「エアコンから出てくる空気が臭い」その原因は、パっと見では分からないエアコンの奥深くに潜んでいるのです。今すぐできる臭い対策や、掃除の注意点について詳しくまとめました。お手入れ方法のポイントを知り、エアコンによる空気の汚れを防ぎましょう。
目次
エアコンから嫌な臭いがする原因
「過ごしやすい春や秋はエアコンを全くつけない」という家庭は少なくありません。このように長くエアコンを使わないでいた場合は特に、さまざまな原因によってエアコンから生乾きの洗濯物のような臭いがすることがあるのです。
まずは、この臭いの原因について確認しましょう。
本体内部に繁殖したカビ
臭いの主な原因は「カビ」です。一定の条件がそろうとカビが増殖し、人が「不快だ」と思う臭いを発するようになります。湿っぽい場所で嫌な臭いがするのも同じ原因です。
エアコンは、室内の空気を循環させて部屋の温度をコントロールします。そのため、室内の空気を吸い込むとき、空気と一緒に室内に浮遊していたカビをエアコン内部に吸い込んでしまうのです。取り込んだ空気は熱交換器によって設定された温度に整えられ、エアコン内部を通って室内に送り込まれます。このとき、エアコンから出てくる空気に混じって、内部で増殖したカビも部屋中に散らばるのです。このカビが放つ臭いこそ、嫌な臭いの大きな原因といえるでしょう。
汗や料理などの生活臭
エアコンが臭いといっても、「カビ臭い」のとは違った臭いがすることもあるかもしれません。その場合は、エアコン内部に「生活臭の原因物質」が付着していると考えられます。
香りの強い料理をしたり、部屋でたくさん汗をかいたりすると、家具に臭い移りすることがあるでしょう。タバコを吸う人がいれば、ヤニの臭いが染み付くこともあります。同じように、生活している中で発する臭いは、エアコンの内部にも蓄積されていくのです。部屋と同じようにお手入れしなければ、エアコンから出てくる空気はどんどん臭くなってしまいます。
カビが増えてしまう三つの条件
とても小さなカビの胞子は、私たちの暮らしのあらゆる場所に浮遊しています。しかし、臭いが発生したり、見た目に分かるようになったりするのは増殖してからのことです。
では、カビが増殖してしまう「三つの条件」について見ていきましょう。
カビにとって快適な温度
カビが増殖する第1条件は、「暖かい場所であること」です。多くの種類のカビが活発になるのは「20~30℃」くらいの温度で、適温の環境にあるカビはどんどん根を伸ばしていきます。
とはいえ、この温度の範囲外では成長しないというわけではありません。多くのカビは0~40℃でも生存可能であり、適温環境のときほどではないにしろ、生育しています。一年を通した一般住宅の室内平均気温は10~30℃です。人が快適だと感じる温度に保たれた室内は、カビにとっても住み心地のよい環境といえるでしょう。
高い湿度
二つ目の条件は「高い湿度」です。具体的には、「60%以上」の湿度がある場所をカビは好みます。家の中でカビが発生するのは、お風呂場やトイレ、キッチンのシンクなど、水回りであることがほとんどではないでしょうか。カビが増殖するには、湿気が欠かせないのです。
しかし、押し入れや冷蔵庫など、60%も湿度がないような場所にもカビは生えます。それは、カビが水蒸気ではなく、その場にある水分を使って増殖するからです。エアコン内部のように結露しやすい場所はカビにとって絶好の環境ですから、「部屋の湿度が低いから大丈夫」と安心するわけにはいきません。
栄養になるホコリや汚れ
三つ目の条件は「栄養」です。カビも生物ですから、成長するには栄養分となるエサが欠かせません。室内にいるカビは、生活している中で発生するさまざまなものを栄養源として取り込みます。具体的には、ホコリ・食べかす・皮脂・ダニの死骸・水あかなどです。エアコンに限っていえば、カビの主な栄養源はホコリになるでしょう。
どれだけこまめに部屋の掃除をしていても、空気中からホコリを100%取り除くのは不可能ですから、エアコン周囲や内部の定期的なお手入れが重要となります。
カビや汚れをそのまま放置すると?
