本のプロに聞いた【新・小学一年生が読むべき本】 新たな門出にこの本を贈ろう

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新・小学一年生には新たな出会いがいっぱい! 新しいお友だちと知り合ったり、知らなかったことや気になることなどあらゆるものを発見したり、視界がぐっと広がる刺激的な毎日が待ち受けていることでしょう。
この時期の「本」との出会いもまた、かけがえのないもののひとつ。
今回は、幼少期からずっと本に触れてきた「本のプロ」たちに、新・小学一年生にぜひ読んでほしいおすすめの作品を聞いてみました。

5人の「本のプロ」がおすすめ本をご紹介

今回、おすすめの本を紹介してくれるのは、絵本作家さん、児童書専門の店長さん、教育学博士、書評家さん、『小学一年生』編集長、とさまざまな角度から本に携わる5人の「本のプロ」たち。

小学校低学年での読書が貴重な経験に

5人にとっても、小学校低学年でたくさんの本に触れたことは貴重な経験でした。物語を読む力や、感情を表現するボキャブラリーが身についたり、この時期に本を読む楽しさを知ったことが現在のお仕事に繋がる原体験となっていたり。
そんな5人がそれぞれの視点でより抜く作品たち。その中に、お子さんに読ませてあげたい本がきっといくつもあるはず。

絵本作家・風木一人さんがおすすめするのは「親子の会話につながる本」

『うしのもーさん』(絵・西村敏雄)や『ぬいぐるみおとまりかい』(絵・岡田千晶)をはじめ、数々の絵本を手がける絵本作家の風木一人さん。

「小学校という新たな環境でがんばってきた新一年生にこそ、絵本の読み聞かせをつうじて親子の安心の時間を過ごしてほしい」。そんな願いから、読み聞かせにぴったりで、読後の親子の会話にもつながるおすすめ絵本を教えてくださいました。

『えらぶえほん』

絵:ニック・シャラット 文:ピッパ・グッドハート 訳:聞かせ屋。けいたろう/講談社

 

「わたしたちは毎日大小さまざまな選択をしながら生きています。うれしい選択もつらい選択もありますが、問題は多くの選択はやり直せないことでしょう。
でも、この絵本の中ではやり直せるのです。たくさんの選択肢を何度でも選べます。やっぱりこっち!というのは自由。じぶんで自由に選べるうれしさを、お子さんといっしょに確かめ合ってくださいね」(風木さん)

『よっ、おとこまえ!』

作:いがらしあつし/絵本塾出版

 

「“おとこまえ”って何? と訊かれそうですね。子どもは聞きなじみのないことばに敏感です。だから作家はわざと子どもたちが知らなそうなことばを使ってみたりするのです。
とうもろこしの3人組が『美味しく食べてもらおう!』とがんばるお話なのですが、『美味しくなる』や『かっこよくなる』ではなく『おとこまえになる』と表現したのが独創的。
威勢のいい3人組の活躍に、親子そろってますますとうもろこしが好きになってしまいます」(風木さん)

『とんでいく』

作:風木一人 絵:岡崎立/福音館書店

 

「子どもたちに読み聞かせると『あっ』と声があがる一冊。1枚のシルエットが2種類の鳥に見える『だまし絵』を使っているのです。
左から読むとタカのお話。右から読むとガンの子のお話に。話が切り替わるとき、タカだとばかり思っていた形がふっとガンの子に見えてきて、視界がくるんと回るような驚きがあります。当たり前に思えることも本当は当たり前ではなく、視点を変えるとまるで違う面が見えてくる。そういう面白さも読書の醍醐味です」(風木さん)

風木一人さん プロフィール

絵本作家・翻訳家。主な著書に『とりがいるよ』(KADOKAWA)、『ニワトリぐんだん』(絵本塾出版)、『ながいながいへびのはなし』(小峰書店)など、主な訳書に『かべのむこうになにがある?』(BL出版)、『こくばんくまさん つきへいく』(ほるぷ出版)などがある。ウェブマガジン「ホテル暴風雨」(https://hotel-bfu.com/)、オンラインストア「心しか泊まれないホテルの想い出」(https://hotel-bfu.stores.jp/)運営中。

