【親子で学ぶSDGs】古材からリンゴまで。捨てられるものを救い循環させる「リビルディングセンタージャパン」の活動

 

SDGsとは、Sustainable(サスティナブル)・Development(デベロップメント)・Goals(ゴールズ)の略で、「持続可能な開発目標」という意味。地球の暮らしを守るため、2030年までに解決したい17の課題目標が2015年に定められました。「親子で学ぶSDGs」では、今、全世界が取り組んでいる持続可能な循環型社会のための「新しい社会と暮らし」の実践例を紹介していきます。ナビゲーターは、武蔵野大学環境システム学科のオサム先生こと明石修准教授。第5回は、捨てられるはずの建築廃材(古材)や古道具をカッコよく再生させて、住まいや暮らしに循環させているリビルディングセンタージャパンを訪ねました。

住まいに込められた”想い‶もレスキューし、循環させるリビルディングセンタージャパン

リビルディングセンタージャパンの1階にある木材置き場にて語らう東野さん(左)とオサム先生(右)。レスキューされた木材を見ながら「何か作りたくなりますね」とオサム先生の目が輝きます。

JR 上諏訪駅から徒歩10分。温泉地である諏訪湖畔の反対側に、リビルディングセンタージャパンの店舗があります。静かな街にもかかわらず、開店と同時に、若いカップルや家族連れなどが次々とやって来ます。エントランスには、古い鉢やシンク、タンスなどが並び、その横のガレージには、古材が積み上げられています。1階の奥にはカフェがあり、2階は陶器など比較的小さな古道具が並び、3階ではタンスやイスなど大きな古道具が、新しい持ち主との出会いを待っています。

長野の古道具屋さんに、なぜたくさんの人が集まってくるのか――。

その在り方の魅力を探るべく、代表の東野唯史さんにうかがいました。

——リビルディングセンタージャパンを設立したきっかけを教えてください

以前、全国の各所に滞在しながら、店舗のデザインや施工をしていました。そのときに、日本中で起きている人口の減少と空き家の増加という社会問題を目の当たりにし、危機感を抱いたのがきっかけとなり、2016年にオープンしました。

自分でできることが増えると暮らし方が自由で楽しくなる

——社会問題がリビルディングセンターの出発点だったのですね?

はい。ちょうどその頃、特定空家法という法律が施行されました。これは、放置されている空家の解体を持ち主に命じ、従わない場合は市町村が解体撤去できるという内容です。古い家をどんどんと壊し、新しい家を建てやすくなるのですが、解体が増えると建築廃材も増えます。ここから出る古材をうまく循環させることができれば、ゴミが減り、自然環境が守られ、そこに宿る文化も継承できるのではないかと考えました。

そして、アメリカのポートランドにあるReBuilding Center を訪れ、帰国後すぐに、「日本でもリビルディングセンターをつくりたい」という熱いメッセージを送り、名前とロゴを借りる許可をもらいました。

——ポートランドのリビルディングセンターの、どんな点に魅力を感じたのですか?

そのベースに「古材の再利用を通じてコミュニティをつくる」ということがある点です。人が集まり、地域が活性化され、古材を通して文化が広がっていく……。ただ古いものを売るだけではない点に惹かれると同時に、親和性を感じました。

陶器や家庭用品などの雑貨から、イスやテーブルなどの家具まで、なんでもそろう古道具の売り場。

捨てられるはずのものをレスキューし、手を加えて新たに循環させる仕組み

——それが、リビルディングセンターの理念である「リビルドニューカルチャー」につながっていくのでしょうか?

はい、そうですね。私たちは、解体が決まった店舗や古い家などから、古材や古道具を引き取ることを〝レスキュー〞と呼んでいるのですが、捨てられるはずのものをレスキューして、磨いて、手を加えて、建材や商品にして生かし、新たに循環させる仕組みをつくりました。ここで大切にしているのが、古材や古道具に込められた思い出やストーリーも一緒にレスキューしていることです。家主さんから話をうかがい、レスキューカルテにストーリーを記録して、次の方へ継承する。そこが、単なるリサイクルショップとは、一線を画している特徴だと思っています。

