赤ちゃんの心拍が確認できるのはいつ?心拍数の目安や「9週の壁」について医師が解説

モニターで小さな赤ちゃんの姿とその心臓が動いている様子を見ると、ママもパパも毎回感動するのではないでしょうか。当記事では、赤ちゃんの心拍はいつから確認できるのか、赤ちゃんの心拍数の目安、万が一心拍が確認できなかったときの対応などを、すぎたファミリークリニック院長の杉田亮先生に教えていただきました。また、心拍確認後の流産の割合や、「9週の壁」と呼ばれる妊娠初期のハードルについてもレクチャーいただきましょう。

赤ちゃんの心拍はいつから確認できるの?

赤ちゃんの心拍はいつから確認できるの?
6週の赤ちゃんの超音波診断画像

赤ちゃんの心拍は、一般的には妊娠5週後半~6週頃になると確認できるようになります。産婦人科では、まず妊娠5〜6週頃に超音波検査を行って、子宮の中に胎嚢(たいのう)ができていることを確認します。そのあとで、赤ちゃんの心拍を確認します。

どうやって確認するの?

赤ちゃんの心拍は超音波を使って確認しますが、妊娠12週頃までは、細い棒状の「プローブ」というセンサーを膣内に挿入して調べる「経膣超音波(経膣法)」で行うことが一般的です。お腹の中の赤ちゃんに近い位置から調べることができるので、妊娠初期の健診で使われます。

妊娠12週頃からは、お腹の外側から調べる「経腹超音波(経腹法)」を使います。お腹に検査用ゼリーを塗り、プローブを滑らせるようにしてお腹の中の赤ちゃんの様子を調べていきます。

モニターで心拍が見られるようになるのはいつから?

妊娠5週後半〜6週頃の経膣超音波でも、黒い塊のような胎嚢の中に、小指の先ほどの大きさの赤ちゃんと、小さな赤ちゃんの中で小さな心臓が規則正しく動いている様子を見ることができます。ママのお腹の中に、新しい命が宿っていることを実感する瞬間になることでしょう。

赤ちゃん用心拍計やアプリで確認してもいいの?

赤ちゃん用心拍計やアプリで確認してもいいの?
赤ちゃん用心拍計やアプリで確認してもいいの?

今は、家庭用の超音波心音計やスマートフォンをお腹に当てて心音を聞くためのアプリが登場しています。どちらも病院の経腹超音波で赤ちゃんの心拍が聞けるようになる妊娠12週頃から使うことができるようですが、当然、病院の検査と比べると精度は低く、状況や使い方によってはうまく聞こえないことがあります。

心拍がうまく聞こえないと、かえって不安になってしまう可能性もありますので、あまり早い時期から使うことは控えた方がいいでしょう。

赤ちゃんの心拍数の目安

赤ちゃんの心拍数は、妊娠5週頃は1分間に90〜100回、妊娠9週頃は170〜180回に増え、妊娠16週頃には150回になります。

目安より低い場合は?

心拍数が目安より少ない場合は、徐脈の可能性が考えられます。徐脈と診断された場合、赤ちゃんの低酸素が懸念されることもあります。酸素投与や体位変換などを行ったり、帝王切開が必要となる場合もあるかもしれません。検査中のストレスなどで一時的に心拍が遅くなることもありますが、それは特に問題はないと考えていいでしょう。

目安より高い場合は?

心拍数が目安より多い場合は、頻脈の可能性が考えられます。一時的に心拍が早くなって目安を超えることはありますが、それが持続するようであれば、胸やお腹に水がたまっていたり、全身がむくんでいる可能性もあり、注意が必要な状態だといえるでしょう。

心拍数で赤ちゃんの性別がわかる?

「心拍数が150より少ないと男の子、150より多いと女の子」という説もあるようですが、医学的な根拠はなく、迷信やジンクスの類のようです。

心拍確認できない…。その後の対応は?

