「ポンコツ」の産みの親は。。。
「ポンコツ」がほとんどの国語辞典に載っていないワケは、最近使われるようになった意味だからです。
従来は「物」に対して使われていた「ポンコツ」
では、どのような意味が載っているのかというと、使いものにならなくなった自動車や機械などのことだったのです。それがやがて、一般に使い古したり壊れたりしたものをいうようになり、さらにその意味が広がって、人に対しても使われるようになったというわけです。
「ポンコツ」の産みの親は、阿川佐和子の父の作家・阿川弘之
この、使いものにならなくなった自動車という意味は、エッセイやテレビ番組で活躍する阿川佐和子さんの父である、作家・阿川弘之の新聞小説、その名もずばりの『ぽんこつ』(1959~60年)から広まったといわれています。
この小説の中に、こんな一節があります。
「ぽん、こつん。ぽん、こつん。ぽんこつ屋はタガネとハンマーで、日がな一日古自動車を叩きこわしている」(まけとし)
つまり、「ポンコツ」は「ぽん、こつん」と古自動車の車体をたたくことから生まれた語だというのです。
阿川弘之は乗り物好きで知られていて、絵本『きかんしゃやえもん』の作者だと言えば、ご存じの方も大勢いらっしゃるでしょう。
記事執筆
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。