子どもの失言、親としてどう対応するのが正解?【井桁容子先生の子育て相談】

乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「子どもの失言」の対応についてお話を伺いました。

Q:娘の悪気のない発言で、お友だちを怒らせてしまうことがあります。親として、その場でどのような対応をすればよいでしょうか?

A:「言葉の使い方」を考えさせるきっかけに

『裸の王様』のお話の中で、裸で得意気に歩きまわる王様を見て、子どもは素直に「王様は裸だ」と言います。大人のように忖度を働かせず、見たまま、感じたままを口に出すことができるのは子どもならではのよい点ですが、相手を傷つけてしまうことがあるのもたしかですね。悪気はないけれど失言してしまった……。そんな場面で子どもに教えていきたいのは、「相手の気持ちに気づくこと」や「表現のしかたを考える」姿勢です。

 

困った言葉を使うのは「悪い子」だからではない

「Aちゃんはかけっこが遅い」「Bちゃんは私より背が低い」。このような子どもの発言は、事実や感じたことを素直に口に出しているだけです。でも、相手を見下したり傷つけたりする結果につながってしまうことを、親がその都度ていねいに伝えていくことが大切です。子どもに悪意があるわけではなく、気づいていないだけだからです。

まずは、言われた相手の気持ちをわかりやすく伝えること。子ども自身が「そういうことか!」と「感じてわかる」ことが大事です。そして、どんな言い方がよかったのか、大人が見本を見せることも必要です。さらに、「意地悪なことを言うつもりはなかったんだよね」と、子どもの気持ちも言葉にしましょう。

「そんなことを言っちゃだめ」と叱られるだけだと「叱られるから言わない」→「叱られなければ言っていい」という理解のしかたになり、これでは本当にわかったことにはなりません。また、「言うと叱られる」という不安から、自分の気持ちを表現するのをためらうようになってしまうこともあります。

大切なのは、失礼なことを言ったけれど「悪い子」ではない、というわが子への信頼感を失わないことです。親が自分の気持ちを理解してくれたうえで「言葉の使い方」について教えてくれたと感じれば、子どもは「次から気をつけよう」と思うことができます。でも「悪い子」と自分のすべてを否定されてしまったら、悲しい思いをするだけで、成長につながらないのです。

 

子どもの言葉に影響を及ぼすのは親の言葉

子どもが失言したときには、親も日ごろの言葉の選び方を見直してみましょう。ネガティブな言葉が多くないか、裏表のある発言をしていないか……。子どもは、自分が耳にする言葉で「自分の辞書」を作っていきます。つまり、親をはじめとする身近な大人をお手本にして「適切な言葉の選び方」を学んでいくのです。

ときには、好んで見ているテレビ番組や絵本の中のセリフなどをまねるようなこともあります。子どもの置かれている言葉環境を意識してみることも必要かもしれません。

やさしく、ポジティブな言葉をたくさんもっていることは、他人とよい関係を築いていくうえでも役立ちます。自分がネガティブな言葉を多く使っていると気づいたのなら、たとえば「雨っていやだね」と言いたいときに、「雨降りだとカエルさんが喜んでるね」と言い換えてみるとか(笑)。ポジティブな表現に置き換えることは、視点やものごとの捉え方を変えること。こうした親の姿勢は、子どもの心をやわらかくして、人と関わるときの言葉を豊かにすることにもつながるはずです。

 

 

記事監修

乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。
井桁容子先生

(乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。)

 

『めばえ』2020年3月号 イラスト/小泉直子 構成/野口久美子

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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