「幼児教育・保育の無償化」条件を分かりやすく。申請・手続き方法をチェック

2019年10月からスタートした「幼児教育・保育の無償化」。子育て世代の負担を軽くするための政策ですが、無償になる条件や施設の種類、申請方法など、分かりにくい部分がたくさんあります。保育無償化の仕組みと、具体的な手続き方法を解説します。

幼児教育・保育の無償化って?

幼児教育・保育の無償化」は、幼児教育や保育にかかる費用の一部を、保護者に代わって国が負担する制度です。無料の範囲と政府が無償化を決めた背景について、詳しく見ていきましょう。

保育所の利用料が無料となる制度

無償化の適用範囲は、幼稚園や保育所の「利用料」です。利用料が高額な認可外保育所や、ベビーシッターなどのサービスについては補助金が支給されます。

日本中の子どもの幼稚園代・保育所代を負担するとなれば、国にとっても大きな出費です。保育無償化を決めた目的はどこにあるのでしょうか。

無償化の背景や目的とは?

幼児教育・保育の無償化」の主な目的は、少子高齢化対策です。幼児期の教育は、人格形成の基礎を作る上で大切な役割を担っています。

しかし、授業料がかからない小中学校に比べて、幼稚園や保育所の利用料は高く、親にとっては大きな負担です。子どもがたくさん欲しいと思っていても、教育費や保育費が気になって、産むことを諦めてしまう人も少なくありません。

家庭の経済状況にかかわらず、質の高い幼児教育を受ける機会を保証すると同時に、育児への経済的な負担感をやわらげ、子どもを産みやすい環境を整えるために、幼児教育や保育の費用を国が出すことになったのです。財源には、2019年10月に引き上げられた「消費税の増収分」も充てられています。保育無償化には、増税によって負担が大きくなる子育て世帯の理解を得る狙いもあるのです。

出典:幼児教育・保育の無償化のこと | 政府広報オンライン
出典:幼児教育・保育の無償化について

全員じゃない?保育無償化の条件

保育無償化の対象は、未就学児全員ではありません。親の所得にかかわらず「3~5歳の子どもは全員が無償化の対象」です。しかし、それ以下の年齢となると、親の所得によっては無償化の対象とならない子どももいます。

また、無償化を適用してもらうためには「個別に申請しなければならない施設」もあるなど注意が必要です。無償化の条件について、具体的に見ていきましょう。

0~2歳の子どもは住民税非課税世帯のみ

0~2歳の子ども」は「住民税非課税世帯のみ」が無償化の対象となります。非課税になるのは以下のケースに当てはまる世帯です。

・入園する年の1月1日時点で生活保護を受けている
・世帯主が未成年、障がい者、寡婦・寡夫で、前年の合計所得が135万円以下(令和3年度から)
・合計所得金額が35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+1)+31万円以下(令和3年度から)

「寡婦(夫)」とは「婚姻歴のあるひとり親」のことを指します。しかし、令和3年度から「ひとり親家庭への寡婦(夫)控除みなし適用」が開始されたことにより、これまで対象とされていなかったひとり親に対しても対応範囲が広がっています。

また「同一生計配偶者」とは「納税義務者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等に該当するものを除く)で、合計所得金額が48万円(給与収入のみで103万円)以下」の人です。

例えば、納税義務者が夫・同一生計配偶者が妻・扶養親族が子ども1人の場合は、世帯の合計所得が「35万円×3+31万円以下」で非課税となります。

出典:幼児教育・保育の無償化について|内閣府
出典:個人住民税が非課税になるかた|武蔵野市公式ホームページ
出典:結婚歴のないひとり親家庭への寡婦(夫)控除みなし適用について – 神奈川県ホームページ

施設によっては利用に認定の取得が必要

基本的に幼稚園や保育所を利用する人は「保育を必要とする事由」に応じて、住んでいる自治体から認定を受けることになっています。認定区分と利用できる施設は以下の通りです。

・1号認定(3歳以上):幼稚園・認定こども園
・2号認定(3歳以上):保育所・認定こども園
・3号認定(0~2歳):保育所・認定こども園・地域型保育等

「認定こども園」は、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ施設です。保育所や認定こども園を利用したい人は、市区町村から保育の必要性を認めてもらい、2号または3号認定を取得する必要があります。

認可外の保育施設や幼稚園の預かり保育、その他保育事業の利用料についても、保育の必要性の認定(2号または3号認定)がないと無償化になりません。保育の必要性については、親の就労以外にも、保護者の疾病や障害、同居親族の介護をはじめさまざまな事由が定められています。自分が該当するのか分からない人は、自治体の担当部署に問い合わせてみましょう。

