ゲームは「悪」じゃない!家庭でできる「ゲーム学習論」のススメ 【松丸くんの教育ナゾトキ対談】Vol.3 ゲーミフィケーション研究者・東京大学・藤本徹先生~後編~

松丸亮吾さんによる対談連載、第3回のゲストは、ゲームを学習に取り入れる「ゲーミフィケーション」の研究者、東京大学の藤本徹先生。前編では、お2人のゲームでのダイエット体験とゲーム学習論の具体例、中編ではゲームをやることで培われる力について語っていただきました。後編では、ゲームを規制することの是非と、家庭でできるゲーム学習論について語ります。

前編はこちら

松丸くんは肥満児だった!?「ゲームのおかげで痩せました」 学習にも役に立つゲームって?【松丸くんの教育ナゾトキ対談】Vol.3 ゲーミフィケーション研究者・東京大学・藤本徹先生~前編~
現役東大生でナゾトキブームの仕掛け人・松丸亮吾さんによる連載「松丸くんの教育ナゾトキ対談」。松丸くんの次なる目標は、日本の子どもたち...

中編はこちら

学校の勉強では見えない適性が、ゲームをすると見えてくる!【松丸くんの教育ナゾトキ対談】Vol.3 ゲーミフィケーション研究者・東京大学・藤本徹先生~中編~
松丸亮吾さんによる対談連載、第3回のゲストは、ゲームを学習に取り入れる「ゲーミフィケーション」の研究者、東京大学の藤本徹先生...

18歳未満はゲーム160分まで」の規制は正しいか?

子育て中の親にとって、日常のなかでゲームの扱いは常に悩みの種だと思います。今年3月18日に香川県議会で成立(4月1日から施行)した「18歳未満はゲーム160分まで」という条例についてどう思いますか?

松丸 数年前からテレビで「ゲーム脳」や「ゲーム依存症」という言葉が取り上げられて話題になったこともあって、子育て世代の間でゲームに対して悪い印象が広まってしまったと思うんです。世論に敏感な政治家もそれに影響されてしまった結果だと思います。

もちろん、依存症という言葉がある通り、どんなことでも時間をかけてやりすぎるのは悪いことでしょう。でもそのバランスを考えるのは国じゃないし、一律で一時間という規制はちょっと違うんじゃないかと。

藤本 知らないから怖いというのもあると思うんですよ。ゲームをやらない人は、子どもがなにをやっているかさっぱりわからない。だから、自分が理解できないことにはまっていることに不安を抱く。そうなると、悪い話にばかり注目してしまう。2019年にWHO(世界保健機関)が「ゲーム依存症」を障害として認定したこともあって、ゲームは怖いというイメージが加速したんだと思います。それで、怖いものは規制するという流れですね。

親も子どもと一緒にゲームをやって、もっと知るべき

松丸 「知らないから怖い」というのは核心を突いていると思います。僕もよく親御さんから相談されるんですけど、ゲームについて不安を抱いている人ほど、ゲームをやったことがないですよね。無知なことに関しては語りえないと思うので、ゲームについて不安なら、まずはお子さんと一緒にやってみてほしいです。そうしたら、なにが楽しいかわかるかもしれないし、意外に頭を使うゲームだと感じるかもしれません。

藤本 ゲームについては世界中で研究が行われていますが、良いと言いたい人は良いデータばかり集めるし、悪いと言いたい人は悪いデータばかり集める()。お酒が体に良い悪い、というのと同じです。ただ、現時点でハッキリしているのは、科学的にゲームそのものを「決定的に良いとも悪いとも言い切れないけど、良くなるように使うことはできる」ということと、ゲームに限らず「なにごともやりすぎはよくない」ということ。

もし、子どもと一緒にゲームをするのが難しければ、子どもが好きなゲームについて興味を持って話を聞いてみるだけでもいいと思いますよ。なにを楽しんでいるのか理解しようという姿勢をもってコミュニケーションを取れば、不安な部分はなくなると思います。

松丸 まったく同感です。

「勉強は苦行じゃなきゃいけない」という考えから目を覚ませ!

藤本 今は、危ないとか汚れるとかいろいろな理由で、子どもたちが森の中で昆虫採集をしたり、砂場で遊んだりする機会が減っています。その時代に、昆虫採集的な要素があるポケモンや、砂場で遊ぶような感覚の『マインクラフト』(ブロックで構成された世界で冒険や建築などを楽しむ世界的人気ゲーム)が人気になっています。

子どもたちが外でできなくなったことを、デジタルゲームの世界でカバーしている一面もあるんですよ。ゲームはすべて駄目だと言ってしまうと、子どもたちの遊びの機会自体を減らしてしまう。

世界的にも「ゲームは悪」というイメージが浸透しているんでしょうか?

