甘酸っぱいトロピカルフルーツとして人気のパイナップル。南国で育つフルーツなので、なじみのない方にとってはどうやって食べればよいのかわからない、なんてことはないでしょうか。
今回はご家庭で簡単に皮をむき、おいしく保存できる方法をご紹介したいと思います。カットフルーツだけでなく、食卓に取り入れやすいレシピも合わせてご紹介しますので、ぜひご参考にしてくださいね。
パイナップルの保存の基礎知識
輸入されたものが通年流通していますが、6~9月には沖縄地方で栽培された国産のものが手に入ります。パイナップルの基本的な知識をみていきましょう。
酵素の働き
パイナップルには「たんぱく質分解酵素」が含まれることから、腸内の老廃物を分解して消化を促進してくれる働きがあります。食べたときに口の中がピリピリするのは、この酵素によるものです。
パイナップルのたんぱく質を分解する力は、お肉を柔らかくしたい時に発揮されますよ。例えばポークソテーを作る際に、豚肉とパイナップルを一緒に入れておくだけで柔らかくなります。ただし、長時間一緒にしておくと柔らかさを通り越して、必要以上に崩れてしまうので、注意が必要です。
また、酵素は熱に弱いため、60℃以上で変性してしまいます。お肉を柔らかくした後は、いちど別の皿に取り分けておき、パイナップルだけを最後に加えることがポイントです。炒め物の場合でも、最後の仕上げに入れてくださいね。ハワイアンチキンや、バーベキューグリルなどで楽しめます。
パイナップルは追熟しない
パイナップルは追熟しないフルーツです。バナナやメロンなどのように収穫後に甘さを増していく性質がないので、収穫の時点で十分に熟しています。ですが、時間が経つとパイナップルの特徴でもある酸味が減ることから、甘味が増したようにも感じられます。
もともと酸味と甘みのバランスを楽しむフルーツなので、新鮮なうちにいただくことが肝心です。もしも甘い味がお好きな方は、風通しの良い場所で皮が6割程度黄色くなるまで置くと、甘いパイナップルになります。
そのまま保存できる期間は長くない
固い皮で覆われているため、成熟がわかりにくいですが、売り場に並んでいる時には完熟しています。ですから保存期間はそれほど長くなく、常温では10日間ほどの保存期限です。
皮の底の部分が茶色くなってくるとおいしい期間を過ぎ始めた合図です。そのままではカビの原因にもなるので、早めに食べるようにしてください。
パイナップルの最適な保存は6~8℃。冷蔵庫の野菜室での保存が適します。すでに完熟していますから常温と同じ10日間の保存期間ですが、カットしてからは短くなり、5日間です。食べきれない心配がある時は、早めに冷凍することで1か月の保存期間になります。
常温保存のポイント
それでは、おいしい保存のポイントを確認します。まずは常温での保存についてです。
常温保存は上下逆さまにする
葉を切り落とした後、上下を逆さまにして置いてください。パイナップルは底の部分に甘い成分が溜まります。これを逆さまにして逆流させることで、全体に甘さが行き渡りおいしくなるそうです。
カット後は冷蔵庫へ入れる
小さく切ったあとは、冷蔵庫に入れて保存をします。まずは恐竜の皮のようにゴツゴツした独特の皮をはずし、食べやすく切る方法から見ていきましょう。ギザギザの葉を切り落とし、中から甘い果実が現れる様子には、お子さんも興味津々かもしれません。
パイナップルのおしゃれな切り方
葉と底の部分を切り落とします。底部分に甘味があるため、大きく切ってしまわないように注意してください。表面の皮は固いので、転がってしまわないようにしっかりと左手で押さえてくださいね。
次は縦むけにして、半分に切ります。
これを三等分にしてから芯と皮をはずします。
あとは食べやすい大きさに切るだけです。
芯と皮を無駄なく使う方法
芯はドライフルーツにすると甘味を楽しむことができます。繊維が固いので薄切りにした後、耐熱容器に重ならないように並べます。電子レンジで500w、1分間温めて様子を確かめてください。水分が程良くなくなるまで続けることでドライになります。
甘味が凝縮していて、不思議とココナッツミルクのような甘い香りに変化します。
または、棒状のままお肉と一緒に漬けこみ、酵素の働きを借りる時にも役立ちます。皮の断面をお肉と密着させても良いですね。お肉とパイナップルを合わせた味が苦手な方でも、取り出しやすいので試してみてください。
食べきれないときは冷凍保存
パイナップルは食べられる部分が大きいので、一度に食べきれない場合もありますよね。そんな時には冷凍保存して長く楽しむのがおすすめです。
冷凍のコツ
あらかじめ、一口で食べられる大きさに切り分け、タッパーや冷凍用保存袋に入れて冷凍します。
冷凍パイナップルの食べ方
冷凍庫から出して、そのまま解凍せずに天然アイスとして楽しんでください。完全に解凍してしまうと水がでておいしくないので、半解凍がおすすめです。