出典:よくわかる「子ども・子育て支援新制度」: 子ども・子育て本部 – 内閣府

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幼児教育・保育の無償化の対象施設

保育無償化は幼稚園・保育所のほか、さまざまな保育施設や保育に関する事業に適用されます。対象範囲を正しく知り、有効に活用しましょう。

幼稚園・保育所

幼稚園・認可保育所・認定こども園は、それぞれ目的や管轄する省庁は異なるものの、未就学児の基礎教育や保育を担う機関として、無償化の対象となっています。

ただし幼稚園の中には、無償化に伴う新制度に移行していない園もあります。その場合、3歳を超えていても利用料のうち月額最大2万5700円が無償という扱いです。減額を受けるためには、園を通して必要書類を提出しなければなりません。また、保育所の延長保育料も、無償化の対象外です。

認可外保育施設

認可外保育施設は、保育の必要性の認定を受けているにもかかわらず、認可保育所や認定こども園に入れなかった子どもが利用する場合、無償化の対象となります。ただし全額ではない点は注意しましょう。

3~5歳児クラス:月額3万7000円まで無償
0~2歳児クラス:住民税非課税世帯に限り、月額4万2000円まで無償

認可保育所と異なり、自治体への申請を自分でしないと適用されないので注意しましょう。

一時預かり事業

一時預かり事業とは、幼稚園・認定こども園の「預かり保育」や、特別な事情があって利用する一時的な保育サービスを指します。

・保育の必要性の認定を受けている3~5歳の子どもが預かり保育を利用する場合、月額最大1万1300円が無償となります。

・住民税非課税世帯の子どもは、満3歳になった日から最初の3月31日までの間、月額最大1万6300円までが無償です。

その他の一時的な保育サービスには、ファミリーサポートセンター、ベビーシッター、保育園の1日保育などがあります。保育の必要性の認定を受けていれば無償化が適用されるので、あらかじめ自治体に問い合わせておくとよいでしょう。

その他の施設

3~5歳までの障害児が、発達支援施設に通ったり、自宅で支援を受けたりするときの利用料も、無償化の対象です。幼稚園・保育所・認定こども園を併用する場合は、両方とも対象となります。企業が事業所内に設置した保育施設や、各自治体が運営する地域型の保育事業、病児保育についても3~5歳であれば無償化の対象となります。

適用してもらうためには認可外保育所と同様、自治体への申請手続きが必要です。

出典:幼児教育・保育の無償化|内閣府

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ここをチェック!対象外の費用

「幼児教育・保育の無償化」制度の対象になるのは、施設やサービスの利用料金だけです。その他の費用は、基本的に保護者負担となります。何にどのくらいかかるのかを、しっかりとチェックしておきましょう。

通園送迎費・延長保育

幼稚園の送迎バス費用や入園料、保育園の延長保育料は無償化の対象外です。入園料は園によって異なるので、事前に問い合わせましょう。

送迎バス代は地域や園により差はありますが、月に3000~4000円ほどが相場です。徒歩や自転車で送迎できる幼稚園を選べば、バス代を節約できるでしょう。

延長保育料は残業で帰りが遅くなるときなど、保育園で保育標準時間を超えて子どもを預かってもらうときに発生する費用です。価格だけでなく、延長時間の単位も30分や1時間など施設や自治体によって異なります。

利用する際は「何時から」延長保育料がかかり、「何分単位」でカウントされるのかを必ず確認しましょう。

出典:保育必要量について|越前市
出典:保育時間(保育標準時間・短時間について)|大田区

ご飯・おやつなどの給食費

園で食べる「給食費(昼食代とおやつ代)」は、無償化の対象外です。ただし、以下の条件に合う場合は保育園の副食費(おやつ代)が免除されます。

・生活保護世帯
・年収360万円未満の世帯
・全世帯の第3子以降の子ども

また、ひとり親世帯や住民税非課税世帯など、要件を満たせば給食費が「全額免除」となる自治体もあります。

出典:食材料費の取り扱いについて
出典:幼児教育・保育の無償化に伴う給食費について|東大和市

園服・日用品・行事費

園服や体操服、バッグなどの通園用品、文房具類、遠足などの行事費用は、すべて保護者の実費負担です。特に負担が大きいのが、園服です。

夏服と冬服それぞれに加えて洗い替えのシャツなどを購入すると、それなりの出費が予想されます。サイズが合わなくなったり、破れたりして途中で買い替えることも珍しくありません。バザーやお下がりなどを活用して、賢く節約しましょう。

