ICT教育で子どもの学習法が変わる。メリットとデメリットとは?

2020年の学習指導要領改訂により、「ICT教育」を取り入れる学校が増えています。ICT教育はデジタル化が進む現代社会に適しているといわれますが、どのような効果があるのでしょうか。ICT教育の意味やメリット・デメリットを紹介します。

ICT教育とは

社会のデジタル化が進む中、教育現場でもICTを活用する場面が増えています。しかし、そもそもICTとは何を意味するのでしょうか?

情報通信技術を利用した教育

ICTとは、「Information and Communication Technology」の略語で、情報通信技術を意味します。すなわちICT教育とは、情報通信技術を活用した教育方法で、例えばPC・電子黒板・タブレット・学習ソフト等を活用することが、ICT教育に該当するのです。

デジタル後進国といわれる日本では、社会全体のデジタル化を急ぐ動きが強まっています。ICT教育は文部科学省が公表する「教育の情報化ビジョン」の一つに組み込まれており、教育の情報化に活用されます。

21世紀にふさわしい学びと学校が求められる中、ICT教育が活用される機会はますます広がっていくでしょう。

参考:教育の情報化ビジョン(骨子)ポイント|文部科学省

ICTの活用例

文部科学省は教育現場でICTを活用することで、以下の項目の実現を目指しています。

・校務の効率化
・学びや支援の最適化
・時間・距離にとらわれない教育コンテンツの提供
・子どもの情報活用能力・数学的思考力などの育成

ICTの発展により現代社会はグローバル化が進み、常に新しい技術が生まれています。現代人は好む・好まざるにかかわらず、ICTを適切に活用して情報を収集・判断することが必須です。子どものうちから適切なICT教育を施すことは、必須といえるでしょう。

また、2020年に改訂された新しい学習指導要領では、「学習の基盤となる資質・能力」として情報活用能力が組み込まれました。

これにより、小学校では「プログラミング教育」が必修化され、高校卒業までに全ての生徒がプログラミング・ネットワーク・データベースの基礎などを学ぶことが義務付けられています。ICTはこうした教育を支える、必要不可欠な技術なのです。

参考:
新時代の学びを支える先端技術活用推進方策|文部科学省
2020年度、子供の学びが進化します! | 政府広報オンライン

ICT教育で得られるメリット

ICT教育を行うことで、学習の効率化や最適化が図りやすくなるといわれます。ICT教育のメリットについて、具体的に見ていきましょう。

授業が分かりやすくなる

ICT教育を導入すれば、伝えられる情報量が多くなります。

例えば、図形問題をデジタルデバイス上で動かしたり、歴史の流れをアニメーションで伝えたりすれば、紙だけの学習よりも内容をつかみやすくなります。分からない部分を見直したり解き直したりするのも容易になり、子どもの学習理解度の向上が期待できるでしょう。

また、教科書を読むだけでは、授業が単調になってしまうことがあります。ICT教育で音や映像を加えれば授業にメリハリが出て、子どもは楽しみながら授業に集中できるかもしれません。

効率的に学習できる

本質的な学習以外の部分を省略できるのも、ICT教育ならではのメリットです。

例えば、教師が黒板に書いたことをノートに書き写すのは意外に手間がかかります。子どもによっては書き写すことに一生懸命で、肝心の授業内容が頭に入らないこともあるでしょう。

しかし、ICT教育を導入してデジタルデバイスを使えば、教師と子どもの画面を共有することが可能です。子どもは板書の必要がなくなり、授業内容そのものに集中できるようになります。

その他、紙では手間がかかるテストの採点や間違った問題のやり直しも、デジタルデバイスを使えば簡単です。

社会対応能力を伸ばせる

現代の子どもたちは、情報化した社会の中で生活していくことになります。ICT教育の導入は、現代社会に必須のICTリテラシーを高めることにつながるでしょう。

インターネット上には有象無象の情報が多数あり、情報を見極める目・活用する力・危機管理意識は非常に重要です。学校管理下でICT教育を実践すれば、子どもたちはデジタルデバイスの正しい使い方、インターネット上に潜む危険について理解しやすくなります。

また、ICTを活用すれば、他県・他国の人ともつながりやすくなります。これからの世代に必要なグローバル感覚を養う上でも、ICT教育は有益です。

ICT教育で考えられるデメリット

ICT教育では、デジタルデバイスの利点がデメリットにもなり得るといわれます。ICT教育では、どのようなことがマイナスと考えられているのでしょうか?

