朝食にふりかけごはんだけはNG!学校で眠くならず「子供の脳を育てる」朝ごはん、教えます【管理栄養士監修】

新学期が始まりました。酷暑とコロナ禍の影響での自粛生活で、生活リズムも乱れがちなお子さんも多いのでは。栄養バランスのいい食事は、体調はもちろん、脳の働きにも大きな役割を果たします。子どもの脳や免疫力を育てるレシピが人気の料理家で管理栄養士の小山浩子さんに、「育脳」にいい「食べ合わせ」のルールを教えていただきました。

子どもの脳が育つごはん 決め手は「5大栄養素」の食べ合わせです。

糖質・脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミンが5大栄養素。おにぎりだけをおなかいっぱい食べるなど、偏った栄養素の摂取は、脳の働きを鈍くします。脳が活発に働くためには、5つの栄養素をバランスよく摂取することが大事です。

「ふりかけごはん」だけの朝食になっていませんか?

子どもがよく食べるからと、「ふりかけごはん」がよく朝食に登場するというご家庭は多いのでは?

おなかは満たされても、白米と一緒に食物繊維やタンパク質をとらないと、血糖値が急上昇してしまします。1~2時間後には急降下し、集中力ダウンに。また、朝はタンパク質をとらないと体温が上がりません。さらに、市販のふりかけは塩分が高いものが多いので注意が必要です。塩分の取りすぎは脳の働きを鈍くします。

ふりかけを卵に変えて、ヨーグルトと果物をプラス。このひと手間で脳が育つごはんになります!

 

ふりかけを卵かけごはんにすれば、血糖値の上昇が緩やかになります。これにヨーグルトを足せばタンパク質&カルシウムも摂取。そして、いちごやみかんのフルーツを添えれば食物繊維やビタミンがとれます。用意する手間は、「ふりかけごはん」とほぼ同じですが、こちらの食事には脳に必要な栄養がたっぷり盛り込まれています。

2時間目になるとぼんやりと眠そうになる子。原因は朝食でした

血糖値を急上昇させる白米や食パン。糖質にはゆっくり血糖値を上げる食べ物をプラスして

数年前、講演に訪れた小学校で、ひとりの先生から、こんな相談を受けました。

「クラスの中に、2時間目ごろになると必ず集中力が切れ、ぼんやり眠そうにしている子がいます。『もしや朝食をとっていないのでは?』と思い、聞いてみましたが、朝食はとっているようです」

そこで、学校で行った食事調査の結果を見せていただきました。すると、確かにその児童は毎日朝食を食べていました。でも、問題はその中身。「ふりかけごはんと麦茶」、「菓子パンと炭酸飲料」など、糖質に偏っていることがわかったのです。

糖質に含まれるブドウ糖は脳のエネルギー源。ごはんやパンから糖質をとり、ブドウ糖を補給することは、脳を働かせるために必須です。でも、ただ糖質をとればよいわけではありません。白米や食パン、甘いものに含まれているブドウ糖は体内に入ると一気に吸収されて血糖値を急上昇させます。人間の体は血糖値が急激に上がると、これを下げようとして血糖値を下げる働きをもつインスリンが大量に分泌され、しばらくすると、今度は血糖値が下がりすぎて脳の活動が低下。眠気を起こす原因になるのです。

こうした血糖値の急上昇・急降下を避けるには、糖質をとる際、小腸での糖の吸収を妨げ、ゆっくりと血糖値を上げる食べ物との「食べ合わせ」を考える必要があります。

バランスのとれた食事が脳を活性化します

また、人間の脳を車にたとえていうなら、糖質は車を動かす燃料。燃料を補給するとともに、しっかりと動く車体をつくることが大切です。

脳は大きく4つの部分に分かれ、それぞれが別の働きを分担し、互いに情報を送ることで脳活動を行っています。たとえば、目から入った視覚情報は後頭葉で認識されます。そして、その情報は作業場である前頭葉に送られて処理され、さらに、保存しておく必要があると判断された情報は、側頭葉の海馬に送られて記憶として保管されます。

このように、脳は得た情報をリレーするかのように神経回路を使って移動させます。そして、このリレーを素早く行えるのがかしこい脳なのです。

そのためには、情報を伝達する神経回路を発達させるDHAや、情報の伝達に用いられる神経伝達物質の材料となるレシチン、タンパク質など、脳の発達を促し、スムーズな情報伝達を助ける栄養をしっかり摂取する必要があります。

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5大栄養素の特質を知って脳が育つ食べ合わせを!

ただし、これらの栄養を大量にとれば脳の働きがよくなる、というものではありません。栄養というのはチームで働きます。ひとつの栄養が効果的に働くには、ほかの栄養素のサポートが必要。

そこで、大切になるのが「食べ合わせ」です。脳を効果的に働かせる、栄養バランスのよい「食べ合わせ」を毎日のメニューで実践したいですね。

5つの栄養素がそれぞれどのように脳に働くのかをまとめました。食べ合わせることで、脳の働きをパワーアップ!