見えない部分の掃除は、ついつい後回しにしてしまいがちです。しかし、エアコンのような電化製品の場合、カビや汚れを放置すると機能に悪影響が出ることもあります。
エアコンの効きが悪くなる
長いこと掃除せずに汚れを放置することでまず考えられる不調は、「エアコン機能の低下」です。
たまった汚れが空気の通り道を狭めてしまうと、エアコンの風力は低下してしまうでしょう。熱交換器に汚れがたまると、効率的に温度を調整できなくなります。そのため、部屋を設定温度にするまでに余計な時間がかかってしまうのです。結果として電気代も高くつき、家計にも少なからずダメージを与えることになるでしょう。
故障につながる場合も
さらに汚れの蓄積が深刻になると、「エアコンの故障」を引き起こすかもしれません。
フィルターの汚れがひどくなると、どんなに風力を強くしても空気を通せなくなってしまいます。過剰な負荷をかけ続けると、やがてエアコン基幹部の故障を招くでしょう。また、エアコンの水漏れも、汚れが原因であるケースが少なくありません。通常、結露により発生した水分はドレンパンを通して屋外へ排出されます。しかし、汚れが排水を妨げると室内に汚水が落ちてくるのです。
すぐできる簡単な臭い取り
トラブルというものは、こちらの都合などおかまいなしに起きるものです。掃除する時間はないが、エアコンをどうしても使いたいときもあるでしょう。
「とりあえず今、臭いをどうにかしたい」そんなときに役立つ、三つの応急措置を紹介します。
運転開始後10分間は窓を開ける
汚れたエアコンの臭いを軽減するには、「換気」がポイントとなります。臭いの原因はエアコンから吹き出してくるカビや汚れですから、それをできる限り室内から逃がすことが重要です。
吹き出すカビや汚れの量は、エアコンを稼働した直後が最も多いといわれています。そのため、稼働する前に窓を開け、稼働してから10分間は空気の入れ換えを行いましょう。可能であれば、窓は2カ所以上開けることが望ましいです。風の通り道ができるため、より効率的に部屋の空気を循環させられます。
設定温度を16℃にして1時間運転
冷房を使うのであれば、「排水機能」を利用して臭いの原因を流してしまうのも一つの方法です。その場合、エアコンの温度を「16℃」に設定し、「1時間」以上運転させます。
急激に冷やされたエアコン内部には大量の結露が起こり、多量の水分が排水ホースを流れていくでしょう。その勢いを利用して、ドレンパンやホースにたまった汚れを押し流すのが狙いです。また、空気を冷やすことで臭い成分の蒸発を防ぎ、部屋中に臭いが充満するのを軽減させる効果も期待できます。
設定温度を30℃にして1時間運転
暖房機能の場合は、「熱による乾燥」を利用します。エアコンの温度を「30℃」に設定し、冷房時と同じように「1時間」以上運転させましょう。高温で稼働し続けたエアコン内部は熱がこもり、カビの好む水分を蒸発させてしまいます。増殖に必要な条件のうちの一つを断てるため、カビを死滅させる効果も期待できるでしょう。
