松丸くんは肥満児だった!?「ゲームのおかげで痩せました」 学習にも役に立つゲームって?【松丸くんの教育ナゾトキ対談】Vol.3 ゲーミフィケーション研究者・東京大学・藤本徹先生~前編~

現役東大生でナゾトキブームの仕掛け人・松丸亮吾さんによる連載「松丸くんの教育ナゾトキ対談」。松丸くんの次なる目標は、日本の子どもたちに「考えることは楽しい」と伝えること。そのミッションのため、日本の教育界でご活躍中の豪華ゲストの方々と、教育対談を繰り広げてくれます。

第3回のゲストは、「ゲームを学習に生かす」ゲーミフィケーション理論の研究者である、東京大学の藤本徹先生。ゲームは子どもに害になるどころか、ゲームをうまく使えば学習も伸びる!? ゲーム大好きの松丸くんも興味津々、世のゲームで悩む親御さん必見の内容、前編です。

ゲームをしたほうが勉強の役に立つ?

 

ゲームを使った学習(ゲーミフィケーション)の専門家である藤本徹先生と、ナゾトキの松丸さん。いろいろ共通点がありそうですね。

松丸 先生が翻訳なさったゲーミフィケーションについての本を読んで、以前からお話ししたかったんですよね。昨年、「ゲームと教育」をテーマにしたポケモンのイベントで初めてお会いしたんですが、先生のお話はすごく興味深かった。

藤本 あのイベントは、ゲームを怖いものと思っている親御さんに、安心してゲームをプレイしてもらうようにという主旨でしたね。

松丸 日本では、ゲームに抵抗がある大人がまだ多いですよね。その中で「ゲームの教育的側面」に着目した先生の研究は興味深いです。

藤本 僕の専門は、ゲームを使って学ぶゲーム学習論です。まず、ゲームには4つの要素があるんです。①達成したい「ゴール」、②従うべき「ルール」、③成果を測る「フィードバックシステム」、④自分からやりたがる「自発性」です。この要素を取り入れて学習をゲーム化する研究もありますし、逆にゲームをプレーすることで自然と学習が進むこともあります。

松丸 わかりやすい例では、漢字や計算、英単語のドリルなどはゲーム化されていますよね。もうひとつの、いろいろなゲームをすることで自然に学べるという話もおもしろかったです。

藤本 たとえば、シミュレーションゲームなら、戦略性や見通しを立てて考える力、ホラーゲームなら、恐怖に立ち向かいながら前に進む力や困難な状況のなかで粘り強く考える力が鍛えられます。パズルゲームなら、どこから手を付けていこうという論理的な思考力が、RPGはキャラクターの立場に立つことで、感受性や読解力が発達しやすいんです。

松丸 僕が子どもの頃だと、『ロックマン』では戦略性や情報処理能力を鍛えられたと思います。次にハマったのがRPGの『テイルズ』シリーズ。キャラクターひとりひとりが各々の正義を持っていて、やればやるほどそれぞれの痛みがわかるんですよ。それが読解力や、人とのコミュニケーションに役立っていると思います。謎解き系でいうと『逆転裁判』、『ダンガンロンパ』シリーズが好きでした。矛盾を見つけていく中で、論理的な思考を鍛えられた気がします。いろいろなゲームをやると、いろいろな能力が身につくと思いますね。

藤本 そうですね。ゲームというとそれだけで眉をひそめる親御さんもいますが、僕はゲームをまったくやらないよりも、ゲームに慣れたほうが将来のためになると考えています。

肥満児だった松丸少年が、ゲームのおかげで痩せた!?

松丸 藤本先生の本の中でも触れられている「直接ゲーム」、「間接ゲーム」という話がすごくおもしろくて。計算や英単語ゲームのように、ゲームのゴールと学習目的が一致しているものが「直接ゲーム」。もうひとつの「間接ゲーム」は、一見学習とは関係なさそうなゲームを楽しんでプレイしているうちに自然とスキルアップに繫がっているものという内容でした。

藤本 「間接ゲーム」の例をひとつ挙げると、僕は2002年から2008年までペンシルバニア州立大学大学院に留学していたんですけど、途中で10キロぐらい太っちゃったんですよ。その時にダイエットのために始めたのが、『ダンスダンスレボリューション』(DDR/音楽に合わせて体を動かすゲーム)でした。みるみる痩せました。これがわかりやすい「間接ゲーム」の例ですね。

松丸 『DDR』、僕もやってました! 実は僕、小学生の時、かなり太っていて。小学校3年生の時の体重が今と同じだったんですよ。小学5、6年生になってさすがにヤバい、卒業アルバムに黒歴史で残っちゃう…と思っていたんですけど、ストイックにランニングなんてできない。でもその時に、兄が『DDR』にはまって。僕もやりだしたら、めきめき痩せたんです!

