幼児教育無償化の後でも完全に無料ではない? 公立と私立の幼稚園にかかる年間の費用

近いうちに幼稚園に通うことになるお子さんがいるご家庭では、幼稚園にどういった費用がかかるのか気になると思います。そこで今回は幼稚園の費用についてまとめてみました。

幼稚園にかかる費用はいくら?

幼稚園の費用と聞いて、真っ先に思い浮かべるお金は授業料だと思います。しかし一方で、幼児教育・保育の無償化という言葉を耳にした経験もあるはず。本当に幼稚園の授業料は無料になっているのでしょうか?

幼稚園とは?

幼稚園の授業料が本当に0円になっているかを知る前に、そもそも幼稚園とは何なのかを、整理しておいた方がいいかもしれません。文部科学省の情報から引用すると幼稚園は、

<小学校や中学校と同じ「学校」>(文部科学省のホームページより引用)

です。保育所はあくまでも保育施設ですが、幼稚園は学校として子どもに教育を行うのですね。ただ、教育と言っても座学中心ではなく、遊び中心の学びが主体になります。遊びを学びと考える意味で、保育所も一緒です。

公立(国立)と私立の違い

幼稚園には、私立と公立(国立)の違いがあります。文部科学省の学校基本調査(令和元年度)によれば、全国に幼稚園は9,697校あります。

都道府県によって私立幼稚園が多い地域、公立幼稚園が多い地域と分かれていますが、全国的に見れば私立幼稚園のほうが多く、公立校は3,226校、私立が6,302校、国立が49校になっています。

どれも運営主体(編成方式)が異なり、国立の幼稚園とは基本的に国立大学の付属幼稚園になります。「国立の幼稚園なんてあるの?」と驚く人もいるかもしれませんね。

関東の一都三県で言えば、埼玉大学教育学部付属の幼稚園、千大学教育学部付属の幼稚園、お茶の水女子大学附属の幼稚園、東京学芸大学付属の幼稚園、横浜国立大学教育学部付属の幼稚園。

関西の二府二県で言えば、京都教育大学付属の幼稚園、大阪教育大学付属の幼稚園、神戸大学付属の幼稚園、兵庫教育大学付属の幼稚園、奈良女子大学付属の幼稚園、奈良教育大学付属の幼稚園などが国立の幼稚園になります。

公立・私立幼稚園の費用と内訳

幼稚園には公立、私立、国立があると分かりました。この国公立と私立の違いによっては、高校や大学では授業料が全く違ってきます。幼稚園の場合は、どうなのでしょう?

結論から言えば、現在は幼児教育・保育の無償化が行われているため、幼稚園の編成体制に関係なく、一部のケースを除いて無料です(一部のケースは後述)。ただし、授業料が無料化されているからと言って、本当に0円で子どもを幼稚園に通わせられるわけではありません。

そもそも幼稚園にわが子を通わせる際の費用は主に、

  • 学校教育費
  • 学校給食費

 

に分けられます。授業料はこの「学校教育費」の一部に過ぎません。授業料が無償化されたからといって、他の学校教育費や学校給食費は無償化されていないため、毎月幼稚園に支払うお金はあるのですね。

公立幼稚園にかかる費用と内訳

先ほど見た学校教育費とは、細かく言うと以下のように分類が可能です。

  1. 授業料
  2. 修学旅行・遠足・見学費
  3. 学校納付金(入学金、検定料、私立学校における施設整備資金、学級費、PTA 会費など)
  4. 図書・学用品・実習教材費など(授業のために購入した図書、文房具類、体育用品及び実験・実習のための材料等の購入費)
  5. 教科外活動(クラブ活動,学芸会・運動会・芸術鑑賞会,臨海・林間学校等のために家計が支出した経費)
  6. 通学関係費(通学のための交通費、制服及びランドセル等の通学用品の購入費)

 

この中で無償化される部分は、授業料だけ。この中で授業料がどのくらいのボリュームを占めるのかについては、文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査」に詳しいです。同調査によると、公立の幼稚園の場合、学校教育費は年間平均12万1千円。そのうち授業料が66,206円だとされています。

プラスして学校給食費も、公立の場合は全国平均で1万9千円掛かっています。よって、学校教育費(授業料を除く)と学校給食費を足すと、無償化後も8万円ほどは用意する必要があるのですね。

私立幼稚園にかかる費用と内訳

私立幼稚園の場合は、さらに注意が必要です。もともと私立幼稚園は、公立の幼稚園と比べて授業料が高い傾向がありました。文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査」によれば、学校教育費は平均33万1千円発生していました。このうち、無償化の対象になる部分は、授業料に相当する部分(21万1千円ほど)です。

さらに私立幼稚園は公立と比べて給食費も高く、年間で3万1千円ほど発生しています。学校教育費(授業料を除く)と学校給食費を足すと、15万円ほどです。

しかも、一部の私立幼稚園の場合は、授業料を独自に決めているため、無償化の上限と言われる月額 25,700 円を超える授業料がある園では、その差額分を保護者が負担する必要があります。

以上を踏まえると、年間で15万円以上のお金を用意する必要があるのですね(入園料は月割にした額が無償化の対象になります)。

私立と公立では倍の差になる

公立の幼稚園は無償化後8万円、私立の幼稚園は無償化後15万円+園によっては授業料の差額分ですから、全国平均で見ると、年間の費用に倍近くの差があると分かります。

さらに一部の私立幼稚園では、教育環境の向上を理由にして、無償化のタイミングで独自に定める授業料の額をさらにアップさせるケースが目立ち、新聞に報じられていました。私立幼稚園と公立幼稚園の年間費用の違いは、これから拡大していくかもしれません。

