NHKのEテレ「おかあさんといっしょ」「みんなのうた」でおなじみのアニメーション作家の大桃洋祐さん。先月、初めての絵本『ぼくらのまちにおいでよ』(小学館)を刊行され、話題になっています。サンタ好きを自称する大桃さんの、クリスマスをテーマにした個展が開催中です。個展への思いをお聞きしました。
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子どものころからサンタが大好き!今でもクリスマスが近づくとワクワクします
大人になった今もクリスマスが近づくとワクワクしますね。子どもの頃から、繰り返し読んできたお気に入りのサンタクロースの物語がいくつかあって、サンタクロースという存在が今でも大好きなんです。
絵本では、『さむがりやのサンタ』をはじめとするレイモンド・ブリッグズのサンタシリーズ、敬愛する絵本作家ジョン・バーニンガムの『クリスマスのおくりもの』に親しみました。
中でも、ディズニーの初期の短編アニメーション『サンタのオモチャ工房』(1932年制作)は繰り返し見てきた作品です。サンタがクリスマスプレゼントの人形やおもちゃの木馬などを工場で作る様子が描かれているのですが、幼いころは、本当にサンタクロースがこんな風にプレゼントを作ってるのだと思い込んでいたんです(笑)。今でも大切にしていて、3歳になる娘と一緒に見ています。
今年の初めに「クリスマス」をテーマに個展をやりませんかというオファーをいただきました。色々迷うところもありましたが、最終的には僕のオリジナルの大好きなサンタの物語を作るチャンスが来たんだ、と考えて「せっかくの機会だから好きなクリスマスを思い切り描こう!」と決断しました。
冬の始まりからクリスマスまでのサンタの物語を描きました
東京・広尾にある「コートヤードHIROO」で、12月25日のクリスマスまでの期間中、個展「君がベッドで眠るころ」が開催中です。
サンタクロースがプレゼントの準備をして、子供達に届けるまでのストーリーです。サンタクロースの仕事が終わる25日のクリスマスまでの会期です。
クリスマスをテーマにした個展「君がベッドで眠るころ」は、オンラインで楽しめる工夫も
毎日見られる作品が増えていく、オンラインで楽しめる「アドベントカレンダー」
遠方で、なかなか現地に出向くのが難しいという方のために、オンラインで楽しめる工夫もあります。僕のTwitter(@omomo_yosuke)で、アドベントカレンダーのように毎日、1枚ずつ作品が見らるようにしています。
そして、作品のポストカードやポスター、今回の作品の作品集もオンラインショップで販売中。おうちで楽しむクリスマスアイテムにしていただけたらうれしいです!
個展会場では新刊絵本『ぼくらのまちにおいでよ』の販売も
新刊絵本が11月に発売。絵本作りで、自分で考えてひとつの世界をつくりあげていく楽しさを存分に楽しめました
個展会場では初めての絵本『ぼくらのまちへおいでよ』の販売もしています。
僕自身、自由を求めて絵を描いているところがあって。クリスマス絵本のお気に入りの一冊の作家でもあるジョン・バーニンガム(*)さんの絵を見た時、衝撃を受けたと同時に、絵は自由に描いていいものなんだと初めて肌で感じられたような気がしました。それからアニメの仕事をやりながら、自分の絵を描きはじめたことが、今回の絵本につながりました。
それまで僕はアニメ制作に必要な作業として、絵を描いていたんですよ。美大受験の頃に遡ると、絵に色を塗るのが苦手だったんです。色を塗るうちにはみ出すこともあって、そこに神経を使うのが性に合っていないというか、あまり興味がなかった。でも、バーニンガムの絵を見た時に、こういう絵なら描きたいのかもしれない…と気づいて、アニメの仕事をやりながら、自分の絵のスタイルを模索するようになりました。
(*)ジョン・バーニンガム 1936年生まれのイギリスの作家。『ポルカはねなしガチョウのぼうけん』『ガンピーさんのふなあそび』で、ケイト・グリーナウェイ賞を受賞。
絵本は自分で考えて、ひとつの世界を作り上げていくのが楽しいですよね。仕事でアニメーションを作る時は、クライアントが求めるものを作るので。
すべてを自分の中から生み出していく創作に夢中になったのは、大学時代ぶりかなと。すごく満足感がありますし、こういうことをやりたいとあらためて思いました。今回は街の生活でしたが、自分が興味を持ったこと、いいなと感じたことをどんどんテーマにして、絵本を描いていきたいです。
取材/宇田夏苗 構成/Hugukum編集部