今月からHugKumで、松丸亮吾さんによる連載「松丸くんの教育ナゾトキ対談」がスタートします!東京大学に入学後、謎解き制作集団AnotherVisionの代表としてメディアに露出、日本中に“ナゾトキブーム”を巻き起こした松丸さんの次なる目標は、日本の子どもたちに「考えることは楽しい」と伝えること。そのミッションのもと、日本の教育界でご活躍中の豪華ゲストの方々と、教育対談を繰り広げてくれます。
第一回のゲストは、「メシが食える大人に育てる」の理念でおなじみの花まる学習会の設立者であり、ママたちのファンも多い高濱正伸先生です。高濱先生と共に、自身の生い立ちから幼少期の勉強法、未来の教育がどうなっていくかといったことまで、たっぷりと、そして楽しく議論しました!
子ども時代、家ではコンプレックスの塊だった…(高濱)
―おふたりの子ども時代を教えてください。
高濱 僕は熊本の田舎の出身なんで、基本的に自然のなかで過ごしていました。僕はガキ大将だったから、今日はこの塀に登ろうぜ、みたいな感じで、いつも友だちを引き連れて遊んでいましたね。夏休みは朝からクワガタ、カブトムシを採りに行って、午後は川で遊んで、宿題は8月30、31日に泣きながらやって(笑)。本当に好き放題やっていたし、いい田舎だったな。でも、2歳上の姉がすごく優秀だったから、家ではコンプレックスの塊でしたよ。口げんかしても、毎回言い負かされて。
松丸 うちはDaiGo(※メンタリストのDaiGo氏)が長男で、次男、三男がいて僕が四男なんですが、家で一番上の兄がマウントを取ってくる感じは、僕も同じでしたね。DaiGoとは9歳離れているので、口げんかにもならないんです。僕が理解できない言葉を使ってきて、「お前の言っていることは、こことこことここが違う。俺が言っていることはここが正しい」みたいな。
高濱 DaiGoさんが兄貴って大変そうだね(笑)。うちの場合、姉が読書の王者みたいな感じだったから、「は? こんなことも知らないの?」ってバカにされてたなあ。でも、振り返ってみると、言葉の早期教育をされていた感じだね。小学校に上がる頃には、音読でつっかえることもなかったし。
松丸 僕も、兄弟げんかがそのまま国語の勉強でしたね。DaiGoが使う言葉がわからないのが悔しくて、辞書でDaiGoがよく口にする言葉を調べたりしていました。
高濱 男同士の口げんかは理詰めだからね。
いじめからの乗り越え体験が転機に(高濱)
松丸 でも、DaiGoも小学4、5年生ぐらいの頃は、天然パーマが理由でいじめられていたそうです。それがある時、いじめに抵抗するために手を上げたら、いじめていた子どもたちが急に引いていったらしいんですよ。同じ頃、ずっと嫌々続けていたピアノも、「やりたくない」という意志を両親に表明して、辞めることができた。この時期に意志を持って反抗するという意味を知って、我が道を行くスタンスになったそうです。
高濱 そうか、DaiGoさんも一回、乗り越え経験をして、今があるんだね。実は、僕も5年生の時に「頭がでかい」っていじめられてたんだよ。クラスメイトによってたかって「でこっぱっち! でこっぱち!」ってはやし立てられてさ。好きな女の子にまで…。1カ月ぐらい、毎日やられっぱなしで、その頃は「この頭だったら、もう死ぬしかない」と思ったぐらい。
松丸 子どもの頃って、些細なことでもそうやって思いつめちゃうんですよね……。
高濱 そうそう。でも、打ちのめされて家に帰ると、母親が「あんたが元気ならよかとよ」ってギューッと抱きしめてくれて。母親は学校のことには干渉しなかったけど、そうしてもらうだけでスーッと気持ちが晴れていくんだよね。
そうやって毎日、傷ついて帰っては抱きしめてもらうことを繰り返していたら、だんだんと強い自分が出てきた。生徒会の副会長に立候補させられたんだけど、その時に自分の頭を笑いのネタにしたんだ。
松丸 ええ!?