幼稚園も無償化の対象

先ほどから幼児教育・保育の無償化という言葉を出してきましたが、そもそもこの制度はどういった制度なのでしょうか? HugKumの過去記事にも詳しいですが、あらためて整理します。

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公立も私立も幼稚園無償化の対象

そもそも幼児教育・保育の無償化は、

<幼児教育の重要性に鑑み、すべての子供に質の高い幼児教育を保障することを目指すもの>(関係閣僚・与党実務者連絡会議の資料より引用)

として2019年にスタートしました。幼稚園、保育所、認定こども園などに子どもを通わせる保護者の経済的な負担を減らすために、授業料が無料になりました。

気になる無償化の対象施設の範囲ですが、企業主導型保育所、幼稚園の預かり保育、認可外保育施設(一般的な認可外保育施設、地方自治体独自の認証保育施設、ベビーシッター、認可外の事業所内保育など)、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業も含まれます(※それぞれ無償化の金額は異なる)。

減額される費用と実質かかる費用

幼児教育・保育の無償化の対象になる部分は、あくまでも授業料です。給食費や通園送迎費、制服代、図書費、行事費などは無償化の対象になりません。プラスして私立幼稚園の場合、月額授業料が25,700円を超える場合は、差額分をパパやママなど保護者が負担する必要があります。

手続きや申請方法

幼児教育・保育の無償化について、一部の場所を除いて原則的に保護者の特別な手続きは必要ありません。ただ、幼稚園の中には、子ども・子育て支援新制度に移行していない幼稚園もあります。

子ども・子育て支援新制度に移行した幼稚園とそうでない幼稚園は、前者が多いものの現状で半々くらい存在しています。移行した幼稚園の授業料(保育料)は、世帯の課税額に応じて変わります。移行していない幼稚園は、各幼稚園が独自に定めた授業料(保育料)が設定されています。

移行していない幼稚園の場合は、通園する幼稚園から申請書類を受け取って、幼稚園を経由し市区町村に無償化の申請をする必要があります。

私立幼稚園等の補助金制度

幼児教育・保育の無償化の取り組み以外にも、各自治体において私立幼稚園の補助金制度が受けられる場合があります。独自に授業料を設定している園に子どもを通わせる場合、上限額を超えて授業料(保育料)を支払う必要が出てくるケースも少なくありません。

そういったパパ・ママなど保護者をサポートする目的で、例えば東京都品川区では、補助制度があります。私立の幼稚園にわが子を入れる保護者に対して、入園料を上限10万円、授業料を保護者の納税額に応じ月額3,600~13,200円補助しています。この補助金で、無償化の上限を超えてくる差額を支払うという考え方ですね。

手続きは、例えば品川区の場合、補助金申請書兼請求書、所得確認書類(必要に応じて)を区の担当課に提出する仕組みになっています。それぞれの住まいの自治体で確認してください。

保育園と幼稚園の費用の差はどれくらい?

ここまで幼稚園の費用をまとめてきました。では、保育所にわが子を通わせる場合と、どちらが経済的に軽く済むのでしょうか。

公立幼稚園と保育園は一律、私立幼稚園でも一部は所得などから計算

まず、公立・私立の一部の幼稚園と、公立・私立の認可保育所は、現在無条件に無償化されています。私立の幼稚園の中でも、子ども・子育て支援新制度に移行していない園の場合は、上限25,700円までが無償化されます。認可外の保育所については、私立の幼稚園ににていて、完全無償化ではなく、月額37,000円までを上限に無償化されます。

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保育無償化により金額差はそれほど変わらない

結論として、公立・私立の一部の幼稚園と、公立・私立の認可保育所に通わせる限りは、費用に差はほとんどありません。

ただ、独自に授業料を設定している私立の幼稚園に通わせる場合、さらに認可外保育所に通わせる場合は、無償化に上限がありますので、上限を超える支払いが必要な場所に通わせると、経済的負担も大きくなる可能性があります(自治体による特別な補助金が用意されているケースもありますが)。

認可外保育所の無償化になる上限は月額37,000円ですが、全国的に料金は平均4~5万円とされています。

幼児教育・保育の無償化のまとめ

幼児教育・保育の無償化で、一部の私立幼稚園(全国の私立幼稚園の半数くらい)と認可外保育所を除き、一般的にはどこも授業料が無償化されています。ただ、給食費や各種の教材費などは実費の負担が求められますので、結局は0円で幼稚園にわが子を通わせられるわけではないと覚えておきたいですね。

文・坂本正敬 写真・繁延あづさ

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【参考】

※ 見てみよう 教育 – 文部科学省

※ 学校基本調査 – 文部科学省

※ 幼児教育無償化における、各幼稚園の変化について

※ 値上げ不服なら「退園しても」 幼保無償化、募る不信感 – 朝日新聞

※ こんなときはどうするの? – 文部科学省

※ 「だまされた感」保護者ため息 幼保無償化で値上げ続々 – 朝日新聞

※ 幼児教育の現状 – 文部科学省

※ 幼稚園、保育所、認定こども園等の無償化について – 内閣府

※ よくわかる「子ども・子育て支援新制度」 – 内閣府

※ Q. 保育園費用が高くて、パート代が消えてしまいます!! – 全国銀行協会

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