ICT教育で懸念されるデメリットについて紹介します。

考える力や書く力の低下

デジタルデバイスが主流になると、紙や鉛筆を持つ時間が少なくなってしまいます。漢字を書いたり長い文章を作成したりする能力は低下するかもしれません。

また、ICTを使えば、子どもは求めていた答えにすぐに辿り着いてしまいます。辞書や辞典を使うときのように答えを予想したり想像したりすることがなくなり、自分で考えるチャンスが失われる可能性があるのです。

現状、これが問題解決能力・創造力・論理的思考力の低下につながるのではと危惧されています。

ICT教育を実施する際は、テキスト教材と併用したり、調べる前に考える時間を設けたりすることが必要です。アナログ式のよい面も取り入れることで、バランスのよいICT教育が可能となります。

健康被害が生じる可能性も

デジタルデバイスを長時間使用することで、疲れ目やドライアイなどの症状が発生する可能性があります。症状が重いものは「VDT症候群」といわれ、目だけではなく肩こり・頭痛・手のしびれなどが発生することもあるのです。

子どもがデジタルデバイスを使用する場合は正しい姿勢を促し、連続使用時間は60分を上限としましょう。使用中は子どもに適宜休憩を取らせ、デジタルデバイスによる負担をため込ませないようにすることが大切です。

また一説では、デジタルデバイスが発するブルーライトが目によくないともいわれます。気になる場合は、画面上にブルーライトカットシールを貼ってみてもよいでしょう。

参考:VDT症候群 – 目の病気百科|参天製薬

遊びの誘惑やトラブルの種に

デジタルデバイスは、学習以外の目的でも使えます。ほかのアプリで遊んだり写真撮影をしたりして、本来とは異なる使い方をする子どもも出てくるかもしれません。

これではいくら質の高い教材をそろえても、期待するほどよい学習効果は得られない可能性もあります。

ICT教育では、子どもに「ほかのアプリで遊ばない」「不要なページを開かない」などの約束を徹底させることが必要です。子どもの集中力が続かないのであれば、インターネットの利用に制限をかけたり不要なアプリは全てアンインストールしたりなどの対策をしましょう。

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家庭でするICT教育のポイント

家庭でICT教育を行う場合、親が子どもと適切に関わる必要があります。家庭で効果的なICT教育を行うには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

機械に任せきりにしない

子どもにデジタルデバイスを使わせるときは、親がそばに付いて見守るようにしましょう。特に、子どもの年齢が小さいほど、親の関わりが必要です。休憩や止めるタイミングなど、親が学習時間をコントロールします。

また、デジタルデバイスを与えるだけでは、想像力・表現力・語彙力は育ちません。デバイスを見ながら「これはどういうことなのかな?」「調べる前に、ちょっと考えてみようか」などと声を掛けることが必要です。

デバイス上で絵を描いたりアニメーションを作成したりすると、学習を能動的にすることができます。

目に優しい環境と適度な休憩

ICT教育では目への悪影響を防ぐため、適切な環境を整えることと休憩を取ることが必要とされます。

「部屋は一定以上の明るさを保つこと」「デジタルデバイスの画面に照明が映り込まないようにすること」に注意しましょう。カーテンで明るさを調節したり、デジタルデバイスの角度を適切に保ったりすることが必要です。

また、目の焦点を長時間近いところに合わせたままにすると、近視を引き起こしやすくなるといわれています。

1時間に1度は子どもにデジタルデバイスから目を離すよう促し、目を休ませなければなりません。遠くの雲や山・建物を眺めるなど、目のリラックスにつなげることも大切です。

モラルを教える

ICT教育では、インターネットを使う上での注意点・正しい付き合い方を教えることも必要です。

子どもにデジタルデバイスの管理を任せきりにしてしまうと、学習に使わずに有害・有料サイトにアクセスしてしまう恐れがあります。「学習以外に使わないこと」「分からないときは親に聞くこと」など、子どもにしっかりと約束させましょう。

子どもの判断力に任せられない場合は「親が一緒にいるときだけ」などと制限し、ICT教育の時間や場所を決めておくことがおすすめです。

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ICTの特性を理解し学習に生かそう

ICT教育は、デジタルネイティブと呼ばれるこれからの世代には必要不可欠です。子どものうちにデジタルデバイス・ツールとの付き合い方を覚えることが、情報化社会・グローバル社会へのスムーズな適応につながるでしょう。

ただし、デジタルデバイスを長時間使ったり、子どもだけで使ったりすることはさまざまなリスクを伴います。家庭でICT教育を行う場合、親は子どもに声掛けをしたり休憩を促したりして、デジタルデバイスに頼り切りにならないよう注意しましょう。

構成・文/HugKum編集部

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