いちじくの基礎知識
夏になると、木にいちじくの実がなる姿を目にします。 葉っぱがついているだけの木に突然、実ができることから「無花果」の名前がつけられています。
いちじくの旬は8月から11月で、流通期間が短い果物です。さらに表面が柔らかく傷みやすいので、優しい扱いが必要です。
栄養と特徴
やさしい甘みと、プチプチして心地良い食感のあるいちじくは、果糖とクエン酸を多く含み、疲労回復の効果が。便秘の解消に効く水溶性食物繊維、高血圧の予防になるカリウムを含み、赤い色はポリフェノールです。また、種には女性のホルモンバランスを整える植物性のエストロゲンが大量に含まれています。乾燥させたドライフィグはさらに栄養価が高く、保存性にも優れます。江戸時代には不老長寿の実として、国内でも栽培されていました。
いちじくの軸を切った時に出てくる白い汁は、タンパク質分解酵素です。パイナップルを食べた時にピリピリするのと同じ成分で、手につくと違和感を覚えますが、洗い流せばすぐに解消します。
生のいちじくは冷蔵か冷凍保存を
いちじくの保存方法をみていきましょう。
常温では長持ちしない
いちじくは繊細な果物で、常温や生のままでは長持ちしません。常温では2日程度の保存期限です。
冷蔵
冷蔵保存なら5日間~1週間の保存ができるようになります。
キッチンペーパーで包むと傷を防ぐことができ、ポリ袋に入れて冷蔵すると長持ちします。
冷凍
冷凍すると、日持ちは1か月に。
ラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍します。
解凍方法
冷凍庫から出してすぐに皮をむき、半解凍でいただきます。
完全に解凍すると水分が出て、実がブヨブヨになってしまいます。カチカチでは甘みがありませんが、少し溶けてくると甘みも出て、柔らかくなってきたら食べごろです。
コンポートなら保存は2~3週間
コンポート・フィグ(いちじくのコンポート)は、乾燥いちじくを使うことが多いですが、生の果実を使っても作ることができるのでご紹介します。
コンポートとは
コンポートは、ヨーロッパで古くから伝わる果物の保存方法です。ジャムよりも砂糖の量が少ないため、果物の風味や食感が強く残ることが特徴です。そのまま食べるほか、ヨーグルトやケーキに添えたり、タルトやパウンドケーキに混ぜて焼いたりもできます。糖度が低い分、日持ちは短くなりますが、アレンジがしやすい点は嬉しいですね。
赤、白を問わず、ワインで煮ることで風味が増すため、果物の甘みが足りない時の救済処置としても応用できます。
保存期間
コンポートのいちじくは、冷蔵で2~3週間の日持ちです。容器の消毒が必要で、状態が悪いとカビが生えるので、食べる時によく確かめてくださいね。
さらに、コンポートを冷凍保存すると1か月の長持ちします。
基本の「いちじくコンポート」レシピ
一度作ってみると、あっけないほど簡単な工程でおいしく仕上がりますよ。
◆材料
いちじく 4〜5個
【A】
砂糖 120g
白ワイン 150cc
シナモンスティック 1/3本
レモン汁 1/3個分
◆作り方
【1】いちじくの皮に竹串を刺し、全面に穴を開けます。
【2】鍋にいちじくを並べ、【A】の材料をすべて加えて火にかけます。砂糖が溶けたら、レモン汁を加えます。
【3】落し蓋をして弱火で10〜20分煮ます。焦げないように気をつけてください。
【4】火をとめてそのまま冷まします。粗熱がとれたら煮汁と一緒に、消毒した容器へ移します。
食べ方
クリームチーズとの相性は、抜群。生ハム、くるみとも合い、オードブルにすると味の華やかさが出ます。
チョコレートのパウンドケーキに入れて焼くのもおすすめですよ。
甘露煮なら保存は半年!
完熟する前に気温が下がってしまう東北地方には、未熟な実でもおいしく食べる知恵として、甘露煮にして保存する郷土料理があります。
甘露煮とは
保存食として、各ご家庭で作られるいちじくの甘露煮。酢や醤油を入れるレシピのほか、砂糖だけで煮るお宅も。煮加減にも強弱があり、シロップのようになるまで煮詰めたり、さらっとしたままで火を止めたり、お好みによって違います。ゆっくりと日々の暮らしを見つめながら気長に煮て、お好みの味を見つける楽しみもあり、味わい深い料理です。
保存期間
いちじくの甘露煮は、冷蔵庫で1週間ほどを目安に食べてください。
冷凍すれば半年もの保存ができます。
「いちじくの甘露煮」レシピ
醤油を入れて、おかずへのアレンジをしやすくしています。色々試してみてください。
◆材料
いちじく 4〜5個(350g)
砂糖 70g(※いちじくの重さに対して20%の砂糖を目安に用意)
水 400cc〜
レモン汁 大さじ1と½
醤油 小さじ1
◆作り方
【1】いちじくを水洗いして、水気を拭き取ります。ヘタは切り落としてください。
【2】皮がついたまま鍋に入れ、砂糖をまぶして1時間放置します。すると水が出てくるので、焦げないように少量の水を加えて火にかけます。
【3】焦げやすいので注意しながら、弱火でコトコト煮ます。途中で水を足しながら1時間程度、加熱します。紙の落しぶたをすると隅々まで火が通りやすく、アクがあれば除いてください。
【4】火を止めて、そのまま冷めるまで放置すると、味が染み、煮溶けていきます。
【5】ゆっくりと冷ました鍋を、再び火にかけます。余分な水分を煮詰める工程なので、お好みの状態まで加熱します。この時に醤油を足すとみたらし団子を思わせる風味に。
食べ方
コンポートは白ワインで煮るので大人の味ですが、こちらはしっかりと甘く、懐かしい味。おかずにするなら、豚肉や鶏肉の甘辛い味付けの料理の最後に加えます。長時間煮込んだ深い味わいを加えることができるので、先人の知恵と共においしく味わってください。
仕込みは夏から秋にかけて
いちごやりんごのようにはっきりとした味はありませんが、甘みがやさしく上品ないちじく。毎年、秋の始まりを感じると食べたくなります。上手に保存しておけば、長期間にわたり楽しめます。寒い季節になると、温かい部屋でアイスクリームに添えて食べる楽しみもありますね。大人のおつまみとしても、甘いデザートにしても喜ばれるので、夏から秋にかけて、準備してみてください。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)