「おみおつけ」は「おみ」+「おつけ」。だから「御味御付け」
インターネットで検索すると、「御御御付け」としているものがけっこうあります。最近も、インターネットの難読語クイズで、「御御御付け」を何と読む?という問題を見たことがあります。
確かに「御」という漢字は「お」「み」と読むので、「おみお」の部分が「御御御」だというのでしょう。でも最近の国語辞典は、その表記を採用していません。
国語辞典に載っているのは「御御御付け」ではなく、「御味御付け」
主流は「御味御付け」です。違いがわかりますか。2字めが「御」ではなく、「味」です。
かつては、「御御御付け」という表記を示していた辞書も確かにありました。でも現在は、「おみおつけ」は、「おみ」と「おつけ」に分けることができると考えられています。どちらも女房ことばで、「おみ」の「み」は味噌のことでそれを丁寧に言った語、「おつけ」の「つけ」は本膳で飯に並べて付ける意から吸い物の汁のことで、やはりそれを丁寧に言った語だというのです。女房ことばとは、室町時代初期頃に御所に仕える女性たちが使い始めた語です。
ところで、江戸時代の『守貞漫稿(もりさだまんこう)』(1837~53年)という随筆には「今江戸にて〈略〉味噌汁をおみをつけと云也」と書かれているので、「おみおつけ」はもともと江戸での言い方だったのかもしれません。死語にはしたくないことばです
記事執筆
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。