子どもの言葉の発達には、個人差があります。しかし、パパ・ママの仕事復帰とともに子どもを保育所に通わせ始めたり、1歳6カ月児の健康診査、3歳児の健康診査に子どもを連れて出掛けたりすると、どうしても周りの子どもとの違いが目立ってきます。「うちの子は言葉の発達が遅いのではないか」と心配になってしまう瞬間もあります。
そこで今回は、過去の研究結果や『0~4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児』(小学館)などを参考に、子どもが話を始める時期と、その言葉の発達を促す語り掛け育児についてまとめました。
子どもが話し始める時期はいつ頃?
一般的に言って、子どもが話し始める時期と言えば、どのくらいなのでしょうか。まずは性別に関係なく、年齢と言語レベルの発達の大まかな目安をまとめます。
1歳から1歳3か月までに初語が出る
言葉を話すと言っても、レベルはまちまち。ただ、『0~4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児』(以下『「語りかけ」育児』)によれば、食べ物やおもちゃなど身近な単語になると、1歳の始めに2つか3つ、話せるようになると言います。
さらに1歳2カ月ころまでには4つか5つの単語、1歳4カ月ごろまでには6~7語程度の言葉を口にするようになるといいます。この目覚ましい成長の時期を、「語彙(ごい)獲得の第一段階」とも呼ぶそう。
1歳半児の健康検査で知的発達を見る場合も、イヌやネコ、ボール、車など身近な物の絵カードや絵本を見せて、検査を担当する医師が「これなあに?」と聞き、子どもに物の名前を言わせる診察が行われます。
正常な発達をしているかどかの目安は、
<有意語を3語以上話せば正常である。 >(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター『乳幼児健康診査身体診察マニュアル』より引用)
とされます。1歳半の段階で3つの言葉が出るか、まずはこの辺りを1つの基準にしてみるといいかもしれませんね。
ちなみに『「語りかけ」育児』によれば、1歳半児の健康検査を終えて、1歳8カ月くらいなると、30~50語ほどを身に付ける子どももいるようです。
言葉が増えるに従って、言葉が言葉を呼ぶ爆発的なボキャブラリーの増加が始まります。この時期を「語彙(ごい)獲得の第二段階」とも呼ぶのだとか。
2歳になると単語数は200程度
『「語りかけ」育児』によると、2歳から2歳2カ月ごろになると、リスニングの能力が向上して、長い文章が理解できるようになると言います。
インプットだけでなく、アウトプットである発話についても、使える単語が200単語くらいになると言います。200単語もあれば、大人の上手な導きによって、最低限の会話ができるはずです。
この段階では、1文で3つの単語を操るくらいの表現も可能になります。例えば「パパの赤い靴」といった立派な文章が、しゃべれるようになるのですね。「パパ」「赤い」「靴」と、1文で3つの単語が使われていますよね。
この時期は自分の足で立ち上がって、興味関心に向かって歩き回るタイミングでもあります。行動範囲の広がりとともに刺激や学び、体験も増えて、言葉の数も増えていくはず。時間が許す限り、できるだけ一緒に親子で遊んで、豊かな会話を親子で楽しみたいですね。
3歳になるまでに「なぜ」と「どうして」のオンパレードが始まる
語彙(ごい)が増すと、2歳の途中から「なぜ」「どうして」の質問が始まります。終わりのない「なぜ、どうして」に、パパ・ママの状況が許す限り、子どもが満足するまで答えてあげると、言葉の伸びは加速すると知られています。
そのうち、3歳児の健康診査が来るくらいには、多くの子どもが2つの文章を組み合わせて話せるようになります。3歳児の健康診査で発達が正常か正常ではないかを判断する目安としては、
<多語文(形容詞+名詞+動作語など;赤いくつをはくなど)を話し、疑問形に応答するなど会話ができるようになる。基本的なオリエンテーションが身について、自分の姓名や年齢が言える。>(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター『乳幼児健康診査身体診察マニュアル』より引用)
とされています。3歳児の健康診査を担当する医師は、
- 子どもに名前と年齢を聞く
- 誰と一緒に来たのかを聞く
- 好きな遊びや好きな食べ物、保育所での様子を聞く
- 身近な物が描かれた6つの絵を見せて、名前を答えさせる
といった診査を行います。子どもが3歳になった段階で、言葉の遅れが不安な場合は、名前を聞いたり、年齢を聞いたり、保育所での様子を聞いたり、「これなんだ?」と家庭内の物を見せて聞いたりして、確かめてみるといいかもしれませんね。
4歳までには基本的な言葉を習得する
生まれてから3歳に至るまで、目覚ましい成長を見せる子どもたち。言葉の理解も進んで、例えば3歳半くらいになると、何度か読んだ絵本の言葉を記憶しているため、親が勝手に表現を変えると「きちんと読んで」と指摘してきます。
さらに4歳になるころには、何千という言葉を理解し、使い慣れた言葉をきちんとした文法の中で使いこなせるようになるのだとか。生まれてからわずか4年の話。素晴らしい成長ですね。
青い鳥医療福祉センター 小児科部長・安井泉著「ことばの発達とことばの遅れ」(福祉と障害者理解のための情報紙)においては、 語彙(ごい)数の推移として、
- 2歳:300語
- 3歳:1,000語
- 4歳:1,500語
- 5歳:2,000語
- 6歳:2,500~3,000語
といった目安も示されています。この時期になると、「どうぞ」「ありがとう」といった言葉も使いますし、家族以外の人たちとも十分に会話ができるようになります。
とはいえ、まだまだ言語が発展途上の段階。言いたい言葉が浮かんでいるのに口からとっさに出てこないため、何度もつかえたり、言葉を繰り返したりしてしまいます。
思えば、大人でも苦手な外国語を話そうとすると、同じようなしゃべり方になってしまいますよね。「うちの子の話し方が変だ!」と不安を感じて、話し方を無理に矯正しようとすると、かえって上手に話せなくなってしまうと言います。
子どもが混乱しないように、親は子どもが言い終えるまで、ニコニコしながら待ってあげればいいのですね。
『0~4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児』の購入はこちら≪
言葉の発達は「女の子のほうが早い」は本当?
ここまで、一般的な子どもの言葉の発達段階をまとめてきました。この言葉の話し方について、ちょっとしたうわさを耳にした経験がありませんか? そのうわさとは、「女の子の方が言葉の発達が早い」という話。これは本当なのでしょうか?
諸説あって、一概には言えない
結論から言うと、男の子、女の子と性別の違いによって言葉の発達に違いがあるという話は、信ぴょう性がそれほど高くはないようです。
一部の専門家が、右脳と左脳とをつなぐ脳梁(のうりょう)の部分の男女差を根拠に、女の子の方が言葉の発達が早い可能性があると指摘していたり、海外の研究でも、British Journal of Developmental Psychology 誌に掲載された論文「Differences between girls and boys in emerging language skills: Evidence from 10 language communities」などで、女子のほうが言語の発達に先行する可能性を示唆したりしています。
しかし、この性別による言語発達の違いには、異論も少なくありません。男女の差よりも、個人差のほうが大きいとする研究結果もあるようです。一般人のレベルで言えば、「女の子のほうが早く言葉が育つ」と思っているから、言葉の発達の早い女の子が目に留まり、その印象を強めてしまっている部分もあるのかもしれませんね。
次のページでは「言葉が遅い」と判断される子どもの特徴などを解説します。