「ヶ」は、カタカナの「ケ」ではありません。文字ではないのです
実はこの「ヶ」は、カタカナの「ケ」ではありません。「ケ」のように書いていますが、一種の符号のようなものなのです。「ヶ」を小さく書かずに「ケ」とふつうの大きさで書くこともあるので、とてもまぎらわしいのですが。
数を数えるときに使われていた「箇」の「竹かんむり」がルーツ
昔は物を数えるとき、漢字で「箇」と書いていました。読みは、「カ」「コ」です。この「箇」という漢字の上の部分、竹かんむりの一方をとったものが「ヶ」だと考えられているのです。ただし、他の説もありまして、中国で古くから「箇」の代用として、人や物を数えるときに使っていた「个(読みはカ・コ)」という、今はもうほとんど使われなくなった漢字があったのですが、それからきているとも考えられています。
どちらにしても、「ヶ」は文字ではないので、形は「ケ」と同じでも、カと読むことができるのです。
また、「個」と書くこともありますが、これは「個」は中国では「箇」と同音・同義だからです。
公文書では、ひらがな「か」を使う
ただ現在では混乱を避けるため、もともとそう書いていた「茅ヶ崎」「龍ケ崎」のような地名以外は、たとえば国や公共団体が出す文書や法令などでは、「1か月」「6か月」のように「か月」と書くようにとされています。従って、「向こう一か月の天気予報」と書くのが無難だと思います。
記事執筆
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。