「登竜門」の意味や読み方とは?
「あのオーディションは女優の登竜門だ」などと、聞いたことはないでしょうか? 日常生活でもよく聞く「登竜門」について、意味や由来を紹介しますので、一つひとつチェックしてみてください。
読み方と意味
「登竜門」は「とうりゅうもん」と読み、立身出世への関門や、人生を左右するほどの重要な試験を意味する言葉。例えば、そこを通ることで、有名になれる、周囲から認められる、社会的なステータスを手にするなどが確約されている関門のことです。
「登竜門」の例をいくつか見ていきます。芥川賞や直木賞は文壇への「登竜門」、ホリプロタレントスカウトキャラバンやアイドルオーディションは芸能界への「登竜門」、M-1グランプリやキングオブコントは人気芸人への「登竜門」といえるでしょう。
由来
「登竜門」は中国の話をもとにつくられた故事成語で、その起源は古来にまでさかのぼります。
かつて、中国の黄河に、「竜門」と呼ばれる急流の激しい場所がありました。もし鯉がこの急流を登ることができたなら、竜になるという伝説があったのです。
この言い伝えをもとにして、「登竜門」という言葉ができたのですが、実際にその記述が見られるのは、漢時代の歴史書『後漢書』。当時、李膺(りよう)という偉い官僚がおり、彼に認められれば、出世が決まるといわれていました。そこで、李膺に認められること=竜門を登ることにたとえて、「登竜門」と呼ぶようになったのです。
ちなみに、この「登竜門」にちなんだ日本の伝統文化があるのですが、何かわかりますか? それは、鯉のぼりです。端午の節句・こどもの日に、鯉のぼりを飾るのは、困難にもたくましく立ち向かい、立身出世できるようにという願いからですよね。実はこれは、この「登竜門」の故事にちなんでいるからなんですよ。
使う時の注意点
すでに説明したとおり、「登竜門」は「立身出世への関門」や「運命を決めるような重要な試験」のことをあらわします。そう考えると、人生を左右するほどの力がないものは、「登竜門」とはいえません。たとえば、学校のミニテストや、部活の練習試合などは「登竜門」というにはオーバーでしょう。ただ、その関門を突破することでなんらかの出世が確約されていれば「登竜門」といっても問題ないので、前後の文脈で判断して使うようにしてください。
使い方を例文でチェック
実際に「登竜門」を使った用例を見ていきましょう。日常生活で出会う「登竜門」をメインに紹介していきます。
1:「甲子園に出ることはプロへの登竜門だ」
球児の夢でもある夏の甲子園。子どものみならず、大人も熱中するほど毎年注目を集めていますよね。もちろん、プロ野球のスカウトも、自身の球団に欲しい新人を探すために見ています。よって、甲子園出場はプロ野球選手になるための「登竜門」といえます。
2:「名門の高校に入学することが、難関大学合格への登竜門とされる」
難関大学への入学を目指す人は、受験対策がしっかりしている高校を選ぶことも。難関大学へ多くの卒業生を輩出している高校への入学は、まさに「登竜門」といえるでしょう。
3:「あのコンペで受賞することが、成功への登竜門」
大人の世界にも、多くの「登竜門」があります。コピーライターや、作家、イラストレーターなど、さまざまな分野でコンペがありますよね。受賞すると評判が高まるため、新たな仕事につながることがほとんどです。
類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「難しい関門」を意味する「登竜門」。その類語を見ていきましょう。
1:足がかり
「足がかり」は、高い場所へ登る時に使う足場のことですが、物事をする際のきっかけや糸口という意味も。「出世への足がかり」や「合格への足がかり」などと使えます。「登竜門」のように、関門というほど難しいものではなく、あくまできっかけといった意味合いですが、類語として使えるでしょう。
2:試験
合格すれば入学できたり、何かしらの資格を獲得できたりする試験も、「登竜門」の類語といえます。しかし、それに合格したとしても立身出世できないものは、言い換え表現としては適していません。
3:オーディション
合格すればアイドルや女優としてのデビューが決まるオーディションも、「登竜門」の言い換え表現といえそうです。そのほか、コンクールやコンテストなどもあてはまるでしょう。
対義語にはどのようなものがある?
「登竜門」の対義語にあてはまるのは、試験に落ちることを意味する「点額」と、出世の道を失うことを意味する「拓落失路」です。それぞれの意味を詳しく解説していきましょう。
1:点額
「点額」の読み方は「てんがく」です。意味は「試験に落ちてしまうこと」。実はこちらも、「登竜門」と同じく、中国の故事がもとになっています。記述があるのは『水経注(すいけいちゅう)』という地理書。このなかにある、急流を登ることができた鯉は竜になるが、できなかった鯉は額をぶつけて点(=傷)がつくという話が由来になっています。ストーリー的にも、まさに「登竜門」の反対の言葉ですね。
2:拓落失路
「拓落失路」とは「たくらくしつろ」と読みます。「拓落」は落ちぶれることで、「失路」は進路を絶たれること。この2つを合わせて、「落ちぶれて出世の道を失うこと」、「失意の底に落ちてしまうこと」という意味になります。「拓落失路の身」や「拓落失路の人」といった表現で使われることが多いです。
英語表現とは?
英語にも「立身出世への関門」をあらわす表現がいくつかあります。ただ、単語一つでは表現できないので、前後の文脈で「登竜門」とわかるようにするのがポイントです。
1:gateway to success
「gateway」は、間口や入り口という意味で、「success」は成功という意味なので、2つを合わせると「成功への入り口」となります。また、「gateway」だけでも「登竜門」として使えますが、「The Naoki Prize is a gateway to a literary career.」というように、文章全体でしっかりと説明するようにしましょう。
2:entry-level stature
「entry-level」は初歩の段階、「stature」は地位のことで、直訳すると「初歩段階の地位」です。つまり、さらに高い地位を目指すための踏み台という意味になります。
最後に
出世や成功への関門を意味する「登竜門」。急流を登った鯉が竜となって天を舞うようすをイメージすると、言葉の意味をすんなりと理解できたのではないでしょうか。例文を参考にして、日常生活のなかでも「登竜門」をぜひ使ってみてくださいね。
構成・文/阿部雅美(京都メディアライン)