「言葉の発達が遅い?」と思ったら… 話し始める時期の目安と語りかけのコツ

健康診査で「言葉が遅い」と判断される子どもの特徴

ここまで言葉の順調な発達について見てきましたが、逆に1歳半児、3歳児の健康診査で医師から「言葉の発達が遅い」と判断されるケース、医療機関や療養機関を紹介されるようなケースとは、具体的にどのような状況を言うのでしょうか。

同じ「言葉が遅い」と言っても、背景も状況もさまざま。そうした背景や状況に関係なく、医療機関や療養機関への相談を検討したほうがいいと助言される「発達の遅さ」とは、具体的にどういった基準で判断されるのか、健康診査を担当する医師に向けて書かれた国立研究開発法人 国立成育医療研究センターの『乳幼児健康診査身体診察マニュアル』からまとめてみます。

1歳半で3語の有意語が出てこない

『乳幼児健康診査身体診察マニュアル』によれば、1歳6カ月の子どもの90%以上は、3つ以上の有意語を話すと言います。その考えに従って、1歳半児の健康診査をする医師は、診査の場面で3つの言葉が出てくるかをチェックしています。

とはいえ、2語以下だったら、即医療機関や療養機関を紹介されるのかと言えば違う様子。他のチェックポイントとして、

  • 応答の指差しが見られない
  • 言語による指示を子どもが理解しない

などの状況が見られるかどうかを医師は確かめます。これらの当てはまり方に応じて、追跡観察になったり、療育機関や医療機関でのチェック対象になったりします。

3歳で自分の名前と年齢が答えられない

3歳児の健康診査では、自分の名前が答えられるか、自分の年齢が答えられるかも、正常な発達とそうでない場合を見分ける1つの目安になると『乳幼児健康診査身体診察マニュアル』に書かれています。

さらに「リンゴ、甘い」などの二語文が話せるか話せないか、見慣れたネコやリンゴなどの身近な物の絵を6枚見せて正答率が3つ以下かどうか、こういった点も併せて、総合的に診査されます。

言葉の発達を促す言葉がけとかかわり方

まさにこの1歳半、3歳児の健康診査を前にして、わが子の言葉の発達を心配している親御さん、少なくないと思います。筆者の身の回りにも、「うちの子どもは大丈夫か」と、心配している同世代のパパ・ママは居ましたし、筆者の家でも「大丈夫かな」という話題はありました。

はたから見れば「どう考えても、大丈夫でしょ」と思える子どもでも、わが子の話になると、ちょっと心配になってしまう、そんな親心、共感できる人も少なくないのではないでしょうか?

『「語りかけ」育児』の著者であるサリー・ウォードによれば、「言葉を身に付けるための機能を生まれ付き持っているとしても、話し掛け方次第で子どもの言葉の発達には大きな影響が出る」との話です。

健康診査を不安に思ってしまう場合は、あるいは健康診査に関係なく、わが子の言葉の発達にちょっとした心配がある場合は、子どもに対する親の接し方を、早々に望ましいコミュニケーションに切り替える工夫をしてみてもいいのかもしれませんね。

以下には『「語りかけ」育児』を基に、子どもの年齢別の語り掛けのポイントをまとめましたので、参考にしてみてください。

0~満3カ月

部屋を静かに、1日30分間は赤ちゃんと二人きりになって、一対一の語り掛けに集中する(特に2人目、3人目の子どもはこの時間がおろそかになりがち)。声は少し高め、ゆっくり、語呂のいい言い回しを繰り返す。赤ちゃんの音のまねをしてもいい。

満3カ月~満6カ月

引き続き、一対一の静かな時間を30分確保する。赤ちゃんの出す音をそのまままねて返したり、赤ちゃんが興味を持っている物や遊びにかわいい効果音を添えてあげたりする。育児疲れで苦労の多い時期だが、できれば表情は生き生きと、ゆっくり調子よく話し掛ける。

満6カ月~満9カ月

一対一の時間を30分確保する。繰り返しの言葉遊び、赤ちゃんの出す音のまね、擬態語や擬声語など遊びの音をたくさん使う。赤ちゃんが話そうとする時は、赤ちゃんのペースを待ってあげる。赤ちゃんの出す音を、そのまままねる。親の話し言葉は短く、文と文のつなぎに大きな間を置きながら、物の名前をたくさん聞かせる。

