【松丸くんの教育ナゾトキ対談】Vol.2探究学舎・宝槻泰伸先生 世の中は「ハッキング」可能!学びの選択肢はひとつじゃない~前編~

松丸亮吾さんによる連載「松丸くんの教育ナゾトキ対談」。東京大学に入学後、謎解き制作集団AnotherVisionの代表としてメディアで活躍、日本中に“ナゾトキブーム”を巻き起こした松丸さんの次なる目標は、日本の子どもたちに「考えることは楽しい」と伝えること。そのミッションのもと、日本の教育界でご活躍中の豪華ゲストの方々と、教育対談を繰り広げてくれます。

第2回のゲストは、「子どもの好奇心に火をつける」がテーマの塾・探究学舎の宝槻泰伸塾長です。いわゆる学習塾でもなく、成績アップも目指さないのに、北は北海道から南は沖縄まで、ときには海外からも受講希望者が殺到する、探究学舎。塾長の宝槻先生と一緒に、子どもが自ら学ぶサイクル、未来の教育の姿について、たっぷり議論しました。

「本を1ページ読んだら1円」! 漫画ばかり読んでいた(宝槻)

―お二人はともに、ユニークな教育方針を持つ家庭で育ったそうですね。

松丸 宝槻さんの著書『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』を拝読しました。お父さんがとてもユニークな方で驚きました。誰もが信じて疑わないような常識から、かなり外れた教育をなさってますよね。

宝槻 父は若い頃から塾を経営していたんですけど、いわゆる普通の勉強法ではないんです。子どもが好奇心を持って楽しんで取り組むためには、どういうアプローチをすればいいか、ということを研究していたんですよ。例えば、「読書が教育のプラスになる」と思ったら、子どもが読書にはまる仕掛けを考える。だからその仕掛けとして、我が家には「本を1ページ読んだら1円あげる」というルールがありました。

松丸 それは、どんな本でもいいんですか?

宝槻 そうです。だから、ひたすら漫画を読んでましたね(笑)。

松丸 そこがおもしろい。普通だったら、親が読ませたい本を渡して、「この本だったら1円あげる」と決めてしまいがちじゃないですか。でもそうじゃない。子どもの好奇心ってどこにあるかわからないし、それは親が見つけられることじゃないんですよね。だから、何を読んでもいいというのは素晴らしいと思います。

宝槻 やっぱり最初はお金がモチベーションになって、本をたくさん読むんですよ。でもそのうちに、読書そのものに喜びを見出すようになっていって。いつの間にか「1ページ1円ルール」は自然消滅しました。大人になってから振り返れば、これは「外発的動機付け」から「内発的動機付け」に移ったんだとわかりますね。入り口はお金で動機付けしておいて、自分から本を読みたくなるステージまで連れていってくれたんです。

子どもが好きなことをやらせたほうが、絶対に伸びる(松丸)

松丸 そう、入り口って大事ですよね。親に「この本を読みなさい」って言われても子どもは読まないと思うんです。読書と言えば、僕が東大生ですという話をすると、よく「どれぐらい本を読んだんですか」と聞かれます。でも実は僕は小説や論説文などの本をほとんど読んでないんですよ。

宝槻 へー!

松丸 それは僕の母がおそらく、読解力とか言語力を身につける時に、小説を読むことが絶対の正義ではないと考えていたんだと思います。良質な漫画やアニメ、ゲームでも同じような力をつけることはできる、と。だから母は「この本を読みなさい」とは言わず、僕が興味を持ったアニメや漫画、ゲームを買い与えてくれました。同じ力が養われるならどちらを選んでもいいし、子どもが好きなことをやらせた方が絶対に伸びると考えていたんでしょうね。

宝槻 うちの父も同じ。漫画はもちろん、ゲームやトランプ、麻雀も、思考力を鍛える効果があると考えていたから、それを僕ら兄弟が熱中してやることは大歓迎でしたね。ほんと、入り口はなんでもいいんですよ。今の親って「~でなければならない」という、たくさんの「マスト」を握りしめているように感じます。でも、「こうでなければならない」というのは、どこからか仕入れてきたひとつの価値観に過ぎないんですよ。

松丸 親がマストに縛られて、その方法を子どもに押し付けても、子どもが「やらされている」と思った時点で、効果は下がると思うんですよ。そうじゃなくて、子どもがいちばんやりやすい、やりたくなる方法を見つけるサポートができるといいですよね。

「楽しくない」をどうやったら「楽しい」に変えられるか(松丸)

松丸 勉強も同じですね。「どこから入るか」というサイクルが、すごく重要だと思うんです。勉強ってやらないと絶対できないじゃないですか。できないと楽しくない、楽しくないからやらない、やらないからますますできなくなる…という負のサイクルがありますよね。

宝槻 あるある!

