算数や理科、社会などと違って、国語の文章題だけは点が取れない、苦手だという子どもは、少なくないと思います。この国語の文章題が苦手という子どもは、どうして問題が解けないのでしょうか? そこで今回は国語の文章題の謎について、まとめてみました。
国語の文章問題が苦手なのはなぜ?
子どもの国語の読解力向上については、文部科学省を中心に各自治体、教育界が一丸となって達成しようとしています。その理由の1つには、2003年(平成15年)7月にOECD(経済協力開発機構)が実施した生徒の学習到達度調査があります。
同調査によれば、日本の子どもたちは国際的に見て、読解力がそれほど高くはないのだとか。ちょっと意外ですよね。
読解力とは何なのかという研究がその調査結果の出た後から始まり、具体的に読解力を上げるためのノウハウも打ち出され、各教育現場に落とし込まれました。いわば、その当時の読解力向上に関する情報が、容易に手に入る状態だとも言えます。
まずは、国語の文章問題が苦手だという子どもたちに何が起きているのか、その理由や背景をまとめました。
読書そのものが苦手、文章を読む作業が苦手
OECDの調査結果を受けて、文部科学省がまとめた研究結果に、『読解力向上プログラム』があります。その内容を、さらに独自に深めたガイドブックが、神奈川県立総合教育センターから『神奈川県版「読解力」向上のためのガイドブック』として発表されています。
同ガイドブックによれば、読解力が弱い子どもたちには共通して、まず「テキスト」から情報を取り出す力が弱いという特徴が見られるといいます。
言い方を変えれば、読書そのもの、あるいは文章を読む作業が苦手なため、与えられた「テキスト」から意味が取り出せない子どももいるとの話です。国語の文章問題が苦手な子どものパターンとして、真っ先に思い浮かぶ姿ではないでしょうか?
本文の意味、問題の意味を理解できない
しかし、苦手意識を持たずに、普通に文章が読める子どもであっても、必ずしも「テキスト」の意味をきちんと理解している、問題の意味を理解しているとは限りません。本文や問題がきちんと理解できていなければ、問題の正答率には反映されません。
この手の子どもは、語彙(ごい)力が乏しいからかもしれませんし、「テキスト」に書かれた主題や意図・狙いが理解できない、情報をまとめられない・整理できない、他との比較を通じて考えを深められないから、本文や問題の意味が理解できないのかもしれません。
「テキスト」について熟考・評価する力が弱い
「テキスト」の意味や主張の内容をなんとなく理解できても、どうしてそのような主張になるのか、根拠を求めたり、正当な理由で批判的に評価できたりしなければ、本当の意味で読解力があるとは言えません。
読解力が低いと言われる子どもたちの中には、文章を読んで大まかな意味が理解できるけれど、その「テキスト」を材料に深く考えたり、評価したりする力が弱い子どももいるようです。
こうなってくると、文章読解の問いが少し難解になった時、対応はできませんよね。
自分の考えを表現する力が弱い
読解力と言うと、読む作業だけだと思われがちです。しかし、最終的に「テキスト」を読んだ後に、その「テキスト」の内容を上手に要約できたり、反論を述べたり、自分の印象を明らかにできたりする能力も含めて、読解力と言うのだそう。
読解力が低い、国語の文章題の点数が低い子どもの中には、きちんと文章が読めて、理解ができても、その理解を言語化してアウトプットができないために、点数につながらず、結果として読解力が弱いとみなされてしまう子どももいるようです。
苦手な文章問題を克服するには
国語の文章問題が苦手な子どもたちは、苦手といってもさまざまなレベルで苦手な状態にあると分かりました。では、それぞれのレベルでの「苦手」に対して、どのようにアプローチをしていけば、克服できるのでしょうか。
幅広い読み物に家庭内で親しむ
そもそも読書が苦手、文章を読む作業が苦手、おっくうという子どもに対しては、子どもに読書への興味を持ってもらう必要があります。
学校でも朝の読書時間など、読書の機会を積極的につくってくれていますが、その土台はやはり、家庭における読書活動があってこそのはず。
実際、文部科学省の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(案)」でも、家庭での読書の大切さが書かれています。
その文部科学省の資料の中でも、具体的に、
- 読み聞かせをする
- 子どもと一緒に本を読む
- 図書館に出向く
など、子どもが本と出合う機会をパパ・ママが積極的に用意してあげればいいと書かれています。
しかも、単に読んで終わりではなく、
- 定期的に読書の時間を設ける
- 読書の感想を親子で話し合う
など、親子で読書を深める工夫が大切になってくるみたいですね。
言語についての知識や経験を深める
子どもが読書に興味を持てない理由は、書かれている「テキスト」の中に、分からない言葉が多すぎるからかもしれません。文部科学省の国語教育に対する見解の中でも、漢字、漢語を含めて、国語の語句・語彙(ごい)力が論理的思考力を根底で支えるとされています。
語彙力は、3歳までの乳幼児期の場合、親とのコミュニケーションによって伸びると言います。就学前の幼児期は、読み聞かせやさまざまな実体験によって、小学校高学年くらいまでは読書によって、語彙力が伸びるそう。
さらに、中学生以降も多くの読書体験によって語彙力は伸びていくと、脳科学的にも解明されています。
サリー・ウォード著『0~4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間 「語りかけ」育児』(小学館)でも、小さいころはパパ・ママの語り掛けによって、言葉の数が豊かに増えると書かれています。
同著では読み聞かせ・遊びの大切さも説かれていますから、語り掛け・遊び・読み聞かせを就学前の幼児に徹底して楽しませ、自然と小学校で読書習慣が身に付くように仕向けたいものです。
もし、子どもがすでに小学校に入っている場合は、
- 子どもと一緒に本を読む
- 図書館に出向く
- 定期的に読書の時間を設ける
- 読書の感想を親子で話し合う
など先ほどの仕掛けを用意して、読書の量を増やしてあげたいですね。
書く機会を設ける
教育県の1つと言われる石川県が、読解力を向上させるための指導方法をまとめています。その中に、
<「読解力」と言っても、「表現」(記述)をもって読解力を把握しているのだから、読解力の課題と思われていることは、実は表現力(書く力、話す力)の課題であることも多い。>(石川県「確かな学力を育む実践事例集2007年度版」より引用)
と書かれています。先ほど、
- 読書の感想を親子で話し合う
という苦手克服のポイントがありました。
その話し合いの中で、一緒に読んだ本文の内容を要約したり、自分の意見(とその理由)を書かせたりしながら、アウトプットの習慣を家庭内で設けられると、効果が大きいと考えられます。