最近は夫婦共働き家庭が増えたため、子育てに祖父母のサポートを受けている家庭も多いと聞きます。そうなると子育てにかかわる祖父母からちょっとしたアドバイスをもらうということも。祖父母は良かれと思って言っていても、それが子供の両親にとっては「わが家の方針に合わない!」という場合も。その通り従うことは難しいけれど、普段からお世話になっているので、なかなか言い出せない……というお悩みに、井桁容子先生がお答えします。
Q. 子どもの教育について両親がアドバイスをしてきます。私たち夫婦とは考えが違うため、対応のしかたに悩んでしまいます。
A. 子育ては夫婦が主体。最終決定は親の責任で
めばえっ子世代の祖父母の多くは、「頑張って結果を出す」ことを求められ、それに応えてきた世代です。自分たちが努力してきた実績がある分、下の世代にも頑張りや結果を求めがち。そして、孫の育て方についても同様の価値観でかかわってくる場合があります。でも、祖父母世代が子育てをした時代と現在では、環境も価値観も大きく違います。子育てに関する考え方は、「子供と父母」の単位が基本。助言として耳を傾けることは大切ですが、「子供にとってどうか」を軸にして考え、最終決定は親の責任で下しましょう。
親は完璧を目指さず、その子らしさを伸ばす応援をするスタンスで
子育てに関する親の考え方を祖父母に伝えておく
もちろん、子育ては夫婦だけで行えるものではありません。祖父母はもちろん、いろいろな人とかかわりながら暮らすことで子供は多くのことを学びます。やさしい人、感性が豊かな人、技術や能力をもった人……。子供は、出会った人から「自分にとって心地よいこと」をとり入れ、自分らしさを身につけていくのです。ですから、親が完璧な存在である必要はありません。親の役割は、周りの人から学び、引き出された子供のよさを見極め、その子らしさを伸ばす応援をしていくことなのです。
めばえっ子世代の祖父母が子育てをした時代は多様な価値観が認められず、同じ立場で競い、結果を出すことが求められていました。でもこれからは、しっかりとした個性をもち、自分の思いを表現できる人が評価されるようになっていきます。祖父母との価値観のズレが気になる場合は、親の考え方を早めに伝えておくのが理想です。夫婦で基本方針を決め、それぞれの両親に「幼いうちは勉強より、大らかに育てることを優先したい」などと宣言を。子供のために、自分たちの考えを理解したうえで子育てを応援してほしい、という姿勢を示しましょう。
祖父母とのかかわりは子どもにとって社会勉強にも
ただし伝えたからといって、祖父母が親の考えを常に尊重してくれるとは限りません。たとえば、「本当は与えたくないおもちゃを祖父母が買い与えてしまった」などということはよくあります。そんなときは苦情を言ったりせず、ありがたく受けとっておきましょう。
親は、子供を「悪いもの」に触れさせまいと過敏になりがちです。でも本当に大切なのは、親が「よくない」と決めたものに触れないことではなく、自分で「よい・悪い」を見きわめ、選ぶ力をつけることです。子供は、本当によいものを意外にわかっているものです。だから、祖父母が子供の世界に持ち込んだものに触れることは、一種の社会勉強。神経質になりすぎず、「親にはできないことをしてくれた」と大らかに受け止めてみましょう。
お互いの性格や関係性によっては、祖父母が親の言うことに耳を貸さない場合もあるかもしれません。そんなときは無理をせず、適度な距離をおいたおつき合いを心がけましょう。反対に、祖父母との関係がよい場合に注意したいのが、甘えすぎてしまうこと。「孫は来てよし、帰ってよし」と言われるように、孫をかわいいと思う気持ちは本心でも、孫の世話は体力も気もつかうものです。預かってもらうときなどは必ず親の都合を優先し、ねぎらいや感謝の言葉も忘れないようにしましょう。
教えてくれたのは
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
イラスト/小泉直子 構成/野口久美子
めばえ 2018年9月号
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。