“これからの国の教育ビジョン”って? 学校教育の向かう先を把握しておこう!【発育のススメ】

教育と訳されるeducationの語源はeduce。「能力や可能性を引き出す」という意味です。
本来の意味を知る福沢諭吉はeducationを「発育」とすべきと主張したそう。
この記事シリーズでは、教える側ではなく学ぶ側を主体とした発育をコンセプトに、最先端の教育事情を紹介します。

時代の変化にともない学校教育のあり方も変わりつつありますが、これからの子どもたちに必要な教育とはどんなものでしょう? 国の教育ビジョンを審議する中央教育審議会委員を務める荒瀬先生に伺いました。

子どもの「〜したい」が能力のベースになる“これからの教育”

日本の学校教育は、教育基本法、学校教育法に基づいて行われます。下記のように、教育基本法は“人は力を持っている”前提で書かれていますが、人はもともとどんな力があるのでしょうか。「生まれながらに持つ能力が学力とも関わる」と仮定すると、学校教育法にある学力の3要素のうち、 「主体的に学習に取り組む態度」 がそれに該当しそうです。

赤ちゃんは誰にも教わるともなく、ものをつかんで口に入れたり、言葉が使えるようになると「なぜ?」「どうして?」と尋ねたりします。人は外界を認知してその中で生きていくために、 生まれながらに「触りたい」「知りたい」といった「〜したい」気持ちを持っているのです。 これこそが「個人の有する能力」のひとつであると考えられます。

ところが、成長して年齢を重ねるにつれ、特に学校教育の現場では人から評価される、比較されることが多くなってきます。「〜したい」という気持ちがあっても評価されないものは「やっても意味がない」「どうせ無理」と考え、行動しなくなってしまいます。やらなければできないのも当然で、その悪循環から「〜したい」の気持ちが見えなくなってしまうのです。

また、親が子どもの「〜したい」を奪うケースもあります。親があらゆることに口出しをし、失敗したときにも「だから言ったでしょう。言う通りにしないから」などと子どもの選択や決定
の力を否定してしまう場合です。親の言う通りにすることが当然になると、自分の意思は必要なくなってしまいます。

日本の子どもが満足度や自己肯定感が高いと感じるのは「自分で決めたとき」 だという調査結果もあります。子どもは自分でする能力を持って生まれてきているのに、それを学校現場や家庭において大人が阻害して成長を妨げるとしたら、とても残念なことです。

とはいえ、将来社会で生きていく子どもにとって、学校で知識や技術を習得することは必要なことで、学校のプログラムに評価が発生するのも当然です。ただ、学校や成績で評価されるものは価値のひとつでしかありません。例えば、人の役に立てること、一生懸命できたことなど人と比べられること以外に、人の価値はたくさんあります。それらは子ども自身では見つけにくいため、いちばん近くで見守っている親が見つけ、教えてあげることが大切 です。

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子どもの「~したい」を大切にする教育とは

大人が教えて育むのではなく、子どもが持つ力を引き出す。子どもを主語にすると本来の学びのあり方が見えてきます。

それでは、そんな“これからの教育”のベースになる「教育基本法」と「学校教育法」とはどんな内容なのでしょうか。また、そこから導き出される「学力の3要素」と、それを達成するための「学習指導要領」について、わかりやすくまとめてみました。

教育基本法

第二章 教育の実施に関する基本、義務教育 第五条から

「義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。」

学校教育法

第四章 小学校 30条2項

「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。」

学力の3要素

上記の学校教育法には「学力とは」が定義されており、学力の3つの要素が示されています。

❶ 基礎的な知識及び技能を習得

❷ これらを活用して思考力、判断力、表現力その他の能力を養う

❸ 主体的に学習に取り組む態度を養う

学習指導要領の3つの柱

文部科学省がつくる学習指導要領では、上の「学力の3要素」をもとに3つの柱を立て、求められる資質、能力を明確化しています。

③は「~したい」という主体的な力

知識や技能を身につけ、それらを活用して課題を解決する思考力や判断力を身につける。そのためにも、知識や技術を”身につけたい”と考える力が原動力になるので、3番目の主体的な力を引き出すことが大切です。

「~したい」は家庭教育で育まれる

学校教育のめざす「学力の3要素」「学習指導要領の3つの柱」は、家庭でそのベースがつくられ育まれます。具体的にはどのようなアクティビティが奨励されているのでしょうか。

いろいろな体験をさせる

「~したい」という力を引き出すには、いろいろな体験をさせることがいちばん。お手伝い、遊びなど興味を持ったものにはどんどん挑戦させ、失敗してもそこから自分で復元する力を学べる機会にしましょう。

本を読んで疑似体験

読書は知らない世界とつながる扉。疑似体験としても最適です。読み聞かせももちろん大事ですが、逆に子どもが選んだ本を音読してもらったり、好きな本について話し合ったりするのもおすすめです。

学校と親がともに“これからの教育”を考える時代

テストなどの「見える力」に対する評価だけでなく、ひとりひとりの価値を見出し、その子だけのプログラムを親と学校が一緒になって考える。それが、将来を担う子どもに必要な教育といえるのではないでしょうか。

お話をうかがったのは…

大谷大学文学部教授
荒瀬 克己 教授

京都市立堀川高校校長、京都市教育委員会教育企画監などを経て、2014年より大谷大学文学部教授。中央教育審議会などの委員を歴任。小学校での教科担任制拡大について検討する中央教育審議会の特別部会の部会長も務める。著書に『奇跡と呼ばれた学校』(朝日新書)など。

連載「発育のススメ」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

『小学一年生』2020年4月号 別冊HugKum イラスト/吉田ナミ 構成・文/山本章子

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