ただし、エアコンから空気と一緒にカビの死骸も吹き出してくるため、閉め切った状態では空気が汚れてしまいます。運転中は窓を開け、空気の入れ換えをすることが大切です。
臭いが消えないときはエアコンを掃除
先に紹介した臭い対策はあくまで応急措置ですから、臭いの原因をしっかり取り除くにはエアコンの掃除が必須です。続いて、エアコン掃除の手順について詳しく解説します。
なお、エアコン掃除をするときは、間違って運転させてしまわないように電源プラグを抜いておきましょう。
事前準備をする
まずは以下の道具を用意し、掃除の準備を整えましょう。
- 新聞紙
- 脚立
- 掃除機
- バケツ
- 中性洗剤
- 雑巾
掃除中に汚水が垂れることがあるため、新聞紙を床に敷いて養生します。脚立は掃除をしやすい位置に置き、グラつきがないか確認しておきましょう。
バケツには、中性洗剤を薄めた水を用意します。洗剤を使うため、ゴム手袋もあるとよいかもしれません。また、細かい部分の汚れまで念入りに掃除する場合は、割り箸やつまようじなどがあると便利です。
表面部分のホコリを取る
いきなりエアコンを分解すると、表面に付いたホコリが舞い散ってしまいます。長いこと掃除していなかった場合は、ホコリがかたまりになって落ちてくるかもしれません。新聞紙を敷いていても、ホコリが大量に落ちてしまうと後片付けが大変になります。先に雑巾や掃除機を使って、表面に付いているホコリをざっと取り除いておきましょう。
なお、エアコンも電化製品ですから、たとえ表面であっても水分によって故障する可能性は否めません。水拭きでなくてもホコリは取れるので、から拭きすることをおすすめします。
フィルターを水洗いする
前面のカバーを開けると、「フィルター」が目に入ります。
手順① まずはフィルターの表面に付いたホコリを掃除機で取り除いてから、ゆっくりと取り外しましょう。
フィルター掃除は順番が重要です。外したフィルターを新聞紙の上に置き、掃除機でホコリを吸い取ります。このとき、「表から裏」の順に掃除機をかけましょう。
手順② 次に、シャワーをかけて細かなホコリを洗い流します。このときは「裏から表」の順で流しましょう。順番を逆にすると、ホコリが取れないばかりかフィルターが目詰まりしてしまいかねません。
手順③ 取り切れない汚れは、薄めた中性洗剤を含ませたスポンジでなで洗いして落とします。汚れがひどい場合は、洗剤水に10分ほど浸け置きするとよいでしょう。
手順④ 洗い終わったフィルターは水分を拭き取り、完全に乾燥するまで陰干ししておきます。
吹き出し口の汚れを拭き取る
最後に、エアコン本体の「吹き出し口」と「ルーバー」も掃除します。吹き出し口は風が出てくる部分のことで、ルーバーとは吹き出し口に付いている風向きを変更するための羽のような部品のことです。
手順① 吹き出し口とルーバーは、洗剤水を含ませてかたく絞った雑巾で拭き掃除します。隅や手が届かない部分は、つまようじや割り箸などを利用するとよいかもしれません。
天順② 最後に水だけで絞った雑巾で二度拭きし、洗剤成分を拭き取って掃除完了です。
掃除をするときの注意点は?
