子ども全員が不登校。2歳、4歳を含め6人きょうだいの「ホームスクール」学びドキュメント

「子育てがつらい」と思う前に、子どもと同じ目線に立ってみる

そんなときに、下の子の自主保育で知り合ったおかあさんが、その場にいた長男くんを見て、「おもしろいねぇ」と受け止めてくれたのです。そして、塩の塊がキラキラ光っているのを「なぜなんだろう」と言う彼に、「ほんとだ、きれい。なんでだろうね、不思議だね」と、彼と同じ目線で考え、話を聞いてくれている。長男君もすごく楽しくなって、落ち着いてくる。

「そのとき、ようやく気づいたんです。彼と同じ目線に立ってなかったな、と。それまでの自分は、子育てはつらい、楽しくないという思いがうらみみたいになっていたのかもしれない。でも、そのお母さんの姿にはっとさせられてから、意識して子どもと同じ目線を持とうと思い始めました。すると、意外にも、だんだん、子育てが楽しくなってきたのです」

「なんでだろう」「なぜだろう」が自主的な学びの芽に

 学校の学びのペースに身体も心もついていけない場合も

一方、長男くんが学校に行きたくない、でも行ってみる、を繰り返しているうちに、2つ違いの次男くんが小学校入学。すると、彼の場合は長男君とは別の意味で、小学校の勉強になじめませんでした。

「本人は学校のシステムがきらいとか、そういう思いはなかったんです。でも、学校の勉強のペースについていけなかったんですね。なんにせよゆっくりの次男は、計算もゆっくり、理解もゆっくり。ひとつずつ指で数えないと正解が出てこないのです。また、繊細で他の子が先生から叱られる事に胸を痛めたり、聴覚が過敏で集団が苦手な子でもありました」

日本の公立の小学校の学びは、学習指導要領に基づいていて、それを一斉に学び、一定期間に終わらせるのがミッションです。授業内容やペースに合っている子は問題ないけれど、生駒さんちの長男くんや次男くんのように学び方が個性的な子は、どうしてもうまくフィットしません。

パパは「学校は四の五のいわないで、行くものだ」と言うけれど、行きたくても身体が、心がついていけないのなら、どうなのだろう……。

集団学習をきらいにならないためにも家で学ぶ

ふたりとも、努力はした。世間からどう思われようと、ふたりはわがままを言っているわけではないのです。

長男くんが紆余曲折ありながら3年生を迎え、「やっぱり自分にはこの学校の学びは無理」となったとき、そして、次男くんが学校のペースに合わない中、ものすごい努力をしているのを見て、生駒さんは勇気をふるいました。

もう無理して学校に行かなくていい。その分は家で学べばいい。学校には行きたいときに行って、学校をきらいになりすぎないようにすれば、そのほうがいい。夫にも、『私が責任持つから』と宣言しました

いざ決めてしまったら、今度は「その重さに押しつぶされそうになった」という生駒さん。

しかし、ふたりの子どもたちは自由と受容を得て安心し、自分たちらしく学ぶようになったというのです。生駒さんは、その「学びたい意欲」を育て大きくするために、必要そうな本を探したり、行きたい場所に連れて行ってあげたり。そんな日々が始まりました。

博物館や企画展では体験型の学習も可能

ホームスクールときどきフリースクール、たまに学校

三男くんや4番目の長女ちゃんは、それを見て、なんとなく「学校じゃなくていいかな」と思うようになりました。ふたりは別に集団が苦手なわけでもなかったので、今は学校に席を置きながら、フリースクールに毎日通っています。

フリースクールは勉強の時間が短いので、夕食を食べた後、ふたりは夜8時か9時くらいから、自主的に勉強を重ねているといいます。昼間、勉強したり身体を動かしたりしている長男くんと次男くんもそこに加わり、さながら生駒家の夜は寺子屋のよう。

また、現在6年生の次男くんは、「この先、中学も高校も行きたいから」と、自ら学習指導要領に基づいたドリルを解き始めました。

三男くん(小4)は1冊まるごと小数点を学ぶ“無学年”のドリルを使って自習

自由に学ぶようになってから学校の学びの尊さも感じ始めた

にわとりが先か、卵が先か。「どうしても学校で勉強しなきゃダメ」「学習指導要領に基づいて順番に学ばなきゃダメ」という思いを両親ともに捨てたあたりから、子どもたちはより自由に、積極的に学び始めました。その学びは、発酵学、物理、生態学、調理、農業、プログラミングと、どんどん広がっていきます。そして、自ら学ぶ力を得たからこそ、学習指導要領に基づく勉強や知識も必要なのだと気づき、取り組んでいる。

生駒さんは、そんな子どもたちの興味に伴走し、「より学びやすい環境をサポートしていこう」と、親としての立ち位置も定めています。

生駒家の学びの事情は、世間から見たら特殊かもしれません。どの子にも当てはまりサクセスするというわけでもありません。けれど、生駒さんや子どもたちが悩みながら、戸惑いながら、少しずつかためてきた学びのプロセスの中には、子どもたちの学びの意欲に役立つヒントがたくさんあります。

次回は、その学びの実際を教えてもらい、どう親が関わったら子どもの学びがより深くなるのか、生駒さんの「ホームスクール運営術」を、具体的に指南してもらいます。

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生駒  知里
2~14歳まで6児の母。元「川崎市子ども夢パーク」のオープニングスタッフ。出産を機に退職後、子育て支援グループや自主保育の立ち上げ・運営に携わる。
長男が小学1年生のとき学校に行かない選択をしたことで不安を感じるなか、在宅スクーラーの心理的・物理的ケアが少ないことを知り、それをきっかけに2017年、学校外で育つ子ども達の居場所を見える化して地域に理解を広げる「多様な学びプロジェクト」tayounamanabi.com を始める。現在はフリースクールなどの中間支援や、保護者や子ども達のオンラインの交流の場の運営も行っている。上の4人の小・中学生は、自宅やフリースクールなど学校以外の学びの場で育っている。

取材・文/三輪  泉

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