藤本 めきめき痩せますよね()

松丸 ゲームのいいところって、スコアで自分の実力を把握できるじゃないですか。成果のフィードバックですよね。それに合わせて少しずつレベルアップできる。簡単な曲をクリアすると、難しい曲にチャレンジできる。難しいほうが達成感があるので、もっとやりたいと思うようになる。その結果としての減量なので、ぜんぜんつらくなかった。

藤本 子どもの肥満が問題になったウェストバージニア州では、公立中学校に『DDR』を導入して、体育の時間や放課後に活用する研究が行われました。肥満の子は、自己肯定感や自尊心が低く、運動嫌いが多い。でも、ゲームなら楽しめるだろうという試みです。5年間のプログラムでしたが、「子どもたちの運動に対する関心が上がった」「家族や周りの人を巻き込んでやるようになった」など、プラスの効果がたくさん報告されています。

学校の勉強では測れない「非認知能力」がゲームで鍛えられる

藤本 発想力や精神的な筋力を鍛えられる松丸さんのナゾトキは「間接ゲーム」ですね。

松丸 ナゾトキには「こうすれば解ける」というパターンがないので、「頭を使って考える」ための入り口になります。それを続けることで、脳の筋力がついていくと思います。僕は子どもの頃からナゾトキが好きだったんですが、先生もゲーム好きだったんですか?

藤本 僕は1973年生まれで、小学校4年生ぐらいの時にファミコンが出て、そこからですね。中学生になってパソコンを買ってもらって、『三国志』『信長の野望』『シムシティ』などのシミュレーションゲームをしていました。

ゲーム学習論を研究するきっかけになったのは『エイジ オブ エンパイア』というゲームですね。社会人になってからはまったんですが。ローマ時代など過去の文明のなかで兵を育てて敵と戦って領土を拡大する内容で、自分の打つ手によって状況がどんどん変化するリアルタイム戦略ゲームです。こういうゲームができるなら、ゲームを教育に使えるんじゃないかと思ったんですよね。その後、デジタル教材を使った教育法やコンテンツを開発したくて、アメリカに留学しました。

松丸 シミュレーションゲームで養われる戦略とか、会社に入っても役立ちそうですよね。

藤本 同じようなシミュレーションゲームで、動物園や遊園地を建てて経営するものもあります。

松丸 最近は、町を作るゲームが流行っていますよね。いい町だと人が集まってきて、人が増えるとエネルギーが必要になるので、どこにダムを造るのかを考えたり、町の中にレジャー施設を作るのか、ホテルを建てるかで町が変化したり。

藤本 シミュレーションゲームは、現実では自分ができないことが体験できるのがいいですよね。戦略性や計画性が身につくと思います。

松丸 学校の教科の知識を学ぶドリル系の「直接ゲーム」は親が受け入れやすいと思うんです。でも、ゲームと学習のつながりが見えにくい「間接ゲーム」は、「そんなことやっても何の役にも立たない」と言われがちですよね。でも学校のテストでは測れない非認知能力がこれから重要になると言われている今、謎解きを含めて、「間接ゲーム」が持つ力が今後注目されると思います。

藤本 スポーツやほかのエンタメと一緒ですよね。サッカーをやっていると、結果的に体が鍛えられたり、仲間ができたりする。映画を観たり小説を読んでいると、想像力が育ったり、読解力が鍛えられる。日本では未だにゲームに対して厳しい目を向ける人も多いんですが、スポーツや映画、小説と同じような立ち位置で、ゲームの持つ力を知ってほしいですね。

(中編につづく)

プロフィール

藤本 徹(ふじもと とおる)

東京大学大学院情報学環講師、大学総合教育研究センター講師。専門はゲーム学習論。慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院博士課程修了。2011年より東京大学大学院情報学環特任助教、大学総合教育研究センター助教,特任講師を経て2019年より現職。著書に「シリアスゲーム」(東京電機大学出版局)、「ゲームと教育・学習」(共編著、ミネルヴァ書房)訳書に「テレビゲーム教育論」、「デジタルゲーム学習」(東京電機大学出版局)、 「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(早川書房)などがある。

プロフィール

松丸亮吾(まつまる りょうご)

東京大学に入学後、謎解き制作集団AnotherVisionの代表として団体を急成長させ、イベント・放送・ゲーム・書籍・教育など、様々な分野で一大ブームを巻き起こしている”謎解き”の仕掛け人。自身が監修をつとめる著書『東大ナゾトレ』シリーズ(扶桑社)は、累計125万部(2020年3月現在)を突破。ほかに『東大松丸式 数字ナゾトキ』(ワニブックス)、『東大松丸式 名探偵コナンナゾトキ探偵団』(小学館)など多数の謎解き本を手がける。
現在は「考えることの楽しさを全ての人に伝える」を目標に東大発の謎解き制作会社・RIDDLERを立ち上げ、仲間とともに様々なメディアに謎解きを仕掛けている。

Twitter @ryogomatsumaru
Instagram @ryogomatsumaru

取材・文/川内イオ

撮影協力/コロコロ堂(東京都の上野にあるボードゲームカフェ)http://korokorodou.com/

◀︎中編はこちらhttps://hugkum.sho.jp/120932

◀︎後編はこちらhttps://hugkum.sho.jp/120974

▼第1回 高濱正伸先生(花まる学習会)との対談はこちら

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▼第2回 宝槻泰伸先生(探究学舎)との対談はこちら

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