行事費用は年に数回、それぞれ数百円から数千円程度かかります。子どもの思い出作りにも役立つ出費ですから、無理に節約しようとする必要はないでしょう。

出典:保育所等における幼児教育・保育の無償化について|江東区

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幼児教育・保育の無償化の手続き方法

保育無償化制度を適用してもらうためには、手続きが必要なケースと不要なケースがあります。手続きを忘れて無償化されないのは残念ですから、しっかりと覚えておきましょう。

園経由で市町村に申請

幼稚園の預かり保育や認可外保育所、自宅での保育等は、自治体から保育の必要性の認定を受けていない人でも、自分でお金を払えば利用できます。

そのため、2号・3号認定を取得している人が無料で利用したいときは、別途無償化の申請をしなくてはなりません。

預かり保育の場合は、園から配布された書類に、必要事項を記入して園経由で申請します。認可外保育所などを利用する人は、施設や事業者が発行する領収証を添えて、市町村に請求手続きを行います。

出典:認可外保育施設に関する住民・事業者向け説明資料

手続きが不要な施設もある

自治体から1号・2号・3号の認定を受けて利用する下記の施設については、無償化申請の手続きは不要です。

・新制度に移行済の幼稚園
・認可保育所
・認定こども園
・地域型保育施設

上記以外の施設やサービスでは、保育の必要性の認定取得と、申請手続きが必要と覚えておきましょう。

幼児教育・保育無償化の気になる疑問Q&A

幼児教育・保育無償化制度の開始により、ほとんどの幼稚園や保育所、保育サービスを無料または安い料金で利用できるようになりました。

ただし、子どもの教育方針は人それぞれですし、通勤などの事情で自宅から離れた場所に預けたい人もいます。第2子以降はどうなるのかなど、気になることはまだまだ多いでしょう。

保育無償化を利用するにあたって、よくある疑問を見ていきましょう。

対象外の施設はある?

幼児教育や保育を行っている施設やサービスであっても、下記のものは無償化が適用されません。

・英会話教室などの習い事
・認可外保育の届け出がされていない個人や団体による保育
・外国人学校
・インターナショナルスクール

外国人が通う学校やインターナショナルスクールは、「学校教育法第134条」の「各種学校」に該当します。各種学校は幼児教育の質が国の基準と異なり、保育施設ともいえないことから、無償化の対象から外れているのです。

ただし、幼稚園や認可外保育施設として届け出があるインターナショナルスクールは、対象となるケースがあります。

幼稚園の代わりに、子どもをインターナショナルスクールの幼児クラスに通わせる場合は、無償化の対象かどうかをしっかりチェックしましょう。

出典:幼児教育・保育の無償化に関する自治体向けFAQ
出典:11.学齢児童生徒をいわゆるインターナショナルスクールに通わせた場合の就学義務について:文部科学省

住居と保育所の市町村が異なる場合は?

自宅と違う自治体にある施設・サービスを利用しても、制度はきちんと適用されます。子どもを会社の近くの保育所に預けたいときや、隣町の幼稚園に入れたいときも、特に問題はありません。

保育の必要性の認定取得や無償化申請の手続きは、自宅のある自治体で行うということだけ覚えておきましょう。

出典:幼児教育・保育の無償化に関する自治体向けFAQ
出典:幼児教育・保育無償化について/三郷市公式サイト

2人目以降も無償化になる?

3歳を過ぎた子どもなら、何人目であっても5歳までは無償化が適用されます。では、2人目以降で、0~2歳の子どもの場合はどうでしょうか。

保育無償化以前は、きょうだいで保育所を利用した場合、「第2子は半額・第3子以降は無料」となる制度が設けられていました。この制度自体は、現在も引き継がれています。

第1子が5歳・第2子が2歳・第3子が0歳と仮定すると、5歳児は無料・2歳児は半額・0歳児は無料となり、3人同時に預けても1人分の半額のみの負担で済むのです。

さらに、年収360万円未満の世帯や住民税非課税世帯には、副食費の免除など別途負担が大きくならないような措置が取られています。

人数のカウント方法やきょうだいが多い家庭への対応は、自治体によって変わることもあります。0~2歳の第2子、第3子の保育料については個別に問い合わせるのが確実です。

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幼児教育・保育の無償化は、子育て世代にとっては大変助かる制度といえます。ただし、0~2歳児は基本的に対象外です。育児休暇を終えて復職する際には、1~2年間は通常の保育料がかかると思ってよいでしょう。

3歳以降も、給食費や園服代などの実費が必要だったり、施設によっては申請しないと無料にならなかったりするなど、意外にお金や手間がかかります。何もかもが無料になるわけではありませんので、自治体の説明をしっかりと読んで対応し、職場復帰や保育開始に備えましょう。

文・構成/HugKum編集部

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