平泳ぎ 金メダリスト・岩崎恭子さんに教わる!水難事故から命を守る「着衣泳」の大切さ

教育と訳されるeducation の語源はeduce。「能力や可能性を引き出す」という意味です。本来の意味を知る福沢諭吉はeducation を「発育」とすべきと主張したそう。この連載では、教える側ではなく学ぶ側を主体とした「発育」をコンセプトに最先端の教育事情を紹介します。

バルセロナオリンピック金メダリストで、現在は1児の母でもある岩崎恭子さん。水泳を通して子どもの心身を豊かにする取り組みや「着衣泳」の普及活動を行っています。

平泳ぎ 金メダリスト 岩崎恭子さんに教わる 水難事故から命を守る「着衣泳」

着衣泳とは、服を着たまま水の中で浮いて、救助を待つための方法で、万が一の水難事故に備えた泳法です。小学校によってはプールの授業で取り入れているところもありますが、まだまだ認知が十分とはいえません。

岩崎さんのお子さんは、幼少期からライフジャケットにスニーカーが水遊びの定番スタイル。

 

「日本は海に囲まれた島国で、川もたくさんあります。水遊びは夏の定番であるにもかかわらず、命を守るための水泳教育は行われてきませんでした。知ることで助かる命があるなら、知っておいたほうがいい。自分の子はもちろんですが、着衣泳を多くの人に知ってもらいたいと考えています」

そう語るのは、小学生のお嬢さんをもつ岩崎恭子さん。水遊びをするときは、親子でライフジャケットとスニーカーを着用しているといいます。以前、岩崎さんは浅い川で遊んでいてすべって足をとられ、流されてしまったことがあるそう。水深が浅すぎてうまく泳げなかったのに、友人たちはまさか岩崎さんが流されていると思わず、ふざけていると勘違いされてしまったのだとか。

「競技の前に、身を守るための水泳教育を」

プールで泳ぐのと波や流れのある自然の中での水遊びは別物なのです。自然の怖さや着衣泳を親子で事前に学んでおきましょう。

「海や川での水遊びや水に浮く感覚は楽しく、海に入ると浄化されるような気持ちよさがあります。それを知っているので、子どもには『海や川は危ないから入ってはいけない』と言うのではなく、危険性があることや、自然相手に遊ぶ心構えを教えたうえで一緒に楽しみたいと思っています。知識として知るだけでなく実際にプールや海に遊びに行ったときに着衣泳を試して体験することも大切です。速く走れなくても死ぬことはありませんが、泳げなかったら死の危険があります。身を守るための着衣泳は、すべての人に覚えておいてほしいですね」

親子で知っておきたい! もしも…のときの「着衣泳のポイント」

基本姿勢はウイテマテ!

水難事故にあった場合は、焦らず、あわてず、浮いて待つのが基本。

衣服や靴は着用したまま仰向けになって呼吸を確保します。水を吸った衣服は重く、無理に泳ごうとバタバタしてしまうとかえって体力を消耗してしまいます。大人は周囲に声をかける、携帯電話で119番するなど、まず初めに助けを呼びましょう。

呼吸を確保

あごをあげて上を見るように意識すると呼吸しやすい。大きく深呼吸する。

手足を大の字に

手足は大の字に広げる。手は水面よりも下に。無理に動かしたり振り上げたりしない。

靴は履いたまま

靴は履いたまま。軽いスニーカーなどは浮き具の代わりになる。

浮きになるものがある場合

浮きになるものを胸の上に抱える

浮きになるものがある場合は、おなかの上に抱えるように持ちます。浮き輪はもちろん、空のペットボトルや、クーラーボックス、空気を入れたビニール袋、サッカーボール、大人が履いているスニーカーなど、水に浮くものがあるなら投げ入れましょう。浮き具があればより落ち着いて助けを待つことができます。

何もない場合

衣類の中に空気を取りこむ

浮きになるものがない場合、衣服に空気を取りこむことでも浮きやすい状態をつくれます。

〝浮いて待て“の状態から上着の前身頃の裾を持ち上げて風船をつくるように空気を取りこみ、手で裾をおさえた状態で待ちます。このときウインドブレーカーなどウォータープルーフ素材は空気を取りこみやすいといえます。

水遊びにはライフジャケットが大前提

もしものときの着衣泳の方法を覚えておくことは大切ですが、海や川で泳ぐ場合はもちろん、釣りやバーベキューなど水辺で過ごすときには、ライフジャケットの着用が大前提です。自転車のヘルメットのように、ライフジャケット着用が水遊びの定番になれば、水難事故で命を守る確率も上がると考えられます。

ライフジャケット

つくりのしっかりしたもの、目立つ色のものを選びましょう。大人も着用するのが望ましい。

スニーカー

サンダルタイプのウォーターシューズよりスニーカーのほうが浮きやすいのでおすすめ。

記事監修

スポーツコメンテーター 元競泳選手、指導者
岩崎 恭子

バルセロナオリンピックで競泳史上最年少金メダリスト(平泳ぎ200m)に輝く。引退後は、児童の指導法を学ぶためにアメリカへ留学。イベントやレッスンを通して水泳の楽しさや着衣泳を知ることの大切さを伝える活動をしている。

「発育のススメ」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

『小学一年生』2021年8月号 別冊『HugKum』 構成・文/山本章子 イラスト/吉田ナミ

花火、キャンプ、水遊び…【夏のトラブル予防ガイド】子どもの事故対策プロがイラストで解説!
そろそろ夏本番! お出かけを計画している人も多いのでは? 家族で楽しい時間を過ごすには、子どもの安全に気を配ることが大切です。夏の旅行やアウ...
子供の習い事に「水泳」を選ぶメリットは?費用やスクールの選び方、おすすめ水泳アイテムをピックアップ!
オリンピックでも日本人の活躍が期待される競技、水泳。習い事としても、水泳が多くのお子さんに選ばれています。水泳を習うことには様々なメリットが...

編集部おすすめ

関連記事