「国際識字デー」とは? その目的・歴史・由来、日本や海外での取り組みを徹底解説

今回は、国連が定めた「国際識字デー」を取り上げます。国際識字デーの目的・歴史・由来をはじめ、文字が読み書きができないことによる影響などを解説。日本や海外での取り組みや、わたしたちができることも考えてみました。

「識字(しきじ)」という言葉をご存じでしょうか?  識字とは、文字を読み書きする力のこと。初等教育就学率が100%の日本では「文字を読み書きできること」は当たり前。でも、世界に目を向けると、十分な教育を受けられず、文字を読み書きできない人たちがまだ数多く存在します。

「国際識字デー」ってどんな日?

文字を読み書きし理解できる能力「識字(しきじ)」の必要性を世界に広めるために、国際連合(以下:国連)が制定した記念日が「国際識字デー」です。

英語表記は「International Literacy Day」。教育制度が整った先進国では、当たり前のように思える識字。しかし、世界を見わたしたとき、文字を読み書きできない人は数多く存在します。

世界の約6人に1人が読み書きできない現実

国や一定の地域における、文字が読み書きできる人の割合を「識字率」といいます。世界の識字率を見た場合、15歳~24歳の男女では1990年の時点で83%でしたが、2015年になると91%まで上がりました。

ですが、現代においても15歳未満で学校に行けない子どもの数は、約1億2,100人。さらに、満足な教育を受けられずに文字の読み書きができないまま大人になった人の数は、約7億7,300万人にのぼります。世界の総人口のうち、約6人に1人が読み書きできない計算になります。

2023年の「国際識字デー」はいつ?

世界的な記念日として定められている国際識字デー。何月何日か、ご存じですか?  ここでは2023年の国際識字デーの日付と曜日を確認してみましょう。

「国際識字デー」は9月8日

2023年の国際識字デーは9月8日金曜日です。毎年「9月8日」と定められているため、日付の変更はありません。過去3年と来年以降3年の曜日は以下のとおりです。

・2020年9月8日 火曜日
・2021年9月8日 水曜日
・2022年9月8日 木曜日

・2024年9月8日 日曜日
・2025年9月8日 月曜日
・2026年9月8日 火曜日

 

「国際識字デー」とは?

毎年9月8日に国際デーのひとつとして定められている国際識字デー。そもそも、何を記念して制定されたのでしょうか?  国際識字デーの目的・歴史・由来を見ていきましょう。

目的

国際識字デーは「国際連合教育科学文化機関(以下:ユネスコ)」が制定しました。ユネスコは、世界の教育・科学・文化の発展と推進を目指す国連の専門機関です。

ユネスコが国際識字デーを制定した狙いは、世界中の国々や人々に識字の重要性を訴えること。また、世界の識字率を向上させることです。ちなみにユネスコは、識字率を「日常生活で必要な簡単な文章を読み書きできる15歳以上の人の割合」と定めています。識字率の定義は国によっても異なります。

歴史

1965年9月8日、イランのテヘランで世界文相会議が開催されました。これは、世界各国の文部大臣が集まり、教育のあり方について話し合う会議でした。

この会議で、イランのパーレビ国王が各国の軍事費の一部を識字教育に充てることを提案。会議終了後、パーレビ国王の提案を受けてアメリカのジョンソン大統領が、アメリカ議会で9月8日を「国際識字デー」に定めることを呼びかけます。そしてユネスコが国際デーのひとつとして、国際識字デーを制定しました。翌1966年9月8日、1回目の国際識字デーが祝われました。

由来

国際識字デーが定められた背景には、開発途上国の低い識字率がありました。北アメリカやヨーロッパ、東アジアなど、教育環境が整っている国々と比べた場合、たとえば、アフリカの国々の中には、今でも識字率が40%を下回っている国があります。

その原因として、貧困・差別・戦争などによって教育環境が不十分になっていることがあります。学校があったとしても、何時間も歩く必要があったり、教育の質が低いことも大きな理由です。また識字率の低い地域では、宗教や風習、価値観から、特に男性よりも女性の識字率が低い傾向があります。