 

藤本 どこにでも、ゲームをやりすぎると暴力的になるとか、頭によくないと主張する人がいますが、必ず別の研究者によってその証拠が正しくないという反証がなされています。むしろ、学習にゲームを使う流れは加速していて、アメリカやヨーロッパは既に大きな市場ができていて、アジアだとシンガポールや韓国もゲームを使った教育に投資をしています。

例えば、町づくりゲームの老舗『シムシティ』は学校の先生向けの教育用ガイドブックや授業で使える追加コンテンツを提供しています。文明を発展させる人気ゲーム『シヴィライゼーション』も教育コンテンツのパッケージを出していますし、『マインクラフト』の教育版も欧米の学校で導入されています。

松丸 それは楽しそうですね! 日本だと「勉強は楽しんでやるものではなく、苦行じゃなきゃいけない。つらいとか大変だという経験を通して忍耐力が養われるんです」と言う人がいて、そういう人たちは、楽しく勉強することが許せないんですよね。

本当に、目を覚ましてください! と言いたいですね。

楽しく学べるならそっちのほうがいい

藤本 苦行に耐えて結果を出せた人がそういうことを言うんですよね。スポーツの指導者にも多いんです。いわゆる精神論で、苦行に耐える、我慢することを美徳にしている。でも、苦行に耐えられずに勉強やスポーツが嫌いになる人も多いわけです。自分が苦しかったんだから次の世代も同じように苦しむべきだ、じゃなくて、自分がした苦労を次の人がやらなくて済むように考えること。そうして社会が健全に発展していくんだと思います。

僕は、我慢しなくて済むならしなくていいと思うし、楽しく学べるならそっちのほうがいいし、教えなくても自然に学べるならそっちのほうがいいと思うんです。それが、ゲーム学習論の研究を始めた理由でもあります。

ゲーミフィケーションを家庭に取り入れる!

松丸 僕の両親はゲーム学習理論的な考えをしていました。僕は子どもの頃からゲームが大好きだったので、うちの親はゲームを使って勉強をさせる方法を考えたんです。最初はゲーム1時間制限があったんですけど、それだと1時間やったら満足して、必ずしも勉強をしない。それで発想を変えて、勉強を3時間やったら、ゲームはいくらでもやっていいというルールにしました。そうしたら、僕はゲームがやりたいので、朝早く起きて1時間勉強して、学校で昼休みにも1時間やって、帰ってきてから1時間やるようになりました。そうしたら日が暮れる前からゲームができるので、なんて最高なんだって思っていましたね。

藤本 それは素晴らしい! こうやればどんな子でもゲーム的に勉強できるようになるというお手軽なメソッドはないんです。「いまより勉強すること」をゴールにして、子どもたちが乗りたくなるようなルールを作ることが重要です。

松丸 家庭のなかで通貨制度を作った人がいますよ。掃除をしたら1コインみたいに。すごいと思ったのは、「ゲームをやって感想文を書いたら2コイン」というルール。もともと、「本を読んで感想文を書いたら2コイン」というルールだったけど、それはぜんぜんやらなかった。そこで発想を転換して、ゲームをした後に、どういうところが面白くて、どんな発見があったかということを書かせるようにしたんです。そうしたら、ゲームをするとコインが手に入るから、嬉しくてどんどんやる。すごくうまい制度だなと思いました。

藤本 ポイントとかレベルとか、遊びの要素を兼ねてやるといいですよね。親として、「毎日やってほしいけど、なかなか習慣づかないこと」をゲーム化すると、うまくいくかもしれません。そのためにも、子どもがどんなゲームが好きか話を聞いて、子どものタイプによって工夫する。それを考えたり、うまくいくように試行錯誤することもゲームみたいで面白いので、ぜひ試してほしいですね。

プロフィール

藤本 徹(ふじもと とおる)

東京大学大学院情報学環講師、大学総合教育研究センター講師。専門はゲーム学習論。慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院博士課程修了。2011年より東京大学大学院情報学環特任助教、大学総合教育研究センター助教,特任講師を経て2019年より現職。著書に「シリアスゲーム」(東京電機大学出版局)、「ゲームと教育・学習」(共編著、ミネルヴァ書房)訳書に「テレビゲーム教育論」、「デジタルゲーム学習」(東京電機大学出版局)、 「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(早川書房)などがある。

プロフィール

松丸亮吾(まつまる りょうご)

東京大学に入学後、謎解き制作集団AnotherVisionの代表として団体を急成長させ、イベント・放送・ゲーム・書籍・教育など、様々な分野で一大ブームを巻き起こしている”謎解き”の仕掛け人。自身が監修をつとめる著書『東大ナゾトレ』シリーズ(扶桑社)は、累計125万部(2020年3月現在)を突破。ほかに『東大松丸式 数字ナゾトキ』(ワニブックス)、『東大松丸式 名探偵コナンナゾトキ探偵団』(小学館)など多数の謎解き本を手がける。
現在は「考えることの楽しさを全ての人に伝える」を目標に東大発の謎解き制作会社・RIDDLERを立ち上げ、仲間とともに様々なメディアに謎解きを仕掛けている。

Twitter @ryogomatsumaru
Instagram @ryogomatsumaru

◀︎前編はこちらhttps://hugkum.sho.jp/120810

◀︎中編はこちらhttps://hugkum.sho.jp/120932

取材・文/川内イオ

撮影協力/コロコロ堂(東京都の上野にあるボードゲームカフェ)http://korokorodou.com/

▼第1回 高濱正伸先生(花まる学習会)との対談はこちら

新連載!【松丸くんの教育ナゾトキ対談】Vol.1高濱正伸先生~前編~いじめとコンプレックスに悩んだ子ども時代 「乗り越え体験」ですべてが変わる!
今月からHugKumで、松丸亮吾さんによる連載「松丸くんの教育ナゾトキ対談」がスタートします!東京大学に入学後、謎解き制作集団Ano...

▼第2回 宝槻泰伸先生(探究学舎)との対談はこちら

【松丸くんの教育ナゾトキ対談】Vol.2探究学舎・宝槻泰伸先生 世の中は「ハッキング」可能!学びの選択肢はひとつじゃない~前編~
松丸亮吾さんによる連載「松丸くんの教育ナゾトキ対談」。東京大学に入学後、謎解き制作集団AnotherVisionの代表としてメディア...

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