どこでレスキューされた古材なのかが、きちんとわかるプレート。「明治33年蔵」というだけでも、物語を感じる。

リビルディングセンターがレスキューするのは家だけではありません。時には、農家さんの体調不良で収穫ができなかったリンゴを救い出すことも。

——店内にあるさまざまな道具や家具、古材を見ているだけでも、なんだかワクワクしてきます(笑)。

レスキューしたものたちのストーリーや良さが伝わるようなディスプレイを心がけています。また、古材を使うスキルを伝えて、もの作りを始めるきっかけになるようなワークショップを開催し、古いものを使って新しいものを生み出す楽しさを感じていただいています。

大人気のパッチワークテーブルワークショップ。好きな古材を組み合わせ、テーブルに仕上げます。DIY初心者でもOK。開催の予定などはホームページでご確認を。

 

——古材を取り入れた空間デザインも手掛けていらっしゃいますが、今はどんな「住まい」に注目をしていますか?

エネルギー問題に関心があるので、断熱材を取り入れたエコハウスのデザインに取り組み始めました。きちんと設計をして断熱材を入れると、エネルギー支出を一般的な新築の住宅に比べて約39%削減することができます。古い家に取り入れることもできるので、まず自宅に導入しました。とても快適です。ドイツからスタートしたパッシブハウス(省エネルギー住宅)の考え方は、これから需要が高まると思います。

東野さんが今、尽力しているプロジェクトのひとつがエコハウス。断熱材と古材を活用して、中古住宅を快適におしゃれにリノベーション。

——最後に、リビセンのエッセンスを日常に取り入れる工夫やヒントを教えてください。

リビセンのモットーに「楽しく、たくましく」というのがあるのですが、シリアスにならずに、まずは自分の手を動かすことを楽しんでみてください。たとえば、ちょっとした隙間に置きたい家具を作ってみるとか。自分でできることが増えると、選択肢が増えて、暮らし方が自由になっていきます。そのとき、ちょっとカッコよく仕上げたければ、ぜひ古材を使ってみてください。

古材を磨く、店頭に並べるなどの作業に参加することができます。日々の暮らしにリビセンのエッセンスを取り入れるチャンス。お問い合わせなどの詳細は、リビセンのホームページをチェック。

リビルディングセンタージャパンが手がけたカッコいいお店&プロダクツ

捨てられるはずだったものが素敵によみがえる、それはきっとワクワクする楽しい経験です

リビルディングセンターが手がけたお店やプロダクツは、どれも本当にカッコいい! 古いものをステキに蘇らせるそのセンスに、多くの人が惹きつけられています。大量消費から循環の時代へと、時代は確実に移り変わっているようです。

リビセンから歩いて数分の場所にあるコーヒーとお茶の店「AMBIRD」。観光客だけでなく地元の人にも愛されている町のコーヒースタンド。

レスキューしたイスを張り替えたり、木部をキレイにしたりして再生させたイスを販売。張り替えは、近所(下諏訪町)の張り替え屋さんとのコラボ。

古材で作ったオリジナルのフレーム。木目の出方でさまざまな表情を見せてくれる一点物。手軽に古材を取り入れることのできる人気アイテム。

JR上諏訪駅より徒歩10分の便利な場所にあるリビルディングセンターのショップ。カフェを併設しているので、お茶を飲むだけでもOK。ショップをひと回りするだけで、古材や古道具の使い方や暮らしへの取り入れ方に気づくはず。 http://rebuildingcenter.jp

記事監修

明石修准教授(オサム先生)

武蔵野大学環境システム学科准教授。主宰する「明石ラボ」では、人と自然が共生したサステナブルで循環型の社会はどのように実現できるのか、について日々、学生たちと研究と実践を行っている。専門分野は、自然エネルギーや持続可能な食と農(パーマカルチャー)、モノの消費と循環経済など。 https://akashi-lab.com/

「親子で学ぶSDGs」は『小学一年生』別冊HugKumにて「21世紀的地球の暮らし方」のタイトルで連載中です。

記事監修

雑誌『小学一年生』|1925年の創刊の国民的児童学習誌

1925年の創刊以来、豊かな世の中の実現を目指し、子どもの健やかな成長をサポートしてきた児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターに関わっていただき、子ども達各々が自身の無限の可能性に気づき、各々の才能を伸ばすきっかけとなる誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。


『小学一年生』2020年10月号 別冊HugKum 構成・文/神﨑典子 撮影/本間 寛 写真提供/リビルディングセンタージャパン

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任つかう責任

SDGsとは?

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