマホで動画を見たりゲームをしたりするとき、子どもは目と耳、指先くらいしか使うことができません。また、明るくくっきりした映像や人工的な音は、視覚や聴覚を強く刺激します。

デジタルの映像や音とは違い、自然界の変化や動きはずっと穏やかだったり、ささやかだったり。情報を得るためには、五感をフルに使う必要があります。そして感覚を使うことは知的好奇心や「考えること」にもつながります。「この花はよいにおい、こっちの花はにおわない」など、ちょっとした気づきから好奇心が生まれ、いろいろなことを「知りたい」「やってみたい」という気持ちになっていくのです。
スマホを長時間使用して強い刺激に慣れてしまうと、身のまわりのささやかなことに気づきにくくなります。「与えられる刺激を受け取る」遊び方が普通になると、自分から何かを知ろうとすることや、そのために五感を働かせる経験が不足してしまうのです。

親自身のスマホの使い方も見直して

スマホは、子どもだけでなく大人の心身にも影響を与えます。同じ姿勢を続ける、目に負担をかける。映像や音による刺激で興奮し、寝つきが悪くなることもあります。健康を守るため、子どもも大人も長時間使うのは避けましょう。
使い方の理想は、「とっておき」にすること。日常的に使わせるのではなく、子どもにとって退屈な場所にどうしても行かなければならないときなどに、最終手段として与えるものにすることです。それが難しい場合は、「夜はさわらない」「1回10分まで」などとルールを決め、それを守って使うようにしましょう。

子どもとスマホの関わり方が気になるときは、大人自身が自分を見直すチャンスでもあります。読書もSNSも簡単にできるため、大人はすぐにスマホに手を伸ばしてしまいます。でも子どもに「目が悪くなるから1回10分」と言うなら、親がいつもスマホを見ているのはおかしいですよね(笑)? また、スマホばかり気にして、子どもへの対応が上の空になっていませんか?

「ねえ、見て」と言ったとき、ちゃんと自分を見てくれる。子どもはこうした積み重ねによって、信頼感と自信を育てていきます。でも、「見て」と言っても見てもらえないことが続くと、最初から「見てよー!」と叫んだりするようになります。これは、大騒ぎしなければ自分に注意を向けてもらえない、と感じてしまうためです。
人は、目を合わせることで安心感を得たり、相手とのつながりを感じたりすると言われています。子どもの心を育てるためにも、スマホに頼り過ぎず、子どもと目を合わせて向き合う時間を大切にしましょう。

 

記事監修

井桁容子|乳幼児教育保育実践研究家

乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。

2019年12月号『めばえ』 構成/野口久美子 イラスト/小泉直子 

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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