読み書きができないことによる影響

識字ができなければ、日常生活に大きな支障や危険性をもたらします。生死にかかわるといっても過言ではありません。ここからは、そんな文字の読み書きができないことによる影響を見ていきます。

薬の説明や標示が読めない

病気やケガなどで医者から薬を処方されても、文字が読めなければ、正しく薬を飲むことができません。実際に文字が読めず、農薬を薬と間違えて誤飲するといったケースもあります。

また、標示が理解できないため、危険な区域に立ち入り、命の危険にさらされるケースもあります。

仕事を選ぶことができない

マニュアルを読み、手順どおりに作業を勧める。資料を確認して、報告書にまとめる…。日本では、当たり前のような仕事でも、読み書きができなければ、ほぼ不可能な仕事になります。文字を読み書きできなければ、希望する仕事や安定した職業に就くことができません。

結果的に、簡単な単純労働や危険な仕事しか選べなくなってしまいます。収入も不安定になり、貧困状態から抜け出すことができません。

正しい情報や公共サービスが得られない

識字ができなければ、正しい情報を得ることができなかったり、必要な情報を理解することができません。うまく手続きができないので、公的なサービスを満足に受けることもできなくなります。

実際に、文字が読み書きできないために「土地を騙し取られる」「悲惨な状況で働かされる」などの問題が今も発生しています。

「国際識字デー」に関連する日本や海外での取り組み

毎年9月8日の国際識字デーをはじめ、記念日以外にもさまざまな国・機関・団体が世界の識字率を向上させるため、数多くのイベントや啓発・広報をおこなっています。ここからは、日本や海外でおこなわれている国際識字デーのおもな取り組みを集めてみました。

「世界寺子屋運動」

1989年から30年以上続いている「世界寺子屋運動」は「日本ユネスコ協会連盟」が実施している活動です。江戸時代に子どもたちに読み・書き・そろばんなどを教えた日本の「寺小屋」を発展途上国に作り、誰でも読み書きや計算ができるような教育機会を提供しています。

現在は、アフガニスタンやカンボジアなど40か国以上、約124万人の子どもや大人が寺子屋で学んでいます。

図書館事業や学校建設事業

「シャンティ国際ボランティア会」は、人が「共に生き、共に学ぶ」ことのできる平和(シャンティ)な社会を目指した日本の公益社団法人です。図書館事業や学校建設事業をはじめ、カンボジアでの識字教室開催、国内での各種イベント、世界寺子屋運動への協力など、精力的な活動をおこなっています。

「チャイルド・スポンサーシップ」

キリスト教精神に基づいた国際協力NGO「ワールドビジョン」も世界の識字率を上げる取り組みをおこなっています。1日150円からの継続的な寄付を募る「チャイルド・スポンサーシップ」を中心とした開発援助や緊急人道支援などを通じ、発展途上国の教育環境を整えたり、学校教育を補うための教育支援、定期的な教員の研修などをおこなっています。

「国際識字デー」に、わたしたちができること

世界の識字率を上げるため、一個人でもできることがあるのでしょうか? ここからは、日本に住むわたしたちが国際識字デーに協力・支援できることをご紹介します。

寄付による各機関や団体の活動を支援

国際的な識字率の向上を目指す国内外の機関や団体の活動を寄付で支援することができます。寄付の方法や金額はいろいろあります。支援するときは無理のないようにしてください。

身近なもので支援

寄付金以外にも、書き損じのハガキや未使用の切手、商品券・図書券などの金券を寄付することで、国際識字デーに協力することができます。

イベントやキャンペーンに参加する

国際識字デーの啓発・広報をおこなうイベントやキャンペーンに参加することもできます。9月8日の国際識字デーにSNSで識字に関するメッセージを発信するのもよいでしょう。

誰もが読み書きできる世界を目指して

読み書きは、人が人として生きていくうえでも欠かせない能力です。日本では、文字が読み書きできることは当たり前で、もはや識字率の調査は行われていませんが、世界には、文字を読み書きできない人がまだ存在します。

識字はわたしたちの日常からは遠いことかもしれませんが、国際識字デーには、そんな世界の現状に目を向けてみてください。わたしたちにも支援・協力できることがあるはずです。

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