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絵本作家 エリック・カールさん永眠
『はらぺこあおむし』など数々の名作絵本を生み出し、世界中の人々から愛されてきたエリック・カールさんが、2021年5月23日、マサチューセッツ州ノーサンプトンにある自身のスタジオにて、91歳で息を引き取りました(エリック・カール公式ホームページより)。
親子二世代でエリックさんの絵本にお世話になった方も多いのではないでしょうか。今日は改めて、JPIC読書アドバイザー・児玉ひろ美さんの読み聞かせポイント共に、名作絵本の数々を振りたいと思います。
エリック・カールさんはこんな人
1919年アメリカ・ニューヨーク生まれ。グラフィックデザイナーとして活動後、1968年に発表した絵本『1,2,3 どうぶつえんへ』がボローニャ国際児童図書展でグラフィック大賞を受賞。以降、絵本作家として世界で親しまれる作品を発表している。
ニスを下塗りした薄紙に、着色した色紙を切り抜いて貼り付けるコラージュの手法が特徴。代表作に、『はらぺこあおむし』『パパ、お月さまとって!』『だんまりこおろぎ』など。2002年には、アメリカ・マサチューセッツ州に「エリック・カール絵本美術館」がオープンした。
今年は、「はらぺこあおむし」が刊行されて50年目。各地で展覧会、イベントが開かれている。
エリック・カールの世界 公式サイト
https://www.theworldofericcarle.jp/
成長を描いた内容が人気の絵本『はらぺこあおむし』
エリック・カール/作 もりひさし/訳 偕成社
◆絵本の内容
世界中で愛されている、エリック・カール氏の代表作です。たまごから生まれたての小さなあおむしは、お腹がぺっこぺこ。月曜日にリンゴを1つ、火曜日にナシを2つ。それでもまだまだぺっこぺこ。そして水曜日にはスモモを3つ、木曜日にはイチゴ4つ…。卵から生まれたちっぽけなあおむしが、もりもり食べて、さなぎから綺麗な蝶に変身するまで、作者の特徴である美しいコラージュの絵と子どもたちの大好きな穴あきの仕掛けページで楽しめます。お出かけに便利なミニサイズのボードブックを始め、ビッグブックや布絵本。そして新たに加わったポップアップブックなど、どれも大人気です。プレゼントにもお勧めの1冊。
◆読み聞かせのコツ
少し読み聞かせに慣れてきたころ、言葉や遊びの延長としての絵本から、お話を楽しむ絵本への移行にぴったり。判型が大きいので、最後まで持ち通せるように、練習をきちんとしておきましょう。食べ物の名前が連なるところは、指さしをしながら読むとよいでしょう。
◆対象年齢
2歳~
◆ママパパの口コミ
『うたが みえる きこえるよ』
エリック=カール/作 森 比左志/訳 偕成社
◆こんな本
エリック・カール独特の鮮やかなコーラジュに大人のファンも多いこの絵本。
バイオリン奏者の最初のセリフ以外に、文章は出てきません。バイオリンの曲に合わせて、空の虹や地中のしずくから色が弾けます。絵本の解釈は読み手次第。ある人は楽しいと感じるかもしれません。ある人は地球の自然の誕生をイメージしたと感じるかもしれません。読む人ひとりひとりの感じたストーリーを、心から楽しんで欲しい名作です。
◆対象年齢
3歳、4歳、5歳、6歳
◆ママパパの口コミ
『だんまり こおろぎ』
エリック・カール/作 工藤直子/訳 偕成社・ボードブック
◆こんな本
ぽかぽか暖かいある日に生まれたこおろぎ。「ころころ・りりり・・・」。大きなこおろぎのように、あいさつしようと小さな羽根をこすりますが、音が出ません。こおろぎぼうやは、次々にいろんな虫たちと出会います。ばった、かまきり、いもむし、せみ・・・みんながこおろぎぼうやにあいさつしてくれるので、こおろぎぼうやも小さな羽根をこすりますが、やっぱり音が出ません。
読んでいて子どもたちももどかしい気持ちになると思いますが、最後に驚きのしかけが待ち構えています。音がでる特別なしかけのため、少し高価な本ですが、サプライズ付きの特別な絵本として、プレゼントにも喜ばれるはずです。
◆対象年齢
3歳、4歳、5歳、6歳
◆ママパパの口コミ
『カンガルーの子どもにも かあさんいるの?』
エリック・カール/作 さの ようこ/訳 偕成社
◆おすすめポイント
読み聞かせると、幅広い年齢の子が満ち足りた表情になる絵本があります。『カンガルーの子どもにも かあさんいるの?』。子どものシンプルな問いにシンプルで力強く温かい答えが安心感をもたらすのでしょう。短大の学生が、「(この絵本を読むと、)よし、これで大丈夫って、いつもそう思えた」といっていました。彼女は、事情があって母親と別れて暮らし始めた低学年のころ、現実には母親は一緒にいないのに、「この絵本を読むことで、つながっていることを確認して安心できたみたい」ともいっていました。(JPIC読書アドバイザー・児玉ひろ美)
◆対象年齢
3歳、4歳、5歳、6歳
教えてくれたのは
児玉ひろ美(こだま・ひろみ)
公立図書館司書とJPIC(*)読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本 選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)等があり、雑誌やWEBでも連載中。
(*)JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団