満9カ月~1歳

一対一の時間を30分確保し、親子の触れ合いを大事に。遊びの音(擬態語・擬声語)を繰り返して、子どもに聞く喜びを楽しませる。引き続き、親の話し言葉の文は短く、簡単に。文と文の間には休みを入れて、身振りをたくさん入れる。赤ちゃんに無理に言葉を言わせようとしない。

1歳~1歳3カ月

静かな部屋で一対一の時間を30分確保する。赤ちゃんの興味関心に注目し、話題にする。親の言葉は、短く簡単な文を使う。ゆっくりめに、大きめの声で、声にさまざまな調子をつけて、省略をせずに言葉を繰り返しながら話す。

赤ちゃんが何かの音を出せば、同じ音を赤ちゃんに返す。物の名前を言う時は指差ししながら言う。この時期は子どもがいたずらを始めるが、なるべく否定的な物の言い方、批判的な言い方は避ける。言葉の発達をテストするような質問も避ける。

1歳4カ月~1歳7カ月

引き続き、静かな部屋で一対一の時間を30分、確保する。大人の考えを押し付けず、赤ちゃんの注意関心に注目して、その注意関心を話題にする。

質問や指示をできる限り避ける。わらべ歌を歌い、擬声語や擬態語など遊びの音を多用する。言葉を省略したり、代名詞で済ましたりせず、できるだけ名詞を明言して、その言葉を繰り返し使ってあげる。

赤ちゃんが何かを言ったら、間違いを正さず、「そうね」と受け止めてあげたり、そのまま繰り返してあげたりする。引き続きいたずらをする時期は続くが、否定的な言葉、批判的な言葉はなるべく使わない。

1歳8カ月~2歳

30分の静かな一対一の時間を継続する。子どもが遊んでいる時は、指示はせず、干渉せず、見守ってあげる。会話の中で新しい言葉をたくさん使ってあげて、ゆっくり、大きめの声で、いろいろな調子で、身振りを使って話してあげる。

引き続き、遊びの効果音を付けてあげたり、言葉を省略せずに、何度も繰り返してあげたりする。子どもが何かを言いたいのに言えない場合は、サポートをしてあげる。

2歳~2歳5カ月

引き続き、30分の静かな一対一の時間を大切にする。子どもの注意している物に目を向け、子どもの表情から考えを読み取って、その話題について話してみる。

子どもの選んだ遊びを一緒にする中で、遊びを豊かにする提案を行う。話し掛ける文の内容は、3語以内で。子どもの言った言葉を膨らませたり、代弁したりして、会話を楽しむ。

2歳6カ月~3歳

弟や妹が生まれて忙しくなっても、30分の一対一の静かな向き合う時間を設ける。子どもの「なぜ、どうして?」にとことん付き合う。色や数や形は自然に会話に取り入れるが、無理に教えようとしない。

子どもが選んだ遊びを一緒にする中で、遊びを豊かにする提案を行い、その遊びについて話す。声にはいろいろな調子を付けて、新しい言葉をたくさん使う。しかし、文は長すぎないように。発音や言葉を直したい場合は、「そうね」と認めてあげた上で、正しく発音してあげる。

3歳~4歳

子どもが友達と遊ぶ、きょうだいと遊ぶようになっても、30分間は一対一の時間を過ごす。子どもが言葉につっかえても、話し方を正そうとしない。

この段階では親の言葉の文は長さを意識しなくていい。子どもの言葉を膨らませて、会話を楽しむ。遊びの主導権は常に子どもに与える。音の出るおもちゃやわらべ歌で、聞く喜びを感じさせる。

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子どもが話し始める時期はあくまで目安として

以上、子どもの話し始める時期についてまとめてきました。2歳半で「なぜ、どうして」が始まり、3歳では3歳児の健康診査を受けるようになります。そのころには、もう立派に家族以外の人とも、コミュニケーションを取れるようになります。

4歳になれば大変な数(1,500~2,000語とも言われる)の言葉を理解して、会話を行います。その大まかな成長のペースを理解した上で、いたずらに心配せず、かといって放置もせず、きちんと子どもの成長を見守ってあげたいですね。

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文・坂本正敬 写真・繁延あづさ

【参考】

Differences between girls and boys in emerging language skills: Evidence from 10 language communities – British Journal of Developmental Psychology

最新の研究で判明「言葉の発達が2倍早い子の親は何が違うのか」 – プレジデント ウーマン

乳幼児健康診査身体診察マニュアル – 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

言語発達遅滞、発達障害 – 山口耳鼻咽喉科クリニック

「ことばの発達とことばの遅れ」 – 福祉と障害者理解のための情報紙

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