1 脳にエネルギーを安定供給するために「糖質」は低GIにして摂取

「低GI」という言葉をお聞きになったことはないでしょうか?血糖値上昇にかかわるキーワードです。「GI」は、グリセミック・インデックスの略で、炭水化物が消化されて糖に変化する速さを相対的に表す数値です。「GI値」が低ければ低いほど、血糖値の上昇がゆるやかになり、エネルギーが脳に少しずつ安定供給されます。

ライ麦パン、玄米ごはん、鶏卵、乳製品、フルーツ類、大豆などが、「GI値」が55以下の「低GI」食品になります。

逆に、「高GI」食品は、うどん、コーンフレーク、白米ごはん、精製白パンなど。これらを食べる際は、「低GI」食品と一緒に食べることで、血糖値の急上昇を抑えることができます。

思考力・集中力を保ち、学習効果を上げるには、脳に一定量のブドウ糖を安定して送ることが大切。主食には、血糖値上昇の緩やかな「低GI食品」(胚芽米や雑穀パン)を選ぶのがおすすめです。また、白米や食パンなどの「高GI食品」は、乳製品や大豆、野菜と一緒にとることで、小腸でのブドウ糖の吸収を妨げて、血糖値の上昇が緩やかになります。

朝食は、GI値を下げる「食べ合わせ」を意識しましょう。

2 脳を成長させる「脂質」DHAに注目!

脳の情報伝達をスムーズ行うためには、神経細胞をやわらかく保つ必要があります。神経細胞はおもに脂肪で作られていますので、食事からとる油が重要。

脳の神経細胞をやわらかくする油、DHAを積極的に摂取しましょう。DHAには神経細胞の発達を促す働きあります。魚介類、とくにさんま、さば、いわし、鮭、まぐろに多く含まれます。最近、注目の「さば缶」は、手軽にDHAが摂取できますので活用したいものです。

DHAは、酸化しやすいので、酸化を防ぐビタミンEと摂取するのが望ましいです。魚料理には、緑黄色野菜やナッツを添えて。

3 記憶力をアップさせるレシチンを含んだ良質な「タンパク質」を

タンパク質は脳の40%を構成する重要な成分。また、朝ごはんでは、睡眠中に1℃下がった体温を上げる役割も担っています。肉や魚のほか、卵や大豆食品も良質なタンパク質の供給源。さらに、卵や大豆食品にはレシチンが豊富というのも魅力です。レシチンは、記憶力に関わる情報伝達物質の材料で、情報伝達物質の数を増やして、脳の働きをアップします。

【食べ合わせ point】 レシチンはビタミンCで吸収がよくなります。納豆や豆腐、卵はたっぷりの野菜や果物と。

4 脳の働きをサポート。神経伝達をスムーズに動かすカルシウムやミネラル

骨や歯の成長に欠かせない栄養としてよく知られるカルシウム。脳においても、神経伝達物質がスムーズに移動できるよう手助けをしたり、神経をリラックスさせたり、重要な働きをします。そのほか、神経伝達を正常に保つカリウムや、記憶力と深い関係のある亜鉛、脳に送られる血液の状態をよくする鉄など、ミネラル類も脳の働きに深く関わっています。

【食べ合わせ point】 魚介やきのこ類に多く含まれるビタミンDで、乳製品や大豆、小魚などのカルシウム吸収を促進。

5 脳の機能を整える「ビタミン」で抗酸化と集中力を

人間が呼吸した酸素のうち2%は活性酸素となり、体や脳を酸化させます。強い抗酸化作用をもつビタミンCやビタミンEは積極的にとりたいもの。野菜にはこれらのビタミンが豊富です。また、卵やチーズに多く含まれるビタミンB12は脳の酸欠を防いで集中力を高めます。緑の葉野菜に多い葉酸は神経細胞の働きを維持し、脳を健康な状態に保つのに役立ちます。

【食べ合わせ point】 ビタミンB12はクエン酸を加えるとより効果的。卵やチーズは柑橘類など果物とともに。
https://hugkum.sho.jp/8923

『子どもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』

小山浩子・著 小学館 本体1000円+税

*「育脳」に配慮した栄養バランスの朝ごはんメニューが満載です。

教えてくれたのは

小山浩子|管理栄養士

大手食品メーカーを経て2003年にフリーに。料理教室の講師やメニュー開発、特に育脳レシピを数多く手がける。2014年『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(主婦の友社)で、グルマン世界料理大賞を受賞。著書に『子どもの脳は「朝ごはん」で決まる!』『かしこい子どもに育つ! 育脳離乳食』(小学館)など多数。最新著書は『やる気と集中力を養う3~6歳ごはん』(池田書店)。公式ホームページ

『edu』2015年4月号より構成 

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