ほめない・教えない・先回りしない。「しない」子育ては、なぜ子どもの自主性を育てる?

順調な小学校生活も、学校生活に慣れてきた頃には「いくら言っても宿題をしない」など、勉強面での心配が出てくる時期もやってきます。そこで多くの学生の学習指導を担った篠原信先生に、子どもが自ら学びを始める方法を伺いました。

子どもの「しない」への向き合い方

小学1年生になると多くの学校で宿題が出るようになり、「宿題をしない」「勉強をしない」という悩みを抱える親御さんが増えます。でも私は、「宿題はやらなくても仕方ないもの」だと腹をくくってお子さんと接していただくのがいいと思っています。それは、子どもに「やらなくていい」と宣言するという意味ではなく、子どもがやっていなくても「しゃーない」と覚悟をきめるということです。

その上で、たまたま宿題をやったら「エーッ!  何も言われていないのに、自分から宿題やったの?」と驚いてください。内発的に行動したことに親が驚くと、子どもは親を驚かすことができたとうれしくなり、学ぶことが楽しくなります。

子どもの工夫や努力に驚き、おもしろがりましょう

子どもが赤ちゃんのときに初めて立ったり歩いたりしたときのことを思い出してみてください。親は教えてないのに試行錯誤してできるようになったことに心底驚いて、喜んだことと思います。それがいつの間にか「他の子はもっとやっている」「宿題をするのは当たり前」などと子どもの成長に驚かなくなってしまいます。

「『できない』を『できる』に変えられた」「前にはなかった工夫があった」など、親が子どもをよく観察してその差分に驚くと子どもは自ら工夫を重ねます。子育てで「こんなにしてあげているのに、なんでできないの?」など思い詰めたときは、自分が「する」ではなく、子どもが「する」を待ち、「驚く」を試してみてください。

ラクになる!楽しくなる‼ 「しない」子育てのポイント

子育てというと、親が「してあげる」ものと捉えがちですが、「子どもが自分の力で成長するのをサポートする」と考えると、「しない」意識の重要性がわかります。

【叱らない】 問題行動を責めるのではなく、問題行動以外に目を向ける

問題行動を起こした場合、その行動を叱ってやめさせようとしますが、本人の気持ちが抑えられずこじれてしまうことも。そんなときは「できて当たり前と見なしがちな行為」がたまたまできたときに注目しましょう。

たとえば私の息子は3歳のとき、何度も癇癪を起こし、叱ってもひどくなる一方でした。あるとき妻が「いま怒らなかったの、えらい」と「しなかったこと」に注目すると、癇癪を起こさなくなりました。

問題行動以外を評価してもらうと、子どもはその状態を維持しようとするので、結果的に問題行動が減ります。

【ほめない】 結果に注目せず、子どもの工夫や努力に驚く

たとえば、テストで100点を取ったときに「100点取ったの、すごいね!」と結果だけをほめると、それは「98点だったらすごくない」と伝えたことになり、子どもから努力する意欲を奪います。

結果や能力をほめるのではなく、「こんな難しそうな問題をいつ解けるようになったの?」「いろいろ考えたんだね」など工夫や努力に驚くと、子どもは親がそこに気づいて驚いてくれたことをうれしく思い、「こんな工夫をしたんだよ」などと語ってくれます。さらに工夫することの面白さを知り、自然と努力を重ねるようになります。

【教えない】 自ら学んで発見する様子をそばで見守る

子どもの能動的な学習を促すには「教えない」ことが大切です。自ら学んで「できない」が「できる」、「知らない」が「知る」に変わる経験をすると、むしろ教えてもらうのを嫌がります。

勉強でわからないところがあったら、教えるのではなく、たとえば「教科書の中で似ている問題がないか、探してごらん」など目の付け所を伝え、そばにいて挑戦する姿を見守りましょう。さらに、子どもが自分で成し遂げたときに感動を共有して、その努力に驚きましょう。

【先回りしない】 子どもの「成し遂げる楽しみ」を奪わない

子どもが夢を語ったり、何かをやりたいと言ったときに、親は必要な本をたくさんそろえたり、進路を調べたりと、どのように子どもを導こうかと考えがち。

でも、子どもがやってみたいと始めたことを親が先回りしてしまうと、子どもはやる気をなくしてしまいます。さらに「あなたが言い出したのに」「こんなに準備してあげたのに」などと言うとますます追い討ちをかけることに。

先回りは、「自分で何かを成し遂げた」という楽しみを奪ってしまう行為です。導こうとせず、本人のペースに任せて見守ってください。

【期待しない】 減点方式ではなく加点方式で対応を

「君に期待しているよ」という言葉は、ほめ言葉のように捉えられていますが、人によってはプレッシャーに感じる場合もあります。

たとえば100点満点を期待すると、実際に100点満点だったとしても親が驚けなくなってしまいます。さらには100点ではなかったときに、マイナス20点、マイナス30点と減点方式で子どもを見てしまうようになります。

そういった意味では子どもに「こうあるべし」と期待するのではなく、子どもが自分の力で何かを会得し、進んでいく様子を見守り、祈るのが大切だと思います。

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記事監修

京都大学農学博士 農業研究者
篠原 信

1971年生まれ、大阪府出身。京都大学農学博士。農業研究者。大学入学と同時に塾を主宰し、不登校の子どもや非行少年などを引き受ける。著書に『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』(文響社)、『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版)ほか多数。

子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法
篠原 信朝日新聞出版1,540円
この記事でもご紹介した「教えない教え方」で、子どもの意欲を引き出すスキルを伝授。子どもの「自分で考え、自分で学ぶ」を起動させ、自身が主宰の学習塾で生徒全員の成績をアップさせた異色の科学者が、「学ぶのが大好き」な子どもを育てる親の接し方を解説します。

『小学一年生』2022年3月号別冊『HugKum』構成・文/山本章子 イラスト/谷端 実

 

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