高濱「わたくしが頭のでっかい高濱でございまーす! 皆さんの2倍、3倍の脳みそが入っておりまーす!」って。その時にたまたま頭がマイクに当たったら、どっかーんと笑いが起きてね。その日から、いじめはなくなりました。
その後、中学1年生の時にもいじめに遭ったけど、その時はもう強い自分がいるから毅然とした態度を取っていたら、1週間もしないで終わり。いじめられ経験は、乗り越えたらすごく強い武器になるんだよ。
中学時代は有名人の兄を持ち苦悩(松丸)
松丸 僕も天然パーマで、小学生の時に同じクラスの人から「モンチッチ」と言われて笑われた時期があったんですよ。でも、兄たちにもさんざん言われていたし、もう慣れているんですよ。だからそういう時はケロッとしているぐらいのほうがいいとわかっていたので、学校でも同じようにしていたんです。そうしたら、すぐに言われなくなりました。
高濱 そうそう、それができたらいじめにならないんだよね。それにしても、男4人で一番下っていろいろつらかったでしょう?
松丸 毎日が訓練みたいでしたね。しかも、僕が中2の時にDaiGoがメンタリストとしてブレイクしてからは、学校でもDaiGoの弟として見られる時期がずっと続いてしまって。学校のなかを歩いてるだけで、しょっちゅう、「フォークを曲げてくれ」「今、俺が思い浮かべてる数字を当ててみて」とか言われて、家にも学校にも心の拠り所がなかったんです。
高濱 それ、嫌なんだよね!きょうだいが有名とか輝くとかほんと迷惑なんだ。
松丸 最悪です(笑)。それで中学、高校時代はずっとDaiGoにコンプレックスを抱いていたんですが、大学受験のタイミングで気づいたんです。DaiGoは東大を受験して落ちて、慶応に行った。それなら僕は東大に行くしかないと思って、高校2年生の冬の段階で、学年300人中280位だったんですけど、そこから本気で勉強して、現役で東大に合格したんです。
高濱 それはすごい乗り越え経験だよね。
DaiGoからメッセージ「合格おめでとう。ただ…」(松丸)
松丸 東大に受かったタイミングで、DaiGoから「合格おめでとう」ってLINEがきたんですよ。でも、「ただ、お前が勝ったのは学歴だけだからな。東大に入ったからといって、お前がなにか変わったわけじゃない。もっとお前ができることを見つけないと、俺には到底たどり着けない」って書いてあって。
高濱 おお! バチバチやり続けてる(笑)。
松丸 だから、僕にできることはなんだろうって考え続けた時に、小さい頃からやり続けて得意だったなぞ解きにたどり着いたんです。子どもの頃、『IQサプリ』という番組を家族みんなで観ていたんですけど、家族で最初に閃くのが僕で、DaiGoに唯一勝てたのがなぞ解きだったんですよ。
高濱 そうなんだ。DaiGoさんはわかってる人だね。入試は処理能力だから、パターンを教えて、反復できる人なら合格しちゃうんだよ。でも、大学以降は見えない課題、本質を見る力が決定的に問われるからね。
それに、これからの時代の教育は、それぞれの強みを早々に発掘して、そこを尖らせるというのが絶対的な流れなんですよ。だから、自分で得意分野を見極めて、それを磨いて今の道を見つけたのは素晴らしいと思う。
中編では高濱先生、松丸さんが考える「学びのメソッド」について対談します!
プロフィール
「情熱大陸」(毎日放送)、「カンブリア宮殿」、「ソロモン流」(いずれもテレビ東京)など、数多くのテレビ番組に紹介されて大反響。「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)、「AERA with Kids」(朝日新聞出版)などの雑誌でも多数登場している。
『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』(青春出版社)ほか、『小3までに育てたい算数脳』(健康ジャーナル社)『わが子を「メシが食える大人」に育てる』(廣済堂出版)『算数脳パズルなぞぺー』(草思社)など、著書多数。
プロフィール
東京大学に入学後、謎解きサークルの代表として団体を急成長させ、イベント・放送・ゲーム・書籍・教育など、様々な分野で一大ブームを巻き起こしている”謎解き”の仕掛け人。現在は東大発の謎解きクリエイター集団RIDDLER(株)を立ち上げ、仲間とともに様々なメディアに謎解きを仕掛けている。監修書籍に、『東大ナゾトレ』シリーズ(扶桑社)、『東大松丸式ナゾトキスクール』『東大松丸式 名探偵コナンナゾトキ探偵団』(小学館)『頭をつかう新習慣! ナゾときタイム』(NHK出版)、など多数の謎解き本を手がける。
撮影/平林直己 取材・文/川内イオ