エアコン掃除をしたばかりに故障してしまったり、カビが増殖しやすい環境を作ってしまったりというケースもなくはありません。そんなことにならないよう、注意点についてもしっかり把握しておきましょう。
内部に水分が残らないようにする
エアコン掃除の後は「水分」が残らないよう注意しましょう。水分はカビの発生原因になるほか、故障を引き起こすことも考えられるのです。湿ったままのフィルターをエアコンに戻してしまうと、エアコン内部が湿気で充満してしまいます。また、拭き取り掃除をした後にも、わずかながら水分が残ります。
こうした状態を解消するため、エアコン掃除の仕上げに「送風運転」を行いましょう。冷房を使用するときのように結露は起きないため、30分ほどで内部を乾燥させられます。
エアコン洗浄スプレーは使わない
エアコンの臭い対策として洗浄スプレーなども市販されていますが、こうしたスプレーの使用は十分に注意する必要があります。スプレーは奥深くまで入り込んでしまうため、使用する際にはしっかりとエアコンの養生をしなければいけません。この養生は意外と手間がかかります。養生が甘いと拭き取りできない部分にまで洗浄成分が付いてしまい、悪臭や故障の原因になるばかりか、火災が起きる可能性もあるのです。正しく使用できる自信がない場合は、洗浄スプレーの使用は避けた方が賢明といえるでしょう。
エアコンの臭いの発生を防ぐ対策
エアコンはどのくらいの頻度で掃除すればよいのでしょうか。また、カビの増殖を抑えるコツなども気になるところです。そこで、エアコンのお手入れの基本について確認していきましょう。
定期的にフィルターを掃除する
頻繁に掃除しておきたい部分は「フィルター」です。空気の通り道であるため、最もカビやホコリが付着しやすい部分といえます。理想的な掃除の頻度は「月に1回」です。ホコリがたまるほど掃除しにくくなるため、カバーを開けてフィルターの状態を確認する習慣を付けるとよいでしょう。
「毎回取り外して水洗いするのは面倒」というのであれば、掃除機で吸うだけにしたり、表面のホコリを取り除いたりするだけでも、ホコリの蓄積度合いは軽減されます。
冷房使用時は停止後に送風運転をする
冷房を使った後は、「停止後1~2時間の送風運転」をしましょう。冷房を使うと、エアコン内部に結露がたまります。この水分はカビの増殖を助長してしまうのです。
送風運転を行うとエアコン内部を乾燥させられるため、カビ増殖の防止に役立ちます。もし送風運転機能がなければ、冷房を最高温度で運転させましょう。ほぼ常温となるため、送風運転と同じような効果が得られます。
使わない時期も送風運転をする
春や秋など長期でエアコンを使用しない時期にも、エアコン内部に湿気がたまることがあります。湿気対策として、月に1度を目安に送風運転しておくのがおすすめです。
また、エアコンに空気を通すことで、付着したカビやホコリを追い出すこともできます。エアコン内部の乾燥と空気の循環が目的ですから、送風運転の際は窓を開けて換気しましょう。
年に1度はクリーニング業者に依頼しよう
最後に、エアコンのクリーニング業者に頼むメリットや、業者を選ぶポイントについて紹介します。
手が届きにくい場所もきれいになる
当然ながら、小さなホコリやカビはエアコンの奥深くにも付着しています。何年も使う家電ですから、目に見えない場所にも使用した年数分の汚れが蓄積しているでしょう。しかし、家庭で掃除できる部分はカバー・フィルター・ルーバー程度です。それ以上にエアコンを分解するとなると、専門的な知識が必要です。無理に自分で掃除しようとしてエアコンを壊してしまえば、修理や買い替えなどの費用がかさんでしまうでしょう。エアコンを内側からすっきりきれいにしたいときは、プロに相談した方が安心です。
事前に料金体系や対応機種をチェック
クリーニング業者を選ぶポイントは「料金体系」と「対応機種」です。
なるべく安く済むに越したことはありませんが、「7000円~」のようにあいまいな最低価格だけをチェックしていると、後から料金を上乗せされることもあります。基本料金やオプション価格を明確に表示してある業者を選んだ方が、納得のいく価格でクリーニングしてもらえるでしょう。
また、業者によって対応できる機種を限定している場合もあります。特に、自動で掃除する機能が付いているエアコンは、業者側が対応していないケースが少なくありません。使っている機種に対応できるかどうか、前もって確認しておくとスムーズによい業者を見つけられるでしょう。
臭いのないエアコンで快適に過ごそう
エアコンの嫌な臭いは、内部にたまったカビや汚れが吹き出してくるためです。空気の汚れがひどくなれば、臭うだけではなく深刻な体調不良を引き起こしてしまうかもしれません。「臭いな」と感じたら、フィルターや吹き出し口の汚れを取り除いて様子をみましょう。改善されないようであれば、プロの手を借りるのもよい方法です。部屋と同じようにエアコンから出てくる空気もクリーンにして、居心地のよい住まいと家族の健康を守りましょう。
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文・構成/HugKum編集部