労働三権とは? 労働者の権利と労働三法との関係について解説【親子で社会を学ぶ】

「労働三権」は、日本国民ならぜひ理解しておきたい、労働者の基本的な権利です。労働三権について考えることは、子どもが「働くこと」への興味や理解を深めるきっかけにもなるでしょう。労働三権の具体的な内容や、法律との関係を解説します。

国会議事堂。日本の立法府の象徴(1936年竣工、東京都千代田区)

労働三権とは?

労働三権は「日本国憲法」で保障されている、働く人を守るための権利です。「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三つをまとめて、労働三権と呼んでいます。

労働三権があることで、労働者は不当に働かされる心配がなく、安心して仕事に就けるのです。三つの権利について、具体的な内容を見ていきましょう。

団結権

「団結権」は、「労働組合」を立ち上げたり、加入したりできる権利です。労働組合とは、自分たちがよりよい条件で働けるように、賃金の引き上げや労働環境の改善などについて、雇い主側と交渉する組織です。

一般的に、労働者は雇い主よりも立場が弱く、個人的な交渉だけではなかなか要求が通りません。しかし、労働者が団結し、皆の意見として交渉すれば、要求は通りやすくなります。

団結権によって、労働者は誰でも労働組合を発足させることができ、雇い主との交渉の場を設けることが可能なのです。

団体交渉権

「団体交渉権」は、労働組合が雇い主と交渉できる権利です。いくら労働組合をつくっても、雇い主の立場のほうが強いままでは意味がありません。

このため、労働組合には雇い主と対等の立場で交渉し、「労働協約」を結ぶ権利が保障されています。

団体行動権

「団体行動権」は、労働組合が団体交渉以外の行動を起こせる権利です。

労働組合は要求を通すために、皆で一斉に仕事を放棄する「ストライキ」を起こしたり、集会や演説によって雇い主に改善を呼びかけたりできます。ストライキや集会は、雇い主にも大きなダメージとなるため、できれば避けたいところです。

団体行動権を保障することで、労働者と雇い主の立場がより対等になり、団体交渉がしやすくなるのです。

労働三法との関係性

労働に関する法律(労働法)は、数多く制定されています。なかでも「労働三法」と呼ばれる三つの法律は、全ての労働法の元といえる特別な存在です。

労働三法は、労働三権とも深い関わりがあります。労働三権と労働三法の関係性を見ていきましょう。

労働に関する「3つの法律」を指す

労働法のうち、「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」をまとめて労働三法と呼びます。

「労働基準法」では、賃金や労働時間、休日など、労働条件における最低基準を定めています。労働者を不当な低賃金や長時間労働から守り、生活の権利を保障するための法律です。

「労働組合法」には、労働者と雇い主が対等の立場で交渉するための、労働組合に関する内容が盛り込まれています。

「労働関係調整法」は、労働者と雇い主との間で生じる争いごとを、予防・解決するための手続きについて定めた法律です。

交渉が決裂し、ストライキが起きそうなときなどに、行政機関が間に入って調停や仲裁を行うことになっています。

労働三権を具現化する法律

日本国憲法では権利を保障するとしているものの、具体的な内容まで定めている訳ではありません。労働三権についても、憲法では以下のように書かれているだけです。

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

引用:日本国憲法 | e-Gov法令検索

そのため、憲法のそれぞれの条文に対して、実際に運用するための法律が制定されています。

労働三法は、労働三権を含む労働者の権利について、具体的に定めたものです。労働三権を保障・遂行するための方策や罰則などは、労働三法の一つ「労働組合法」で定められています。

労働三権に関する豆知識

労働三権は、働く人全てに適用されている訳ではありません。対象外となる職業と、その理由について解説します。

労働三権が適用されない職業

公務員は、労働三権や労働法の対象外です。また、同じ公務員でも、職種によって適用範囲が異なります。

特に、「現業職(げんぎょうしょく)」と呼ばれる公権力を行使する立場の職種には、どの権利も適用されません。現業職とは「警察官」「消防士」「海上保安官」「刑務官」「自衛隊員」です。

日間賀島(ひまかじま)にあるユニークな駐在所。ここにも警察官が駐在している(愛知県知多郡)

 

一方で、市役所の職員や学校教員のような、非現業職の公務員には、団結権と団体交渉権の一部が認められています。

公務員の労働権利は労働法ではなく、「国家公務員法」「地方公務員法」によって守られています。

公務員に認められない理由

なぜ公務員には、労働三権が認められないのでしょうか。

公務員の雇い主は国や自治体であり、業務内容は公共サービスの提供です。もしも公務員に団体行動権があったら、ストライキによって公共サービスが止まり、生活に支障が出る可能性があります。

公務員が仕事を放棄したために、役所の窓口が閉まっていたり、交番に誰もいなかったりすると、皆が困ってしまうでしょう。国民が安心して日常生活を送れるように、公務員には労働三権の制限が設けられているのです。

労働の権利と義務について考えよう

日本国憲法では、全ての国民に勤労の「権利と義務」があるとしています。労働三権は、国民が安心して労働の義務を全うするための基本的な権利です。

憲法は権利と義務の道しるべ

労働三権や労働法の基本、憲法に興味を持ったら

労働三権や労働法について興味をもったら、基本となる憲法や法律について知識を深めてみましょう。

小学館アーカイブス(写楽ブックス) 「日本国憲法」

昭和22年5月3日に施行された日本国憲法の原典を、大きな活字と29点の写真とともに「読みやすく楽しく手に取れるように」と企画・発行された軽装版。
戦争の放棄を明記した世界に誇る平和憲法として知られる、その誇るべき条文も含めて、日本の憲法について考えるための基本の書です。

小学館新書 「知らぬは恥だが役に立つ法律知識」

2017年、民法と刑法が大幅に改正されました。その重要な部分を紹介しながら、テレビでもおなじみの萩谷麻衣子弁護士が丁寧に解説。労働法に関する「未払い残業代」問題などはもちろん、消費者金融などへの「過払い金」返還、離婚費用や就学援助や生活保護など、身近な「法律」について指南しています。

 

労働三権や労働法が存在する意味を親子でよく話し合い、法律への興味や、就労・労働に関する権利についての理解を深めましょう。

構成・文/HugKum編集部

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