児童書専門の店長・茅野由紀さんがおすすめするのは「その子の個性に合った本」

茅野由紀さんは、神保町(東京都)の子どもの本専門店&カフェ「ブックハウスカフェ」の店長さん。「子どもにぴったりな本の基準は『本』にあるのではなく『人』にある」と語ります。「小学生だから絵本は卒業」というイメージを持たれがちですが、絵本にも深いテーマや心理的な表現を用いたものがたくさんあるので、絵本もまだまだ楽しんでほしいし、とにかく読むことに興味がある子なら、長編や文章密度の高い本もどんどん読んでほしい! だから、「その子にぴったりな作品が見つけられるように」と、絵本から長編読み物までバリエーション豊かな作品を紹介してくださいました。

『おさるのジョージ がっこうへいく』

作:H・A・レイ、 マーグレット・レイ 訳:福本友美子/岩波書店

 

子どもたちから大人気の「おさるのジョージ」シリーズ。小学校に特別ゲストとして招待されたジョージ。絵本をめくったり、ボールをくばったり、先生のお手伝いをするためにはりきりますが……。

「可愛らしくちょっとおっちょこちょい(悪気なく)のジョージの学校でのふるまいは、失敗もしてしまいますが、愛らしい。友人でもあり弟や妹のようでもあるジョージのその姿に、子どもたちは自分自身の新生活への期待や不安を重ね、留飲を下げられるかもしれません」(茅野さん)

『ラチとらいおん』

作:マレーク・ベロニカ 訳:徳永 康元/福音館書店

 

犬をみると逃げ出すし、隣の暗い部屋にも怖くて入れない、泣き虫のラチがらいおんの力を借りて強くなる物語。

「らいおんといってもサイズは小さく、らいおんがラチの代わりに戦うわけではありません。けれども、物語を通じてまるで「お守り」のような寄り添い方で、ラチに「強くなる方法」を教えてくれます。イマジナリーフレンドとも思えるらいおんですが、とても勇気が出る物語です」(茅野さん)

『ちびっこカムのぼうけん』

作:神沢 利子 イラスト:山田 三郎/理論社

 

カムは母の病気を直すために、大男の鬼が住む火を吐く山へ出かけます。カムチャツカ半島に生きる少年・カムの冒険物語。

「しっかりした厚みがある読み物ですが、長文を読むことに慣れてきた子にはぜひ触れてみてほしい一冊です。文章は長めでも、物語は小さいお子さんたちにも読みやすいように、心を尽くして書かれています。児童文学の傑作の一つで、大好きな作品です」(茅野さん)

『ふくろうくん』

作:アーノルド・ローベル 訳:三木卓/文化出版局

 

おひとよしなふくろうくんの日常を描いたお話が5つ収録された絵本。

「挿絵もふんだんにあしらわれたほどよい長さの短編集で、絵本から読み物へと移るのにぴったりな1冊です。作者・ローベルの物語は、とにかく“発想の豊かさ”が魅力。読後、物語の続きをじぶんで作りたくなってしまうくらい!
既存のルールにとらわれず、自由な想像から生まれるのは上等なユーモア。じっくり読んだ後に心に残るのは、実に公正な物語の世界。子どもに届けたい『物語の見本』のような作品です」(茅野さん)

茅野由紀さん プロフィール

絵本専門店で絵本と児童文学まみれになって約15年。現在は子どもの本専門店ブックハウスカフェ(東京都千代田区)の店長で二児の母。赤ちゃんから大人まで安心してゆっくりと過ごせる書店を目指す。
子どもの本専門店&カフェ BOOK HOUSE CAFE(https://www.bookhousecafe.jp/)。1万冊もの絵本や児童書が並ぶ店内はバーやカフェスペースも併設。店内に二つあるギャラリーでは2~3週間に一度入れ替えをしながら絵本の原画展を開催。店内のあらゆるスペースを使用し、絵本関連のイベントも行われる。

教育学博士・渡辺弥生先生がおすすめするのは「生きる力を育む本

教育学博士・渡辺弥生先生のおすすめは「生きる力を育む本」。物語から得られる「生きる上での楽しさ」や「想像する楽しさ」は、外に向けて世界を広げる糸口にもなるはず。本には、そのような人生に活かせるヒントがたくさんつまっていますよね。なかでも、渡辺先生が今回挙げてくださったのは、自分の気持ちの表現や相手の気持ちの理解にも役立つ、感情にかんするボキャブラリーが豊富なこちらの3冊です。

『よみきかせえほん イソップ童話』

監修:渡辺 弥生/成美堂出版

 

