【子育ての道を照らす佐々木正美さんの教え】新一年生になるときは家庭がくつろぎの場であることをお子さんに実感させてあげて

子どもの育ちを半世紀以上見続けてきた児童精神科医・佐々木正美先生。常にお母さん達の心に寄り添ってくださった先生がよくおっしゃっていたのは、「悩むなかで親子関係は育まれていく」ということ。先生が残された言葉から、新一年生の親御さんに向けたアドバイスをご紹介します。

学校は「学びの場」。家庭のような「生活の場」でありません。家庭がくつろぎの場であることをお子さんに実感させてあげてください。

今日は、新一年生になったお子さんを持つ保護者の方に向けて、お話をしたいと思います。

 まず、気をつけていただきたいことは、「学校」というのは「学びの場」であって、家庭のような「生活の場」ではないということです。

 たとえば、家庭的な役割が求められる保育園では、保育士さんたちは家庭的なくつろぎを作り出すために、意識的にひとりひとりと関わる努力をしています。けれども、学校はひとりの先生が集団に勉強を教える「一対多」の関わりなのです。「家庭的」であったり、「くつろぎの空間」ではありません。

 そういう意味で、入学後、子どもたちにとって家庭はこれまで以上に大切で、保護者の方たちは、「家庭らしさ」を意識して、お子さんと接してあげてほしいと思います。

 

大事にすべきは「食事」「入浴」「就寝」タイム。この時間に子どもとしっかり向き合ってください

 

大事にしていただきたいのは、食事のとき、入浴のとき、そして眠るときです。この3つの場面で子どもとしっかり関わることを心がけてほしいですね。

 

食事は、ときにはお子さんの食べたいものを聞いておき、「おまえが食べたいから今日は〇〇を作ったんだよ」などと言ってあげたらいいと思います。それが、いつも食卓にのぼるおかずで、特別なごちそうでなくても、子どもは、自分の望みを聞いてくれた、というそれだけでとてもうれしいものなのです。

 

また、入浴をするときには、スキンシップをする時間と割り切って、多少時間をかけていっしょに入ってあげてください。水遊びをしたり、湯船でゲームをしたり……。体を洗うことは多少雑になってもいいんです。楽しむことを第一にお風呂に入ってあげてください。それがいちばん大事です。

 

そして、就寝時には、お子さんが寝るまでそばにいてあげてください。子どもは大人と違って、眠るのが好きじゃない子が多いんです。子どもにとって、眠ることは不安だし、怖いし、寂しいし、つまらないもの。だから、そんなとき大好きなお父さんやお母さんがそばにいてくれたら、とても安心できる。そして、それだけで子どもは「家庭がくつろぎの場」であると実感できるんですよね。

 

この3つのシーンで、しっかり子どもと向き合っていたら、あとは多少手抜きでもいいと私は思います。「働いているから、子どもに十分な時間をかけられない」と、仕事で忙しいお母さん方は思っている方が多いですが、短い時間でも、日々この時間をお子さんと過ごすように心がけていれば、大丈夫。

 お子さんは、お母さんの愛情をしっかり感じながら家庭でくつろぐことで、パワーを蓄えて、外で頑張ることができます。

 

小学校低学年までは、子どもの朝の身じたくは、親が手伝ってあげてください。「早くしなさい!」とは決して言わないことです

 

それから、もうひとつ、これは幼稚園児や保育園児であっても大事な点ですが、お子さんが朝の身じたくをする際は、ある程度、お母さん方が手伝ってあげてほしいということです。

 とはいえ、忙しい朝は、お母さんは毎日「早くしなさい!」と子どもに言って、急かしてしまいがちですよね。けれども、それをじっとこらえて、いっしょに身じたくを手伝ってあげていただきたいのです。

 幼児期から小学校低学年ぐらいまでの子どもというのは、ちょっとおもしろい興味のあるものがあれば、そちらに注意が向いてしまうのが自然です。それをいちいち注意され叱られていたら、気持ちが沈み、学校へ行って友だちと関わる力も弱くなる可能性さえあるんですよ。

 このようにお願いすると、お母さん方からは「手伝ってばかりいては子どもに依頼心がめばえて、何もしないようになってしまうのではないか」と心配するご意見をよく頂戴しますが、それは間違いです。

 小学校低学年ぐらいまでの子どもに対しては、朝の身じたくだけでなく、宿題だってどんなに手伝ってあげても構いません。むしろ手伝ってあげた子どものほうが、やがてよくできるようになるくらいです。

子どもを「手伝う」とは、そばにいて見ていてあげること

 それに私が言う「手伝う」というのは、子どもに何もさせずにお母さんがすべてをやってあげてしまうということではないんですよ。そばにいて見てあげるということなんです。

 

お母さんは子どもに寄り添って、子どもはどこが理解できていないか確認して、それを子どもがわかるように具体的に段取りを教えてあげてほしいんです。そうすると、子どもはどうしたらいいか理解できるし、お母さんがそばにいてくれるので楽しくできる。すると、積極的にテキパキと頑張って、できるようになるんですよ。

 いちばんダメなのは、子どもに対してなにも提示せず、叱ることです。口で言うだけではなく、子どもといっしょになって態度で示し、その習慣が身につくまで付き合ってあげる。そういった姿勢が必要なのです。

 

そうして、保護者の方たちにしっかり面倒を見てもらった子どもというのは、自分に自信が持てるし、頑張る力が育まれて、自主性のある子どもに育ちます。だから、身じたくだけでなく、宿題なども親から注意されなくても自分でできるようになるんですよね。

 

〝手塩にかける〟という言葉がありますが、子育てをするときに親がすべき大事なことというのは、まさに〝子どもを手塩にかける〟ことです。

 それでなくても、入学したてのお子さんは、最初に述べたように初めての「学びの場」を体験していて、環境に慣れるまで大変なんです。これまで以上に手をかけ、面倒を見てあげてください。きっと安心して、学校で頑張れると思いますよ。

 

 

 

   

佐々木正美(ささき・まさみ)

児童精神科医。1935年生まれ。全国の保育園・幼稚園・学校・児童相談所などで勉強会、講演会を40年以上つづけた。2017年没。子どもの臨床現場に立ち会ってきた経験から著した経験から数々の育児書は、今も多くの母親達の信頼と支持を得ている。『こどもへのまなざし』(正・続・完)福音館書店、『育てたように子は育つ』(小学館文庫)、『ひとり親でも子どもは健全に育ちます』(小学館)など著書多数。

構成/山津京子   写真/繁延あづさ

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