その他、解凍しないまま加熱料理に使うのもおすすめです。ジャムなどの、しっかりと煮込んで甘酸っぱさを楽しむ調理にも向いています。
パイナップルのおすすめレシピ
パイナップルに含まれる酵素は、ゼラチンを使ってゼリーを作ると固まらない、という困った性質があります。ここでは寒天を使い、そういった心配のないゼリーのレシピと、お子さんでも食べやすいサラダやドレッシングをご紹介します。
パイナップルの黒糖豆乳寒天
黒糖のこっくりとした甘みは優しく、豆乳でヘルシーなデザートに。
◆材料
(直径6cmのシリコン型×8個分)
パイナップル 約150g
豆乳 300㏄
【A】
黒糖(粉末) 大さじ4
粉寒天 約5g
水 100㏄
◆作り方
【1】パイナップルは1cm角程度 に切る。豆乳は常温にする。
【2】小鍋に【A】を合わせて火にかけ、沸騰したら弱火にし、2分ほどかき混ぜながら煮溶 かす。ゆっくりと豆乳を加え混ぜる。
【3】シリコン型の底にパイナップルを敷き、【2】を流し込み、冷蔵庫で1時間ほど冷やし固める。
教えてくれたのは
鈴木薫さん
身近な食材で簡単に作れて、おいしく、センスのいいレシピが人気。双子の女の子と男の子のママ。
『ベビーブック』2017年7月号
フルーツジャーサラダ
おしゃれな見た目が食欲をそそる! オレンジドレッシングでさわやか味に。
◆材料
(大瓶1個+小瓶1個分)
パイナップル 1/6個
オレンジ 1個
キウイ 1個
ミニトマト 8個
きゅうり 1/2本
モッツアレラ(小) 100g
【A】
オレンジジュース 大さじ1
はちみつ 小さじ1
オリーブ油 大さじ1
塩 小さじ1/3
◆作り方
【1】ボウルに【A】を合わせ、よく混ぜる。
【2】パイナップルは2cm幅に切る。オレンジとキウイは皮をむいて輪切りにし、6等分する。ミニトマトは2等分し、きゅうりは1cm角に切る。
【3】容器にフルーツを詰めて【1】を注ぎ、ミニトマト、モッツアレラ、きゅうりを詰め、ふたをする。よく振って味をなじませ、お皿にあけて食べる。
教えてくれたのは
尾田衣子さん
料理研究家。「料理教室Assiette de KINU」を主宰。一児の母。
『めばえ』2015年8月号
パイナップルとトマトのグリル ローズマリー風味
トマト、パイナップルの蜂蜜漬け。ローズマリーの風味でグッと上品な味わいに。ヨーグルトにかけたりパンに塗ったり、作りおきして、いろいろ活用しましょう♪
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
パイナップル 1/4個
ミニトマト 6個
ローズマリー(ドライ) 小さじ1~2(バジル、オレガノ、セージなど、ほかのドライハーブでも可)
はちみつ 適量
◆作り方
【1】パイナップルは芯と皮を取り除き、厚さ約6mmに切りそろえる。ミニトマトは半分にカットする。
【2】【1】にローズマリーをふり、少しこげ目がつくまで焼く。
オーブン:予熱後、200度で20~30分。
フライパン:予熱後、中火で5~10分。
オーブントースター:900Wの場合、ホイルにのせて予熱後、8~13分。
【3】熱湯消毒したビンに【2】を入れ、具材が浸かる程度にはちみつを加える。ヨーグルトにそのままのせて。
※時間は目安。材料の大きさや調理器具によって、様子を見ながら加減してください。
◆ポイント
クリームチーズと一緒にパンにのせてめしあがれ!
また、調味料を加えればドレッシングに!
(大人2人分+子ども2人分)
パイナップルとトマトのグリル(パイナップル 3切れ、ミニトマト 2個、シロップ 大さじ2)
オリーブオイル(サラダ油でも可) 大さじ2(オイルを使わずヘルシーに仕上げてもOK)
酢 大さじ2
塩 小さじ1/2
こしょう 少々
【1】パイナップルとトマトは取り出して5㎜角に刻む。すべての材料をよく混ぜる。
教えてくれたのは
小山有希さん
料理研究家。元日本料理屋の両親、蕎麦屋の祖父母、元和菓子屋経営の義祖父母を持つ、食業界のサラブレッド。おいしく食べて健康に近づける「医食同源」をモットーとしたレシピに定評がある。1男1女の母。
『めばえ』2016年7月号
味わいの幅が広いパイナップル
パイナップルの保存方法がわかると、使える場面が広いフルーツだということがわかります。パイナップルのように強い甘味と酸味が同時に味わえるフルーツは他に見当たりません。お肉を柔らかくするので加熱料理にも使われ、冷凍すればヨーグルトなどのトッピングにも最適。見た目のインパクトもさることながら、固い皮さえ切り取れば、買ってきてすぐに食べられるところも嬉しいですね。お子さんのお友だちが遊びに来た時などに切ってあげても喜ばれるかもしれません。見かけた時は、ぜひ購入してみてくださいね。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)