大人にとっても親しみ深い「イソップ童話」には、教訓や生きていくための知恵が満載。読みおわった後は「どんなことを思った?」「自分の生活にどう活かせる?」などなど、親子で語り合いたくなる一冊です。

「感情描写のバリエーションが多く、気持ちを表現する語彙にもたくさん触れられます。登場するキャラクターは主に動物たちで、一篇一篇もほどよく短いため、進学したばかりの新1年生にも親しみやすいはず」(渡辺先生)

『うごいちゃだめ!』

作:エリカ・シルヴァマン イラスト:S.D. シンドラー 訳:せな あいこ/アスラン書房

 

泳ぎでも飛ぶことでも、なんでもがちょうに負けてしまうあひるが「うごいちゃだめ」の競争をはじめるお話。はちやうさぎが来ても、じっとがまんする2羽の間にキツネが現われて……。

「小学校に入り立てでまだまだお友だちとのトラブルも少なくない時期、子ども同士で張り合ったり、競争し合うこともあるかもしれません。 本作は、競争心が大きくなっていくプロセスや、張り合いすぎるとどんなことが起きるのかをコミカルに描きます。『本当に勝ったのは誰?」と親子でじっくり話し合うことで、友情への理解が深まります」(渡辺先生)

『にじいろのさかな』

作:マーカス・フィスター 訳:谷川俊太郎/講談社

 

にじいろにかがやくうろこをもった、世界でいちばん美しく、けれどもひとりぼっちでさみしいさかなのお話です。

「小学校低学年のころは明るく素直な一方で、相手の気持ちを考えずにいばったりいじわるしたりしがち。この物語が、自分の中のそんな気持ちに向き合い、親子でいっしょに考えるきっかけになるはず。“内省”という行為をはじめは難しく感じても、きれいな絵を眺めながら繰り返し読むうちに、いつしか理解できるでしょう」(渡辺先生)

渡辺弥生さん プロフィール

教育学博士。法政大学文学部心理学科教授。法政大学大学院ライフスキル教育研究所所長。筑波大学、静岡大学を経て、現職。途中、ハーバード大学、カリフォルニア大学、客員研究員。専門は発達心理学、発達臨床心理学。『子どもの10歳の壁とは何か?乗り越えられる発達心理学』(光文社)『絵本で育てるソーシャルスキル』(明治図書)など著書多数。

 

愛され続ける名作絵本16選|わが子にも読み聞かせたいロングセラーを厳選
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書評家・三宅香帆さんがおすすめするのは「本を読む楽しさを教えてくれる本」

書評家・文筆家で、『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』などの著書がある三宅香帆さん。子どものころにさまざまな絵本や児童文学に触れたことが、大人になった今でも大好きな読書の原体験となっているそうです。「小さいころは、なにを読むかよりも、本を読むのはたのしいことだ、物語の世界は面白いものだ、と感じることが大切」と、「本を読む楽しさを教えてくれる」3冊を紹介してくださいます。

『まほう小学校のまじょ子』

作:藤真知子 絵:ゆーち みえこ/ポプラ社

 

まほうが大好きなコノミちゃんは、パソコンの中から話しかける「まじょ子ちゃん」に誘われて、いっしょに「まほう小学校」へ! じゅもんはアイウエオに、にじいろピアノ。こうさくは、まほうの馬車に、どくリンゴ。

「とにかく、同年代の女の子が冒険して活躍するのがとっても楽しい!  小学校入学前まで親しんできた絵本より、文章量も多くお話自体も少し長めですが、長いお話の面白さを教えてくれる一冊になるはず」(三宅さん)

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『おどる12人のおひめさま』

グリム童話 絵:エロール・ル・カイン 訳:矢川澄子/ほるぷ出版

 

12人の美しいお姫さまのくつが、朝になるといつもぼろぼろになっています。それを不思議に思った王様が「この謎を解いた者に国をつがせる」とおふれを出すと、一人の貧しい兵士が挑戦に名のり出ました。真夜中に、お姫様たちの後をつけてみると……。
“イメージの魔術師”と呼ばれる絵本作家エロール・ル・カインがグリム童話を豪華な絵とともによみがえらせた作品。

「グリム童話はどれを読んでも面白いけれど、絵もきれいで、『本を読むのってうっとりできる世界に入り込めるんだ』と伝えてくれる一冊です。まずは『本はきれいで楽しいもの』と感じてもらえればうれしいです」(三宅さん)

『あらしのよるに』

作:きむらゆういち 絵:あべ弘士/講談社

 