松丸 この負のサイクルから抜け出すためには、「できない」を「できる」にするか、「楽しくない」を「楽しい」にするか、「やらない」を「やる」にするかの、どれかなんですよね。

宝槻 うん、そうですね。

松丸 そこで、多くの親御さんはなぜか「やらない」を「やる」に強制的に切り替えさせようとするんです。でもそれでは、子どもたちは勉強が嫌いになってしまう。そうじゃなくて、「楽しくない」をどうやったら「楽しい」にできるかを考えたほうがいい。そのためなら「1ページ1円」みたいな外発的動機でもいいんだと思います。それで「やってみようかな」というところから、やったらできるようになる、できるから楽しい、に変化したら、子どもが自分から取り組む内発的動機に変わっていくかもしれない。

宝槻 わかる! 勉強というと、つらさに耐えて、真面目にコツコツというイメージがあるけど、それ以外の道があってもいい。

「世の中はハッキング可能」。探究学舎を始めたのもそのおかげです(宝槻)

宝槻 父親に教えられたことで感謝しているのは、「世の中はハッキング可能なんだ」ということです。つまり、みんながやってる正面ルートからばかりじゃなくて、裏ワザが使える、ということ。例えばうちは三兄弟なんですけど、僕は高校中退、次男と三男は高校に行かずに、みんな大検を取って京都大学に進学しました。これって一種のハッキングですよね。細かい話だと、車の免許を取る時にも、僕は教習所に通わなかったんですよ。

松丸 え、免許って教習所に通わなくても取れるんですか?

宝槻 取れるし、教習所に通うことは、マストじゃないんですよ。

松丸 運転の実技はどうしたんですか?

宝槻 タウンページで教官を探して、個人指導です(笑)。そういうふうに、「みんなが歩む道が絶対じゃない。正規のルートから逸脱しても別の道はある」という考え方は父親から学びました。それは今の探究学舎を始めるときにも生かされてますね。教育ビジネスって受験対策が当たり前で、受験対策をしない塾なんて無理だ、って皆に言われたんですよ。でも、そうじゃない道、「ハッキング」も可能だ、と思えたから始められたんです。

松丸 「世の中はハッキング可能」って、大人にも子どもにも知ってもらいたい言葉ですね。やりかたの選択肢も入り口も、ひとつじゃないんですよね。

■宝槻さん&松丸さんのオススメ漫画&ゲーム

『Dr.STONE』


原作/稲垣理一郎、作画/Boichi
「フィクションなんだけど、バックボーンになっている“科学”や“化学”はフィクションじゃなくて理屈が通っている。科学のしくみに興味を持てるはず」(宝槻・松丸)

『キングダム』


作/原泰久
「古代中国を舞台に、後の秦の始皇帝と秦の大将軍になる少年が主人公。史実を元にしながら圧倒的な迫力とストーリー運びで、読むと高揚せずにいられない」(宝槻)

『おーい!竜馬』


原作/武田鉄矢、作画/小山ゆう
「坂本竜馬の生涯だが、原作の武田鉄矢さんが竜馬を好きすぎて、かなり創作を入れておもしろくかっこよくしている。でも根本には史実がある。竜馬入門編として最適。」(宝槻)

『僕のヒーローアカデミア』


作/堀越耕平
「スーパーヒーローがたくさん存在する世界の中で、最高のヒーローを目指す主人公を通して、ヒーローとは何か、主人公とは何かまで考えさせる深い作品」(松丸)

■2人のオススメゲーム

『ゼルダの伝説』


任天堂
「ダンジョンを進める中で、選択肢がたくさんあって選べる。行動の正解がひとつに決まっていないのがすばらしい。全人類にやってほしいゲーム」(松丸)

『信長の野望』


コーエーテクモゲームス
「戦国大名になりきって全国統一をめざす! プレイヤーが自分なりの歴史を創るゲームだが、根底にあるのはもちろん史実。武将の個性や当時の地勢などがわかりやすい」(宝槻)

プロフィール

宝槻泰伸(ほうつき やすのぶ)

探究学舎代表。強烈な父親の教育から、高校中退~大検取得~京都大学進学という特異な経歴を持つ。その後、2人の弟も同じ勉強法を駆使して高校中退~大検取得~京大入学を果たす。大学卒業後、私立高校や職業訓練校での指導経験を経て、2012年に東京都三鷹市で「子どもの好奇心に火をつける」学習をテーマにした探究学舎を開校。5児の父。その活動は「情熱大陸」(毎日放送)をはじめさまざまなメディアで取り上げられている。著書に『勉強嫌いほどハマる勉強法 子どもが勝手に学びだす!!宝槻家のストーリー活用術』(PHP研究所)、『探究学舎のスゴイ授業:子どもの好奇心が止まらない! 能力よりも興味を育てる探究メソッドのすべて 元素編』(方丈社)、『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)など。

https://tanqgakusha.jp/

 

プロフィール

松丸亮吾(まつまる りょうご)

東京大学に入学後、謎解き制作集団AnotherVisionの代表として団体を急成長させ、イベント・放送・ゲーム・書籍・教育など、様々な分野で一大ブームを巻き起こしている”謎解き”の仕掛け人。自身が監修をつとめる著書『東大ナゾトレ』シリーズは、累計120万部(2019年12月現在)を突破。
現在は「考えることの楽しさを全ての人に伝える」を目標に東大発の謎解き制作会社・RIDDLERを立ち上げ、仲間とともに様々なメディアに謎解きを仕掛けている。

Twitter @ryogomatsumaru
Instagram @ryogomatsumaru

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取材・文/川内イオ

 

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