妊娠初期の場合は週数のズレでも影響が大きく、妊娠5〜6週と思って診察してもまだタイミングが早くて、心拍がうまく確認できないケースは少なくありません。妊娠週数は最終月経を基準にして数えますが、排卵日が遅かった場合、実際の妊娠週数は想定の妊娠週数よりも少ないからです。

最初の超音波で心拍が確認できなければ、医師は1~2週間後に再度受診するように伝えるはずです。タイミングが早かっただけという可能性もありますので、再受診の日をリラックスして待ってください。

心拍確認後の流産の割合は?

一度、心拍が確認できたとしても、その後の健診で心拍が確認できず、流産と診断されることがあります。妊娠5週後半〜6週頃の経膣超音波で赤ちゃんの心拍が確認できたあとの流産も考えられるため、この時点では医師もまだ慎重な態度を取ることが多いでしょう。

一方で、妊娠8〜9週を超えると、多くの場合は妊娠が継続すると考えられています。この時期の健診で赤ちゃんの心拍が確認できると、ママに妊娠届けを提出して「母子手帳」をもらうよう指示する医師が多いようです。

流産の種類

妊娠早期(妊娠12週まで)の流産は、ほとんどが受精卵の染色体異常(遺伝子異常)が原因とされており、決してママの行動などが原因ではありません。また、出血や腹痛といった一般的な流産の症状がないものの、超音波診断で心拍が停止していると診断された流産を稽留(けいりゅう)流産と言います。自覚症状がないため、健診で初めて知ることになる場合が多いでしょう。その他、いくつかの流産の種類があります。

赤ちゃんの心拍停止「9週の壁」とは?

妊娠5週後半〜6週以降の経膣超音波で赤ちゃんの心拍が確認できたのに、妊娠9週前後に行われる次の検査で心拍が確認できなくなってしまう。これがいつしかママたちの間で「9週の壁」と呼ばれるようになったようです。

医学的には「9週の壁」という用語や概念はなく、妊娠12週未満の流産は早期流産、12週以降22週未満の流産は後期流産と呼ばれます。

原因は?

「9週の壁」と呼ばれますが、妊娠9週に流産が増えるわけではなく、妊娠9週前後の健診で心拍が確認されなかったという意味のようです。

妊娠初期の流産は、前述したように受精卵の染色体異常(遺伝子異常)が原因とされています。これは、受精卵に異常があったために細胞分裂がうまく進まなかったことにより起こります。安静にしていたり、ママが注意していれば流産を防ぐことができた、というようなものではありません。

心拍が復活することはあるの?

妊娠5週後半〜6週の経膣超音波で心拍が確認でき、その後の検査で確認できない場合、医師はその原因を慎重に探ります。日本は世界の中でも特に超音波診断が進んだ国といわれており、この時点で心拍が確認できなければ、流産である可能性が高いでしょう。

赤ちゃんの心拍に耳を傾けよう

妊娠初期は、超音波診断のモニターで赤ちゃんの様子を見たり、心臓が動く様子を確認できたり、初めての瞬間がたくさん訪れます。一方で、つわりがはじまったり、体に変化が現れるなど、ママの負担も大きくなります。また、思いもよらないことが起こる可能性もあるかもしれません。パパや家族、医師に相談をしながら、赤ちゃんの様子を温かく慎重に見守りましょう。

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記事監修

すぎたファミリークリニック 院長
杉田 亮

兵庫県三田市「すぎたファミリークリニック」院長。小児科専門医。1979年生まれ、福岡県久留米大附設高出身。2006年、大阪大学医学部医学科卒。大学在学中に休学してニュージーランドへラグビー留学した異色の経歴を持つ。先天性心疾患や小児不整脈、小児心臓移植といった小児心臓血管外科医としてキャリアをスタート。周辺地域の小児夜間診療体制が十分とは言えず、クリニックとしては異例の夜間診療も行っている。
すぎたファミリークリニック

文・構成/HugKum編集部

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