あらしのよるに、ヤギのメイが出会ったのはオオカミのガブ。お互いが本来「食べる側」と「食べられる側」とは知らないまま、友だちになって……。

「読んでるうちにどきどきしてきて、『続きが気になる』という体験ができる本。最後は切なく『絵本で真剣になることができるんだ』と知ることができる読書体験をぜひ」(三宅さん)

三宅香帆さん プロフィール

文筆家/書評家。著作に『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』『副作用あります!?人生おたすけ処方本』『妄想とツッコミで読む万葉集』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』など。

 

『小学一年生』編集長・長竹俊治さんがおすすめするのは「ゆたかな疑似体験を得られる本」

小学一年生の子どもたちを対象に「未来をつくる“好き”を育む」月刊誌、小学館の『小学一年生』。その編集長・長竹俊治さんがおすすめするのは「ゆたかな疑似体験を得られる本」。
「どこにいても、その場で動かなくても、想像の冒険へ旅立つことができるのが読書です。そして、その体験はきっと子どもたちの成長につながるもの」。そう考える長竹編集長おすすめの、お家にいてもまたとない素敵な疑似体験ができる作品。それが以下の4作です。

『モモ』

作:ミヒャエル・エンデ 訳:大島 かおり/岩波文庫

 

町はずれの円形劇場跡に暮らす無口な少女モモ。ある日から、街の人々は時間に追われて、生活に余裕が持てなくなってしまいます。人間たちから時間を奪っているのは、実は「時間どろぼう」で……。

「モモと時間どろぼうとの攻防に手に汗握る冒険ストーリーでありながら、人生何が大切なのかを考えさせられる本です。大きな変革期を迎える今の時代、大人もぜひ読み返したい一冊」(長竹さん)

『おふとんさん』

作:コンドウアキ/小学館

 

リラックマの原作者・コンドウアキさんによる布団をモチーフにしたキャラクター「おふとんさん」の絵本。

「愛らしく、思わず笑ってしまうのに、切ないという、コンドウさんでないと醸し出せない独特の感覚を味わえます。全てを受け入れてくれるおばあちゃんのような絶対的な優しい存在、おふとんさんは今の時代に欠かせないキャラです」(長竹さん)

『おしいれのぼうけん』

作: ふるた たるひ・たばた せいいち/童心社

 

保育園の真っ暗なおしいれの中で繰り広げられる冒険ストーリー。

「子どもの頃、押し入れや屋根裏の先に、信じられないような異世界が広がるのを妄想したことがありませんか? 本作は、そんな子ども心をくすぐるストーリーを鉛筆書きの迫力の画で描く冒険劇。年長さんから小一ぐらいのとき、これを読んで押し入れ冒険ごっこに勤しみました(笑)」(長竹さん)

『プログラムすごろく アベベのぼうけん』

作:佐藤雅彦・石澤太祥・貝塚智子 絵:ダイスケ・ホンゴリアン/小学館

 

主人公・ドドジ王国の王子「アベベ」は、立派な王になるため、に父の残したプログラムに挑戦する旅に出ています。プログラムをよ〜く読み解き、すごろくのようなマスの上を旅するアベベを動かしていくと、そこには驚きの物語が現れて……。

「すごろく的な遊びを楽しみながら、「変数」、「順次処理」、「条件分岐」などのプログラミング的思考が身につく絵本。独特の世界観、個性的なキャラクター、色数を絞ったビジュアルデザインとシンプルに面白い絵本として楽しめます。遊んで楽しんで頭が良くなっちゃう最高の一冊です」(長竹さん)

長竹俊治さん プロフィール

1994年、小学館入社。女性ファッション誌や児童学習雑誌の編集に携わり、2018年より雑誌『小学一年生』編集部にて編集長を務める。
『小学一年生』公式ページ https://sho.jp/sho1/

その子が夢中になる本が、その子にとって最良の本

5人の「本のプロ」たちが、それぞれの視点からおすすめする作品の数々。どの作品にもちがった魅力があって、ついつい目移りしてしまいますね。

「ページを開いて、その子が夢中になる本が、その子にとって最良の本」と『小学一年生』の長竹編集長が語るように、本の楽しみ方や、本から得る栄養も、お子さんによってそれぞれ異なります。お子さんがどんな本に興味があるのか模索しながら、本に触れる機会をたくさんつくってあげてくださいね。

構成・文/羽吹理美

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