息子がアリを踏みつぶしてしまった!「命の大切さ」をどう教える?【井桁容子先生の子育て相談】

Q : 息子は虫が好きなのですが、先日、アリを踏みつぶしていました。「かわいそうだからダメ」と𠮟ったのですが……。

A : 命の大切さは自分が愛された経験から学ぶもの

人はもちろん、動物や植物にも命があります。「もの」はこわれても直せるけれど、命はいったん失われたらとり戻すことができません。でも、生きものの世界が食物連鎖で成り立っていることも事実です。命は守るべき尊いものであると同時に、一部の動植物の命は、私たちが生きるために必要な「食べもの」でもある……。こうした矛盾を受け入れながらも命の大切さを理解するためには、子どもの「感じる力」を育てることがスタートになります。

虫なども「生きている」ことに気づかせて

大人の感覚では、「アリを踏みつぶす」という行動は残酷に思えるかもしれません。でも幼児の場合、好奇心が動機のことも多いのです。身近な大人の役割は、子どもの興味を正しい方向に導くかかわり方をすることです。

たとえば、踏まれたアリを子どもと一緒に観察し、「アリさん、動かなくなっちゃった。かわいそうだね」などと声をかけてアリにも命があることに注意を向けさせてみましょう。虫に興味がある子なら、さらに「アリさんの脚は何本ある?」などと尋ねてみてもよいかもしれません。「踏んだらどうなるだろう?」という好奇心を「知識」にかえる手助けをすることも、子どもの成長に役立つでしょう。

頭ごなしに𠮟ると、子どもはダメな理由を理解できない

避けたいのは、「そんなことをしてはダメ!」と頭ごなしに𠮟ること。子ども自身がいけない理由を実感していなければ、「𠮟られなければしても大丈夫」と思ってしまうことがあるからです。そうなると、見つからないように隠れてしたり、「していない」とウソをついたりするようになりかねません。

大人に共感してもらうことで思いやりが育つ

命の大切さを感じるためには、自分自身が愛された経験が必要です。「愛される」というのは、無条件で「あなたが好き」と言ってもらえること。「いい子だから」「○○ができたから」という条件つきの「好き」とは違います。

大人が忘れがちなのが、思いは言葉にしなければ伝わらない、ということです。これは、親子であっても同じ。どんなに愛していてもそれを表現しなければ、子どもは「愛されている」と実感することができないのです。「好き」に理由はいりません。子どもをかわいいな、と思ったら、その瞬間に「大好き!」と言葉と態度で表現してあげてください。

転んだときには「痛かったね」と共感を

また、共感を示すことも愛情を伝える方法のひとつです。子どもが転んだら、「泣かなくてえらいね」ではなく、「痛かったね」と声をかけてください。自分が思っていることを親が言ってくれた、痛かったのは自分なのに親もつらそうにしている……。子どもはこうした経験の積み重ねによって親への愛情と信頼を深めていき、「他人の身に起こったことを自分に置きかえて考える」姿勢も学びます。そして、自然に人を思いやる心が育っていくのです。こうした感じ方ができるようになると、アリを踏んでみたくなっても、「アリが痛いかもしれない」などと考えて思いとどまることができるようになります。

命の尊さは、日々の生活の中で経験を通して学んでいくものです。理屈ではなく愛される経験から、自分以外の人や生きものにも心や命がある、と子ども自身が実感することが大切です。

 

 

井桁容子先生 保育子育てアドバイザー

保育の根っこを考える会主宰。福島県いわき市生まれ。
東京家政婦大学短期大学保育科を卒業後、同大学ナースリールームに2017年3月まで勤務。
おもな著書に『ありのまま子育て―やわらか母さんでいるために』(赤ちゃんとママ社)、『保育でつむぐ 子どもと親のいい関係』(小学館)など。

 

 

イラスト/小泉直子 構成/野口久美子 出典/めばえ

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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